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大学数学基礎解説
文献あり

リーマン予想による約数関数の漸近公式(とラマヌジャンの定理)

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$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{ep}[0]{\epsilon} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{G}[0]{\Gamma} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{Im}[0]{\mathrm{Im}} \newcommand{Ker}[0]{\mathrm{Ker}} \newcommand{l}[0]{\left} \newcommand{Li}[0]{\operatorname{Li}} \newcommand{ndiv}[0]{\nmid} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{ord}[0]{\mathrm{ord}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\right} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\mathrm{Re}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{S}[0]{\Sigma} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{vt}[0]{\vartheta} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z})^\times} $$

はじめのはじめに

 この記事は元々タイトルを「ラマヌジャンの定理」としていたのですが、記事の実態はラマヌジャンの論文の全貌を紐解いていったものとなっており、主に一般の$s>0$についての議論が展開され、結果として$s=1$についての主張であるラマヌジャンの定理に至る前に多くの遠回りをしています。それに加えてG. Robinの論文を読んでいたところ、$s\neq1$における議論を介さないラマヌジャンの定理の証明が載っていたので、別途 最短経路でラマヌジャンの定理を証明する記事 を書き、この記事はラマヌジャンの論文の主題である「約数関数の漸近公式(おまけにラマヌジャンの定理)の紹介記事」という名目に替えることにしました(記事の内容は何も変えていませんが)。

はじめに

 この記事ではリーマン予想と同値な不等式
$$\s(n)< e^\g n\log\log n\quad(n>5040)$$
について、その前身であるラマヌジャンの定理を証明していきます。

ラマヌジャンの定理

 リーマン予想が真であるとき、
$$\limsup_{n\to\infty}(\s(n)-e^\g n\log\log n)\cdot\frac{\sqrt{\log n}}{n}\leq-e^\g(2\sqrt 2-4-\g+\log4\pi)=-1.393\ldots$$
が成り立つ。特に、十分大きい任意の$n$に対して
$$\s(n)< e^\g n\log\log n$$
となる。

ここで$\s(n),\g$はそれぞれ約数関数、オイラー定数としました。
$$\s(n)=\sum_{d|n}d=\sum_{d|n}\frac nd,\quad \g=\lim_{n\to\infty}\l(\sum^n_{k=1}\frac1k-\log n\r)$$
またこの記事で「巨大過剰数」と言ったときには通常の巨大過剰数、つまり$\s_1$についての一般化巨大過剰数($\s_{-1}$についての一般化高度合成数)のことを指すものとします(詳しくは この記事 参照)。

$\s(n)$の最良近似

 任意の$s>0$$0<\e,\ep\leq\log(1+2^{-s})/\log2$に対して実数列$\{x_r\},\{y_r\}$を方程式
$$x_r^\e=\farc{1-x_r^{-s(r+1)}}{1-x_r^{-sr}},\;y_r^\ep=\farc{1-y_r^{-s(r+1)}}{1-y_r^{-sr}}$$
によって定め、$x_r,y_r$をそれぞれ$\e,\ep$についての関数とみなす(つまり$x_r(\e)=y_r(\e)$)。このとき 前々回の記事 の定理8系を再掲する。

 任意の自然数$n$に対し
$$\s_{-s}(n)\leq n^\e\prod^\infty_{r=1}\frac{\Pi_r(x_r)}{e^{\e\vt(x_r)}}$$
が成り立つ。特に$n=\exp(\sum^\infty_{r=1}\vt(x_r))$のとき、等号が成り立つ。

 ただし$\vt(x),\Pi_r(x)$は前々回の記事で定めた通り
$$\vt(x)=\sum_{p\leq x}\log p,\quad\Pi_r(x)=\prod_{p\leq x}\frac{1-p^{-s(r+1)}}{1-p^{-sr}}$$
とした。

 $\e_0=\log(1+2^{-s})/\log2$とおいたとき
$$\log\frac{\Pi_r(x_r)}{e^{\e\vt(x_r)}}=-\int^\e_{\e_0}\vt(y_r)d\ep$$
が成り立つ。

$$f(x)=\log\frac{1-x^{-s(r+1)}}{1-x^{-sr}},\quad\pi(x)=\sum_{p\leq x}1$$
とおいたとき、$y_r$の定義から
$$f(y_r)=\log y_r^\ep=\ep\log y_r$$
となることに注意すると アーベルの総和公式 から
\begin{eqnarray} \log\Pi_r(x_r)&=&\sum_{p\leq x_r}f(p) \\&=&\pi(x_r)f(x_r)-\int^{x_r}_{x_0}\pi(t)f'(t)dt \\&=&\e\pi(x_r)\log x_r-\int^{x_r}_{x_0}\pi(t)f'(t)dt \end{eqnarray}
が成り立つ(ただし$x_0=x_r(\e_0)\leq x_1(\e_0)=2$とした)。ここで$t=y_r(\ep)$と変数変換すると
\begin{eqnarray} f'(t)dt&=&f'(y_r)y_r'd\ep=(f(y_r))'d\ep=(\log y_r^\ep)'d\ep \\&=&\l(\e\frac{y'_r}{y_r}+\log y_r\r)d\ep=\frac\e{t}dt+\log y_r\;d\ep \end{eqnarray}
なので
$$\log\Pi_r(x_r) =\e\pi(x_r)\log x_r-\int^{x_r}_{x_0}\frac{\ep\pi(t)}{t}dt-\int^\e_{\e_0}\pi(y_r)\log y_r\;d\ep$$
がわかる。

 再びアーベルの総和公式から
$$\vt(x)=\pi(x)\log x-\int^x_{x_0}\frac{\pi(t)}tdt$$
であることに注意すると
\begin{eqnarray} \log\frac{\Pi_r(x_r)}{e^{\e\vt(x_r)}} &=&\int^{x_r}_{x_0}\frac{\e\pi(t)}{t}dt-\int^{x_r}_{x_0}\frac{\ep\pi(t)}{t}dt-\int^\e_{\e_0}\pi(y_r)\log y_r\;d\ep \\&=&\int^{x_r}_{x_0}\int^\e_\ep\frac{\pi(t)}{t}d\ep'dt-\int^\e_{\e_0}\pi(y_r)\log y_r\;d\ep \\&=&\int^\e_{\e_0}\l(\int^{y_r}_{x_0}\frac{\pi(t)}{t}dt-y_r\log y_r\r)d\ep \\&=&-\int^\e_{\e_0}\vt(y_r)d\ep \end{eqnarray}
を得る。

 任意の自然数$n$に対して、$N_n$$n$以上の優高度合成数の中で最小のものとし、対応する$\e$の中で最大のものを$\e_n$とおく。このとき
$$n^\e\prod^\infty_{r=1}\frac{\Pi_r(x_r)}{e^{\e\vt(x_r)}}$$
$\e=\e_n$において最小値を取る。

$$g(\e)=\log\l(n^\e\prod^\infty_{r=1}\frac{\Pi_r(x_r)}{e^{\e\vt(x_r)}}\r) =\e\log n-\sum^\infty_{r=1}\int^\e_{\e_0}\vt(y_r)d\ep$$
とおいたとき、$x_r$$\e$について単調減少であることに注意すると
$$g'(\e)=\log n-\sum^\infty_{r=1}\vt(x_r)$$
は単調増加であり、また
$$N(\e)=\exp(\sum^\infty_{r=1}\vt(x_r))$$
とおくと$N(\e)$$\e$が減少するにつれて全ての優高度合成数を小さい順に渡る( 前々回の記事 参照)ので
$$N(\e+\ep)< n\leq N(\e)\;(\forall\ep>0)$$
となるような$\e$を考えると$\e=\e_n$であることがわかる。
 すなわち$g'(\e)=\log(n/N(\e))$$\e=\e_n$の前後で符号を変え、$g(\e)$$\e=\e_n$において最小値を取ることになり、主張を得る。

$$\S_{-s}(n)=\prod^\infty_{r=1}\Pi_r(x_r(\e_n))=\s_{-s}(N_n)$$
とおいたとき、任意の自然数$n$に対して
$$\s_{-s}(n)\leq\S_{-s}(n)$$
が成り立ち、特に$n$が優高度合成数であるとき、等号が成り立つ。

 定理2,4より$n\leq N_n$に注意すると
$$\s_{-s}(n)\leq\l(\frac n{N_n}\r)^\e\s_{-s}(N_n)\leq\s_{-s}(N_n)=\S_{-s}(n)$$
が成り立ち、$2$つの不等号は共に$n=N_n$、つまり$n$が優高度合成数であるときに等号が成り立つ。(また第$2$の等号が成り立つのはその時に限る)

 ちなみに$\S_{-s}$は約数関数$\s_{-s}$のシグマを大文字にしているのであり、総和としてのシグマ$\sum$とは別物なので注意してください。

$x_r$の漸近公式

 $\e\to0$において
$$x_r=(r^{1/s}x_1)^{1/r}(1+O\l(\frac1{\log x_1}\r))$$
が成り立つ。

\begin{eqnarray} (x_r^r)^\e&=&\l(\frac{1-x_r^{-s(r+1)}}{1-x_r^{-sr}}\r)^r =\l(1+\frac{x_r-1}{x_r^{sr}-x_r^s}\r)^r \\&>&1+\frac{r}{\sum^r_{k=1}x_r^{ks}} \geq1+\frac1{x_r^{rs}} \end{eqnarray}
つまり$h(x)=x^\e-(1+x^{-s})$とおくと
$$h(x_r^r)>0=h(x_1)$$
が成り立つので$h(x)$の単調性( 前々回の記事 の補題3参照)から$x_r>x_1^\frac1r$がわかる。
 また$x_1^\e=1+x_1^{-s}$$\e$について解くと
$$\e=\frac{\log(1+x_1^{-s})}{\log x_1}$$
がわかるので$x_r=x_1^{t_r/r}\;(1< t_r< r)$とおくと
$$x_r^\e=(1+x_1^{-s})^{t_r/r}=\frac{1-x_1^{-st_r(1+\frac1r)}}{1-x_1^{-st_r}}$$
となる。この両辺の対数をとって整理していくと、
\begin{eqnarray} \frac{t_r}r x_1^{-s}+O(x_1^{-2s})&=&x_1^{-st_r}-x_1^{-st_r(1+\frac1r)}+O(x_1^{-2st_r}) \\x_1^{s(t_r-1)}&=&\frac r{t_r}(1-x_1^{-st_r/r})(1+O\l(x_1^{-s(2-t_r)}\r)) \\s(t_r-1)\log x_1&=&\log r-\log t_r+O(x_1^{-st_r/r})+O(x_1^{-s(2-t_r)}) \\t_r&=&1+\frac{\log r}{s\log x_1}-\frac{\log t_r}{s\log x_1}+\frac{O(x_1^{-st_r/r})+O(x_1^{-s(2-t_r)})}{s\log x_1} \end{eqnarray}
ここでこの左辺は$r$未満であり、$x_1\to\infty$において発散しえないので、
$$O(x_1^{-st_r/r})+O(x_1^{-s(2-t_r)})=O(x^{-\ep})\quad(\exists\ep>0)$$
としてよく($t_r\to1$もわかるので$t_r\neq2$とした)、また右辺の$\log r-\log t_r$$O(1)$とすると
$$\log t_r=\log\l(1+O\l(\frac1{\log x_1}\r)\r)=O\l(\frac1{\log x_1}\r)$$
となるので
\begin{eqnarray} t_r&=&1+\frac{\log r}{s\log x_1}-\frac{\log t_r}{s\log x_1}+O\l(\frac{x^{-\ep}}{\log x_1}\r) \\&=&1+\frac{\log r}{s\log x_1}+O\l(\frac1{\log^2x_1}\r) \end{eqnarray}
と評価できる。よって
$$x_r=x_1^{t_r/r}=(r^{1/s}x_1)^{1/r}x_1^{O(1/\log^2 x_1)} =(r^{1/s}x_1)^{1/r}(1+O\l(\frac1{\log x_1}\r))$$
を得る。

補題 5

 $N=\exp(\sum^\infty_{r=1}\vt(x_r))$とおくと
$$\log N=\vt(x_1)+x_2+O(x_1^\frac13)$$
が成り立つ。

  前々回の記事 より
$$e_1=\bigg\lfloor\frac{\log(\frac{2^\e-2^{-s}}{2^\e-1})}{s\log2}\bigg\rfloor$$
について$r>e_1$ならば$x_r<2$が成り立っており、$\e\to0$において
$$\log\l(\frac{2^\e-2^{-s}}{2^\e-1}\r) =\log\l(\frac{O(1)}{\e\log 2+O(\e^2)}\r)=-\log\e+O(1)$$
より$\e=\log(1+x_1^{-s})/\log x_1=(x_1^{-s}+O(x_1^{-2s}))/\log x_1$から
$$e_1=-\frac{\log\e}{s\log2}+O(1) =\frac{\log x_1}{\log2}+\frac{\log\log x_1}{s\log2}+O(1)$$
と評価できるので
\begin{eqnarray} \log N &=&\sum^{e_1}_{r=1}\vt(x_r) \\&=&\vt(x_1)+(x_2+O(\sqrt x_2\log^2 x_2))+O(x_3)+O(e_1x_4) \\&=&\vt(x_1)+x_2+O(x_1^\frac13)+O(x^\frac14\log x_1) \\&=&\vt(x_1)+x_2+O(x_1^\frac13) \end{eqnarray}
を得る。

 $s=1$のとき
$$\frac{N_n}{n}=O(\log^2N_n)$$
が成り立つ。

 $N>N'$を連続する巨大過剰数とすると$N/N'$は素数か半素数であることが知られているので、$n$未満で最大の優高度合成数を$N'_n$$N_n$の最大の素因数を$P_1$とおくと
$$\frac{N_n}{n}<\frac{N_n}{N'_n}< P_1^2\leq x_1^2=O(\log^2N_n)$$
を得る($P_1\leq x_1$については 前々回の記事 の定理8参照)。

 $N/N'$が素数か半素数であることは次のようにしてわかります。
 $\e$の減少に伴って対応する巨大過剰数が$N'$から$N$に変化する点では 前々回の記事 の定理7からある素数$p$について
$$k_p=\frac{\log\l(\frac{p^\e-p^{-1}}{p^\e-1}\r)}{\log p}\in\Z$$
が成り立ち、そのような素数$p,q,r,\ldots$について、$N/N'=pqr\cdots$が成り立つ。ところで先の式は
$$p^\e=\frac{p^{k_p}-p^{-1}}{p^{k_p}-1}$$
と変形でき、特に$p^\e\in\Q$となるが、$3$つの異なる素数$p,q,r$が同時に$p^\e,q^\e,r^\e\in\Q$を満たすことは 六指数定理の記事 よりあり得ないことがわかるので主張を得る。

$\S_{-s}(n)$の漸近公式

 以下、 前回の記事 の結果を使用するため、リーマン予想が真であると仮定します。

 $s\neq\frac13$のとき
$$\S_{-s}(n)=\Pi_1(x_1)\Pi_2(x_2)|\z(3s)|e^{O(x_1^{\farc13-s})}$$
が成り立ち、$s=\farc13$のときは
$$\S_{-s}(n)=\Pi_1(x_1)\Pi_2(x_2)e^{O(\log\log x_1)}$$
が成り立つ。(ただし$x_r=x_r(\e_n)$とした。)

 $s\neq1$において 前回の記事 の定理7の式を
$$\log\prod_{p\leq x}(1-p^{-s})=-\log|\z(s)|+O(x^{1-s})$$
と評価したとき、$sr,s(r+1)\neq1$において
\begin{eqnarray} \log\Pi_r(x_r)&=&\log\prod_{p\leq x_r}(1-p^{-s(r+1)})-\log\prod_{p\leq x_r}(1-p^{-sr}) \\&=&\log|\z(sr)|-\log|\z(s(r+1))|+O(x_r^{1-sr}) \\&=&\log|\z(sr)|-\log|\z(s(r+1))|+O(x_1^{\frac1r-s}) \end{eqnarray}
つまり
$$\Pi_r(x_r)=\farc{|\z(sr)|}{|\z(s(r+1))|}e^{O(x_1^{\frac1r-s})}$$
と評価できる。
 また 前回の記事 の定理4系の式を
$$\log\prod_{p\leq x}(1-p^{-1})=O(\log\log x)$$
と評価したとき、$sr=1$であるとすると
\begin{eqnarray} &&\log\big(\Pi_{r-1}(x_{r-1})\Pi_r(x_r)\big) \\&=&(\log|\z(s(r-1))|+O(\log\log x_{r-1})+O(x_{r-1}^{1-s(r-1)})) \\&&\quad+(-\log|\z(s(r+1))|+O(\log\log x_r)+O(x_r^{1-s(r+1)})) \\&=&\log|\z(s(r-1))|-\log|\z(s(r+1))|+O(x_1^{\frac1{r-1}-s}) \end{eqnarray}
つまり
$$\Pi_{r-1}(x_{r-1})\Pi_r(x_r)=\frac{|\z(s(r-1))|}{|\z(s(r+1))|}e^{O(x_1^{\frac1{r-1}-s})}$$
と評価できる。
 以上より$3s\neq 1$ならば
$$\prod^\infty_{r=3}\Pi_r(x_r)=|\z(3s)|O(x_1^{\frac13-s})$$
であり、$3s=1$ならば
$$\prod^\infty_{r=3}\Pi_r(x_r)=e^{O(\log\log x_1)}$$
であることがわかるので主張を得る。

\begin{eqnarray} \log\S_{-s}(n) &=&\log|\z(s)|+\sum^m_{k=1}\frac{(-1)^{k-1}}{k}\Li(\vt(x_1)^{1-ks}) -\frac12\Li(x_1^{\frac12-s}) \\&&\quad+\frac{x_1^{\frac12-s}+S_s(x_1)}{\log x_1} +\Li(x_2^{1-2s})+O\Bigg(\frac{x_1^{\frac12-s}}{\log^2x_1}\Bigg) \end{eqnarray}
が成り立つ。ただし
$$m=\l\lfloor1+\frac1{2s}\r\rfloor,\quad S_s(x)=-s\sum_\rho\frac{x^{\rho-s}}{\rho(\rho-s)}$$
とした。

  前回の記事 の定理7の式
$$\log\prod_{p\leq x}(1-p^{-s}) =-\log|\z(s)|-\Li(x^{1-s})+O\l(\frac{x^{1-s}}{\log^2x}\r)$$
および$x_2=O(x_1^{\frac12})$を使うと、$3s\neq1$のとき、
$$\log(\Pi_2(x_2)|\z(3)|e^{O(x_1^{\frac13-s})}) =\log|\z(2s)|+\Li(x_2^{1-2s})+O\Bigg(\frac{x_1^{\frac12-s}}{\log^2x_1}\Bigg)$$
と評価でき、また$3s=1$のときも結局
$$\log(\Pi_2(x_2)e^{O(\log\log x_1)}) =\log|\z(2s)|+\Li(x_2^{1-2s})+O\Bigg(\frac{x_1^{\frac12-s}}{\log^2x_1}\Bigg)$$
と評価できる。
 また
$$\sum^m_{k=1}\frac1k\Li(\vt(x)^{1-ks})-\sum^m_{k=1}\frac1k\Li(\vt(x)^{1-2ks}) =\sum^m_{k=1}\frac{(-1)^{k-1}}k\Li(\vt(x)^{1-ks})+O\l(\frac{x^{\frac12-s}}{\log^2x}\r)$$
に注意すると 前回の記事 の定理4
$$\log\prod_{p\leq x}(1-p^{-s})=-\log|\z(s)|-\sum^m_{k=1}\frac1k\Li(\vt(x)^{1-ks})+\frac12\Li(x^{\frac12-s})-\frac{x^{\frac12-s}+S_s(x)}{\log x} +O\Bigg(\frac{x^{\frac12-s}}{\log^2x}\Bigg)$$
から
\begin{eqnarray} \log\Pi_1(x_1) &=&\log|\z(s)|-\log|\z(2s)|+\sum^m_{k=1}\frac{(-1)^{k-1}}{k}\Li(\vt(x_1)^{1-ks}) \\&&\quad-\frac12\Li(x_1^{\frac12-s})+\frac{x_1^{\frac12-s}+S_s(x_1)}{\log x_1} +O\Bigg(\frac{x_1^{\frac12-s}}{\log^2x_1}\Bigg) \end{eqnarray}
が成り立つので補題7と合わせて主張を得る。

\begin{eqnarray} \log\S_{-s}(n) &=&\log|\z(s)|+\sum^m_{k=1}\frac{(-1)^{k-1}}k\Li((\log N)^{1-ks}) -\frac12\Li((\log N)^{\frac12-s}) \\&&\quad+\frac{(\log N)^{\frac12-s}+S_s(\log N)}{\log\log N}+\Li(x_2^{1-2s}) -\frac{x_2(\log N)^{-s}}{\log\log N}+O\l(\frac{(\log N)^{\frac12-s}}{(\log\log N)^2}\r) \end{eqnarray}
が成り立つ。ただし$N=N_n$とした。

$$\log N=\vt(x_1)+O(x_1^\frac12)=x_1+O(x_1^\frac12\log^2x_1)$$
より$O(\log N)$$O(x_1)$は相互に交換可能であることに注意する。

$\Li(\vt(x_1)^{1-ks})$の変形

\begin{eqnarray} \vt(x_1)^\a&=&(\log N-x_2+O(x_1^\frac13))^\a \\&=&(\log N)^\a\big(1-x_2(\log N)^{-1}+O(x_1^\frac13(\log N)^{-1})\big)^\a \\&=&(\log N)^\a\big(1-\a x_2(\log N)^{-1}+O(x_1^\frac13(\log N)^{-1})+O(x_2^2(\log N)^{-2})\big) \\&=&(\log N)^\a-\a x_2(\log N)^{\a-1}+O((\log N)^{\frac13+\a-1}) \end{eqnarray}
に注意すると
\begin{eqnarray} \Li(\vt(x_1)^{1-ks}) &=&-k\int^s_\infty\frac{\vt(x_1)^{1-kt}}{1-kt}dt \\&=&-k\int^s_\infty\l(\frac{(\log N)^{1-kt}}{1-kt}-x_2(\log N)^{-kt}+\frac{O((\log N)^{\farc13-kt})}{1-kt}\r)dt \\&=&\Li((\log N)^{1-ks})-\frac{x_2(\log N)^{-ks}}{\log\log N}+O\Big(\Li((\log N)^{\frac13-ks})\Big) \\&=&\Li((\log N)^{1-ks})-\frac{x_2(\log N)^{-ks}}{\log\log N}+O\l(\frac{(\log N)^{\frac12-s}}{(\log\log N)^2}\r) \end{eqnarray}
と評価できる。

$\Li(x_1^{\farc12-s})$の変形

\begin{align} x_1^{\frac12-s} &=(\log N)^{\frac12-s}\big(1+O(x_1^{-\frac12}\log^2x_1)\big)^{\frac12-s}\\ &=(\log N)^{\frac12-s}+O(x_1^{-s}\log^2x_1) \end{align}
に注意すると
\begin{eqnarray} \Li(x_1^{\frac12-s}) &=&-\int^s_\infty\frac{(\log N)^{\frac12-t}+O(x_1^{-t}\log^2x_1)}{\frac12-t}dt \\&=&\Li((\log N)^{\frac12-s})+O(\Li(x^{\frac12-s})x_1^{-\frac12}\log^2x_1) \\&=&\Li((\log N)^{\frac12-s})+O\l(\frac{(\log N)^{\frac12-s}}{(\log\log N)^2}\r) \end{eqnarray}
と評価できる。

$S_s(x_1)$の変形

\begin{eqnarray} S_s(x_1)-S_s(\log N) &=&-s\int^{x_1}_{\log N}\l(\sum_\rho\frac{t^{\rho-s-1}}{\rho}\r)dt \\&=&(x_1-\log N)O(x_1^{-s-\frac12}\log^2x_1) \\&=&O(x_1^{-s}\log^4x_1) \end{eqnarray}
と評価できる。

$1/\log x_1$の変形

$$\frac1{\log x_1}=\frac1{\log\log N+O(x^{-\frac12}\log^2 x_1)} =\farc1{\log\log N}(1+O(x_1^{-\frac12}\log x_1))$$
と評価できる。

 以上の評価と定理8を合わせることで主張を得る。

まとめ

$0< s<\frac12$においては
$$\log\S_{-s}(n)=\sum^m_{k=1}\frac{(-1)^{k-1}}k\Li((\log N)^{1-ks}) +\frac{2s(2^{\frac1{2s}}-1)(\log N)^{\frac12-s}}{(1-2s)\log\log N} +\frac{S_s(\log N)}{\log\log N}+O\l(\frac{(\log N)^{\frac12-s}}{(\log\log N)^2}\r)$$
$s=\frac12$においては
$$\log\S_\frac12(n)=\log\l(-\frac{\z(\frac12)}{\sqrt2}\r)+\Li((\log N)^\frac12) +\frac{2\log2-1+S_\frac12(\log N)}{\log\log N}+O\l(\frac1{(\log\log N)^2}\r)$$
$s>\frac12$においては
$$\log\S_{-s}(n)=\log|\z(s)|+\Li((\log N)^{1-s}) -\frac{2s(2^{\frac1{2s}}-1)(\log N)^{\frac12-s}}{(2s-1)\log\log N} +\frac{S_s(\log N)}{\log\log N}+O\l(\frac{(\log N)^{\frac12-s}}{(\log\log N)^2}\r)$$
が成り立つ。(ただし$m=\lfloor1+\frac1{2s}\rfloor,N=N_n$とした。)

$s\neq\frac12$のとき

\begin{eqnarray} x_2&=&2^{\frac1{2s}}x_1^{\frac12}+O\bigg(\frac{x_1^\frac12}{\log x_1}\bigg) \\&=&2^{\frac1{2s}}(\log N)^{\frac12}+O\l(\frac{(\log N)^\frac12}{\log\log N}\r) \\\Li((\log N)^{\frac12-s}) &=&\farc{(\log N)^{\frac12-s}}{(\frac12-s)\log\log N} +O\l(\frac{(\log N)^{\frac12-s}}{(\log\log N)^2}\r) \\\Li(x_2^{1-2s}) &=&\frac{x_2^{1-2s}}{(1-2s)\log x_2}+O\l(\frac{x_2^{1-2s}}{\log^2x_2}\r) \\&=&\farc{2^{\frac1{2s}}(\log N)^{\frac12-s}}{(1-2s)\log\log N} +O\l(\frac{(\log N)^{\frac12-s}}{(\log\log N)^2}\r) \\\frac{x_2(\log\log N)^{-s}}{\log\log N} &=&\frac{2^{\frac1{2s}}(\log\log N)^{\frac12-s}}{\log\log N} +O\l(\frac{(\log N)^{\frac12-s}}{(\log\log N)^2}\r) \end{eqnarray}
より定理9からわかる。ただし$s<\frac12$のとき、
$$\log|\z(s)|=O(1)=O\l(\frac{(\log N)^{\frac12-s}}{(\log\log N)^2}\r)$$
であり、$s>\frac12$のとき$m=1$であることに注意する。

$s=\frac12$のとき

\begin{eqnarray} \log x_2^2&=&2\log2+\log\log N+O\l(\frac1{\log\log N}\r) \\\log\log x_2^2&=&\log\log\log N+\frac{2\log 2}{\log\log N}+O\l(\frac1{(\log\log N)^2}\r) \end{eqnarray}
前の記事 の結果から
\begin{eqnarray} &&\lim_{s\to\frac12}(\Li(x_2^{1-2s})-\frac{\Li((\log N)^{1-2s})+\Li((\log N)^{\frac12-s})}2) \\&=&\log\log x_2^2-\frac{\log\log(\log N)^2+\log\log\log N}2 \\&=&\frac{2\log 2}{\log\log N}-\frac12\log2+O\l(\frac1{(\log\log N)^2}\r) \end{eqnarray}
であることと$\z(\frac12)=-1.460\ldots$である(らしい)ことに注意すると定理9からわかる。

ラマヌジャンの定理の証明

$$\S_{-1}(n)=e^\g\l(\log\log N-\frac{2(\sqrt 2-1)}{\sqrt{\log N}}+S_1(\log N) +\frac{O(1)}{\sqrt{\log N}\log\log N}\r)$$
が成り立つ。

  前の記事 の結果から
\begin{align} \lim_{s\to1}(\log|\z(s)|+\Li((\log N)^{1-s})) &=\lim_{s\to1}(-\log|s-1|+(\log|s-1|+\g+\log\log\log N))\\ &=\g+\log\log\log N \end{align}
であることに注意して定理10の式を$s\to1$とすると
$$\log\S_{-s}(n) =\g+\log\log\log N-\frac{2(\sqrt2-1)}{\sqrt{\log N}\log\log N} +\frac{S_1(\log N)}{\log\log N}+\frac{O(1)}{\sqrt{\log N}(\log\log N)^2}$$
となるので
\begin{eqnarray} \S_{-1}(n) &=&e^\g\log\log N\exp\l(-\frac{2(\sqrt2-1)}{\sqrt{\log N}\log\log N} +\frac{S_1(\log N)}{\log\log N}+\frac{O(1)}{\sqrt{\log N}(\log\log N)^2}\r) \\&=&e^\g\log\log N\l(1-\frac{2(\sqrt2-1)}{\sqrt{\log N}\log\log N} +\frac{S_1(\log N)}{\log\log N}+\frac{O(1)}{\sqrt{\log N}(\log\log N)^2}\r) \\&=&e^\g\l(\log\log N-\frac{2(\sqrt 2-1)}{\sqrt{\log N}}+S_1(\log N) +\frac{O(1)}{\sqrt{\log N}\log\log N}\r) \end{eqnarray}
を得る。

$$\limsup_{n\to\infty}(\s(n)-e^\g n\log\log n)\cdot\frac{\sqrt{\log n}}{n}\leq-e^\g(2\sqrt 2-4-\g+\log4\pi)=-1.393\ldots$$
が成り立つ。

 補題6から
\begin{align} \log n&=\log N+O(\log\log N)\\ \log\log n&=\log\log N+O\l(\frac{\log\log N}{\log N}\r) \end{align}
に注意すると$\s(n)=n\s_{-1}(n)$および定理4系と定理11から
\begin{eqnarray} &&\limsup_{n\to\infty}(\s(n)-e^\g n\log\log n)\cdot\frac{\sqrt{\log n}}{n} \\&\leq&\limsup_{n\to\infty}(\S_{-1}(n)-e^\g \log\log n)\sqrt{\log n} \\&\leq&\limsup_{n\to\infty}e^\g\l(-\frac{2(\sqrt 2-1)}{\sqrt{\log N}}+S_1(\log N) +\frac{O(1)}{\sqrt{\log N}\log\log N}\r)\sqrt{\log N} \\&\leq&e^\g(-2(\sqrt 2-1)+(2+\g-\log4\pi))=-e^\g(2\sqrt 2-4-\g+\log4\pi) \end{eqnarray}
を得る。ただしリーマン予想から$\ol\rho=1-\rho$であることに注意すると
$$\l|x^{\frac12}S_1(x)\r| =\l|\sum_\rho\frac{x^{\Im(\rho)}}{\rho(\rho-1)}\r| \leq\sum_\rho\frac1{|\rho|^2}=2+\g-\log4\pi$$
と評価できることを用いた(最後の等号については この記事 参照)。

おわりに

 今回の記事では、リーマン予想が真ならばある$n_0$が存在して
$$\s(n)< e^\g n\log\log n\quad(\forall n> n_0)$$
が成り立つことを示しましたが、ラマヌジャンの議論を精密化することで$n_0$は具体的に$n_0=5040$と取れることがわかります。また冒頭で言及したようにこの不等式が成り立てばリーマン予想が真となることも知られています。

Robinの定理

 リーマン予想が真であることと
$$\s(n)< e^\g n\log\log n\quad(\forall n>5040)$$
が成り立つことは同値である。

 このことについてはまたいつか記事として書くつもりです。
 とりあえず今回はこんなところで。では。

参考文献

[1]
S. Ramanujan, Highly Composite Numbers, Proc. London Math. Soc., 1915, pp. 347–409
[2]
Jean-Louis Nicolas, Guy Robin, Highly Composite Numbers by Srinivasa Ramanujan, The Ramanujan Journal, 1997, pp. 119–153
[3]
L. Alaoglu, P. Erdős, On Highly Composite and Similar Numbers, Transactions of the American Mathematical Society, 1944, pp. 448-469
[4]
G. Robin, Grandes valeurs de la fonction somme des diviseurs et hypothèse de Riemann, Journal de Mathématiques Pures et Appliquées, 1984, pp. 187-213
投稿日:20211119
更新日:125

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投稿者

子葉
子葉
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主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

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