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大学数学基礎解説
文献あり

豊穣圏の導入 第4回: Underlying Category について (後半) (2)

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V-圏の underlying category について (続き)

Underlying Category

V=(V,,a,I,l,r)をモノイダル圏とする.

VからSetへの関手V(I,)を以下で定める:
(1) XVに対して,集合V(I,)XV(I,)X:=V(I,X)で定める.
(2) Vでの射f:XYに対して,V(I,)X=V(I,X)からV(I,)Y=V(I,Y)への写像V(I,)(f)を,各gV(I,)Xに対して(V(I,)(f))(g):=fgで定めて,V(I,)(f)V(I,f)で表す.

V(I,)VからSetへの関手である.

実際,XVを取るとき,任意のgV(I,X)に対してV(I,1X)(g)=1Xg=g=1V(I,X)(g)だから,V(I,1X)=1V(I,X)である.
また,Vでの射g:YZf:XYを取るとき,任意のhV(I,X)に対して,
V(I,gf)(h)=(gf)h=g(fh)=V(I,g)(fh)=V(I,g)(V(I,f)(h))=(V(I,g)V(I,f))(h),
だから,V(I,gf)=V(I,g)V(I,f)である.

Set=(Set,,a,I,l,r)を命題 2.b.2 で構成したモノイダル圏とする.

X,YVを取る.
定義 2.b.1 よりV(I,X)V(I,Y)=V(I,X)×V(I,Y)である.

X,YVに対して,V(I,X)V(I,Y)=V(I,X)×V(I,Y)からV(I,XY)への写像μX,Yを,各fV(I,X)gV(I,Y)に対してμX,Y((f,g)):=(fg)(lI)1で定める:
IμX,Y((f,g))(lI)1IIfgXY
写像の族{μX,Y}X,YVμで表す.

定義 2.b.2 よりI={}である.

I={}からV(I,I)への写像ee():=1Iで定める

lI=rIである.

この命題の証明は付録で述べる.

(V(I,),μ,e)VからSetへの lax モノイダル関手である.

Vでの射f:XXg:YYを任意に取る.
定義 2.b.1 よりV(I,X)V(I,Y)=V(I,X)×V(I,Y)である.
また,V2からVへの関手だから,(fh)(gk)=(fg)(hk)である.
ゆえに,任意のhV(I,X)kV(I,Y)に対して,
(μX,Y(V(I,f)V(I,g)))((h,k))=μX,Y((V(I,f)V(I,g))((h,k)))=μX,Y((V(I,f)(h),V(I,g)(k))(定義 2.b.1)=μX,Y((fh,gk))(定義 1, (2))=((fh)(gk))(lI)1(定義 2)=(fg)(hk)(lI)1=V(I,fg)((hk)(lI)1)(定義 1, (2))=V(I,fg)(μX,Y((h,k)))(定義 2)=(V(I,fg)μX,Y)((h,k)),
であり,μX,Y(V(I,f)V(I,g))=V(I,fg)μX,Yである.

X,Y,ZVを任意に取る.
定義 2.b.1 より(V(I,X)V(I,Y))V(I,Z)=(V(I,X)×V(I,Y))×V(I,Z)である.
fV(I,X)gV(I,Y)hV(I,Z)を任意に取る.
V2からVへの関手だから,以下が成り立つ:

  • (f1I)(1Yg)=(f1Y)(1Ig),
  • ((fg)(lI)1)(h1I)=((fg)h)((lI)11I),
  • (1I1I)((lI)1lI)=(1I(lI)1)(1IlI),
  • (rI1I)((lI)11I)=(rI(lI)1)(1I1I),
  • (f(gh))(1I(lI)1)=(f1I)((gh)(lI)1),
  • 1I(II)=1I1II,
  • 1II1I=1(II)I.

また,Vがモノイダル圏であることから,命題 2.b.1, (1) と同様の議論によりaX,Y,Z((fg)h)=(f(gh))aI,I,Iであり,命題 2.b.1, (2) と同様の議論によりlY(1Ig)=glIであり,命題 2.b.1, (5) と同様の議論により(1IlI)aI,I,I=rI1Iである.
ゆえに,
(V(I,aX,Y,Z)μXY,Z(μX,Y1V(I,Z)))(((f,g),h))=V(I,aX,Y,Z)(μXY,Z((μX,Y1V(I,Z))(((f,g),h))))=V(I,aX,Y,Z)(μXY,Z((μX,Y((f,g)),1V(I,Z)(h))))(定義 2.b.1)=V(I,aX,Y,Z)(μXY,Z((μX,Y((f,g)),h)))=V(I,aX,Y,Z)(μXY,Z(((fg)(lI)1,h)))(定義 2)=V(I,aX,Y,Z)((((fg)(lI)1)h)(lI)1)(定義 2)=aX,Y,Z(((fg)(lI)1)h)(lI)1(定義 1)=aX,Y,Z(((fg)(lI)1)h)(lI)1=aX,Y,Z(((fg)(lI)1)h)(lI)1=aX,Y,Z(((fg)(lI)1)(h1I))(lI)1=aX,Y,Z((fg)h)((lI)11I)(lI)1=(f(gh))aI,I,I((lI)11I)(lI)1=(f(gh))1I(II)aI,I,I((lI)11I)(lI)1=(f(gh))(1I1II)aI,I,I((lI)11I)(lI)1=(f(gh))((1I1I)1II)aI,I,I((lI)11I)(lI)1=(f(gh))((1I1I)((lI)1lI))aI,I,I((lI)11I)(lI)1=(f(gh))(1I(lI)1)(1IlI)aI,I,I((lI)11I)(lI)1=(f(gh))(1I(lI)1)(rI1I)((lI)11I)(lI)1=(f(gh))(1I(lI)1)((rI(lI)1)(1I1I))(lI)1=(f(gh))(1I(lI)1)((rI(lI)1)1I)(lI)1=(f(gh))(1I(lI)1)((lI(lI)1)1I)(lI)1(命題 1)=(f(gh))(1I(lI)1)(1II1I)(lI)1=(f(gh))(1I(lI)1)1(II)I(lI)1=(f(gh))(1I(lI)1)(lI)1=((f1I)((gh)(lI)1))(lI)1=(f((gh)(lI)1))(lI)1=μX,YZ((f,(gh)(lI)1)))(定義 2)=μX,YZ((f,μY,Z((g,h))))(定義 2)=μX,YZ((1V(I,X)(f),μY,Z((g,h))))=μX,YZ((1V(I,X)μY,Z)((f,(g,h))))(定義 2.b.1)=μX,YZ((1V(I,X)μY,Z)(aV(I,X),V(I,Y),V(I,Z)(((f,g),h))))(定義 2.b.3)=(μX,YZ(1V(I,X)μY,Z)aV(I,X),V(I,Y),V(I,Z))(((f,g),h)),
であり,
V(I,aX,Y,Z)μXY,Z(μX,Y1V(I,Z))=μX,YZ(1V(I,X)μY,Z)aV(I,X),V(I,Y),V(I,Z),
である.

XVを任意に取る.
IV(I,X)=I×V(I,X)(定義 2.b.1)={}×V(I,X),(定義 2.b.2)
である.任意の(,f)IV(I,X)に対して,Vがモノイダル圏であることから,命題 2.b.1, (2) と同様の議論によりlX(1If)=flIであり,
(V(I,lX)μI,X(e1V(I,X)))((,f))=V(I,lX)(μI,X((e1V(I,X))((,f))))=V(I,lX)(μI,X((e(),1V(I,X)(f))))(定義 2.b.1)=V(I,lX)(μI,X((e(),f)))=V(I,lX)(μI,X((1I,f)))(定義 3)=V(I,lX)((1If)(lI)1)(定義 2)=lX(1If)(lI)1(定義 1, (2))=flI(lI)1=f1I=f=lV(I,X)((,f)),(定義 2.b.4, (1))
だから,V(I,lX)μI,X(e1V(I,X))=lV(I,X)である.

XVを任意に取る.
V(I,X)I=V(I,X)×I(定義 2.b.1)=V(I,X)×{},(定義 2.b.2)
である.任意の(f,)V(I,X)Iに対して,Vがモノイダル圏であることから,命題 2.b.1, (3) と同様の議論によりrX(f1I)=frIであり,
(V(I,rX)μX,I(1V(I,X)e))((f,))=V(I,rX)(μX,I((1V(I,X)e)((f,))))=V(I,rX)(μX,I((1V(I,X)(f),e())))(定義 2.b.1)=V(I,rX)(μX,I((f,e())))=V(I,rX)(μX,I((f,1I))(定義 3)=V(I,rX)((f1I)(lI)1)(定義 2)=rX(f1I)(lI)1(定義 1, (2))=frI(lI)1=frI(rI)1(命題 1)=f1I=f=rV(I,X)((f,)),(定義 2.b.4, (2))
だから,V(I,rX)μX,I(1V(I,X)e)=rV(I,X)である.

従って,命題 4.a.1 より(V(I,),μ,e)VからSetへの lax モノイダル関手である.

Lax モノイダル関手(V(I,),μ,e):VSetV(I,)で表す.

AV-圏とする.
命題 3 で定めた lax モノイダル関手V(I,):VSetに対して,定義 4.a.2 よりSet-圏V(I,)Aが定まる.これをV(I,A)で表すとき,定義 4.a.2 より以下が成り立つ:

  • obV(I,A)=obAである.
  • A,BAに対して,V(I,A)(A,B)=V(I,A(A,B))である.

また,
V(I,A)=(obV(I,A),{V(I,A)(A,B)}A,BA,{MA,B,C}A,B,CA,{jA}AA)
と表せば,

  • A,B,CAに対して,MA,B,C=V(I,MA,B,C)μA(B,C),A(A,B)である.
  • AAに対して,jA=V(I,jA)eである.

これを踏まえて,Aの underlying category を定義する.

命題 3.2 の証明で,集合Xに対して写像σX:Set(I,X)Xを,各写像f:IXに対してσX(f):=f()で定めたことを思い出そう.

Underlying category

AV-圏とする.Set-圏V(I,A)に対して,圏A0を以下で定める:

  1. A0の対象とは,Aの対象のことである.

  2. A,BAに対して,AからBへのA0での射とは,IからA(A,B)へのVでの射のことである.

  3. A0での射g:BCf:ABに対して,gfA0での合成gfgf:=MA,B,C((g,f))で定める.
    gf=MA,B,C((g,f))=(V(I,MA,B,C)μA(B,C),A(A,B))((g,f))=V(I,MA,B,C)(μA(B,C),A(A,B)((g,f)))=V(I,MA,B,C)(gf)(lI)1(定義 2)=MA,B,C(gf)(lI)1,(定義 1)
    である:
    I(lI)1gfIIgfA(A,C)A(B,C)A(A,B)MA,B,C

  4. AA0に対して,AA0での恒等射1A1A:=σV(I,A(A,A))(jA)で定める.
    1A=σV(I,A(A,A))(jA)=jA()(命題 3.2)=(V(I,jA)e)()=V(I,jA)(e())=V(I,jA)(1I)(定義 3)=jA,(定義 1)
    である.

A0は圏をなす.

実際,A0の射f:ABを任意に取るとき,V(I,A)Set-圏をなすことから,定義 3.1, (1) (または定義 3.2, (1)) よりlV(I,A)(A,B)=MA,B,B(jB1V(I,A)(A,B))かつrV(I,A)(A,B)=MA,A,B(1V(I,A)(A,B)jA)であり,命題 3.3, (1) の証明と同様の議論により1Bf=f1Aである.

また,A0の射g:BCf:ABを任意に取るとき,V(I,A)Set-圏をなすことから,定義 3.1, (2) (または定義 3.2, (2)) より
MA,B,D(MB,C,D1V(I,A)(A,B))=MA,C,D(1V(I,A)(C,D)MA,B,C)aV(I,A)(C,D),V(I,A)(B,C),V(I,A)(A,B),
であり,命題 3.3, (2) の証明と同様の議論によりh(gf)=(hg)fである.

A0Aunderlying categoryとよぶ.

まとめ

この記事の (1) では恒等 lax モノイダル関手と lax モノイダル関手の合成を定義して,それらと豊穣圏に関する性質を証明した.また,(2) ではモノイダル圏Vに対して lax モノイダル関手V(I,):VSetを構成して,それを用いて V-圏の underlying category とよばれる圏を自然に構成した.

付録: 命題 1 の証明

V=(V,,a,I,l,r)をモノイダル圏とする.ここでは,nLab [ 5 ] の monoidal catgory の記事 を参考にして,以下の命題の証明を与える:

命題 1,再掲

lI=rIである.

以下では,命題 2.b.1 と類似の結果を何度も引用するが,それらは (V=Setでない場合でも) 命題 2.b.1 と同様の議論を行うことによって得られることを注意しておく.このとき,
lI=lI1II=lIrII(rII)1=rI(lI1I)(rII)1(命題 2.b.1, (3))=rI(lI1I)1(II)I(rII)1=rI(lI1I)l(II)I(l(II)I)1(rII)1=rIlII(1I(lI1I))(l(II)I)1(rII)1(命題 2.b.1, (2))=rIlII(1I(lI1I))1I((II)I)(l(II)I)1(rII)1=rIlII(1I(lI1I))aI,II,I(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1=rIlII(1I(lI1I))aI,II,I1(I(II))I(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1=rIlII(1I(lI1I))aI,II,I(aI,I,I1I)(aI,I,I1I)1(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1=rIlIIaI,I,I((1IlI)1I)(aI,I,I1I)(aI,I,I1I)1(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1(命題 2.b.1, (1))=rIlIIaI,I,I(((1IlI)aI,I,I)(1I1I))(aI,I,I1I)1(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1(は関手である)=rIlIIaI,I,I(((1IlI)aI,I,I)1I)(aI,I,I1I)1(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1=rIlIIaI,I,I((rI1I)1I)(aI,I,I1I)1(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1(命題 2.b.1, (5))=rIlII(rI(1I1I))aII,I,I(aI,I,I1I)1(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1(命題 2.b.1, (1))=rIlII(rI1II)aII,I,I(aI,I,I1I)1(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1(は関手である)=rIlII(1IlII)aI,I,IIaII,I,I(aI,I,I1I)1(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1(命題 2.b.1, (5))=rIlII(1IlII)(1IaI,I,I)aI,II,I(aI,I,I1I)(aI,I,I1I)1(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1(命題 2.b.1, (4))=rIlII(1IlII)(1IaI,I,I)aI,II,I1(I(II))I(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1=rIlII(1IlII)(1IaI,I,I)aI,II,I(aI,II,I)1(l(II)I)1(rII)1=rIlII(1IlII)(1IaI,I,I)1I((II)I)(l(II)I)1(rII)1=rIlII(1IlII)(1IaI,I,I)(l(II)I)1(rII)1=rIlII((1I1I)(lIIaI,I,I))(l(II)I)1(rII)1(は関手である)=rIlII(1I(lIIaI,I,I))(l(II)I)1(rII)1=rIlIIaI,I,Il(II)I(l(II)I)1(rII)1(命題 2.b.1, (2))=rIlIIaI,I,I1(II)I(rII)1=rIlIIaI,I,I(rII)1=rI1IIlIIaI,I,I(rII)1=rI(lI)1lIlIIaI,I,I(rII)1=rI(lI)1lI(1IlI)aI,I,I(rII)1(命題 2.b.1, (2))=rI1II(1IlI)aI,I,I(rII)1=rI(1IlI)aI,I,I(rII)1=rI(rI1I)(rII)1(命題 2.b.1, (5))=rIrII(rII)1(命題 2.b.1, (3))=rI1II=rI,
となって,示された.

全体のまとめ

筆者は豊穣圏を初めて扱ったので,誤った議論や誤植がたくさん見つかるかもしれません.ご指摘やご質問はコメント欄に書き込んでいただくか,私の Twitter アカウント ( @shot__math ) にリプライや DM を送って頂けると嬉しいです.

定義や記法は主に Kelly [1] の §1.1 から§1.5 を参考にしました.また,Lurie [2] の §A.1.3 と §A.1.4 も参考にしました.ただし,第4回 (後半) では [1] でなく Lurie [3] の §2.1 を主に参照しました.

最後に,本記事を最後まで読んで頂きありがとうございました.

参考文献

投稿日:202233
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数学科に所属しています.修士二年生です.

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  1. V-圏の underlying category について (続き)
  2. Underlying Category
  3. まとめ
  4. 付録: 命題 1 の証明
  5. 全体のまとめ
  6. 参考文献