この記事では後の記事に向けて楕円関数の変換という問題の解き方について解説していきます。
また参考文献の少ない中筆者が自力で考察した内容となっているので一部間違い等があるかもしれませんがご了承ください。
楕円関数論の祖の一人であるヤコビはその著書"Fundamenta Nova Theoriæ Functionum Ellipticarum"の冒頭で
を満たすような
を決定するという問題を考えました。そしてヤコビはこの問題を次のような形に帰着させます。
微分方程式
を満たすような有理関数
以下でこの問題を、いくつかの簡単な仮定を設けながら、解析的に解いていきます。
まず
が成り立ってくれると嬉しいので
楕円関数の変換は
仮定より
つまり
という置き換えは可逆となり、
に注意すると楕円関数の変換は
つまり
という関係に置き換わる。
また
この変換によって微分方程式は満たされるので残る問題は
いま
ある整数行列
が成り立つ。また
が成り立つ。この関係によって得られる変換を
に対してこの比を取ることで得られる
を
と
逆にモジュラー方程式が成り立っているとき
とおくことで
これによって楕円関数の変換は行列
が成り立つような有理式
ちなみに
となります。つまり楕円関数の変換は
を一般化した問題だということができます。
と表す問題(cf. チェビシェフ多項式)の類似と考えるとわかりやすいと思います。
以下
まず楕円関数の変換
と表せる。
となるのでこの分母分子の係数に注意するとある互いに素な多項式
と書けることがわかる(
また問題の微分方程式において
がわかるので主張を得る。
いま
が成り立つことに注意します。
より
よって
また
および偶奇の違いから
が成り立つので
よって
から
次に行列
行列
が成り立つ。特に任意の
となる。
より
がわかる。
また
前の記事
の命題13として確認したように
つまり
が成り立つことと合わせて主張を得る。
任意の複素数
は基本領域
内に重複度込みで丁度2つの解をもち、その解を
が成り立つ。特に
リウヴィルの第三定理(
この記事
の命題5)から楕円関数
また
が成り立つことから
を得る。
このことから
が成り立つことにも注意します。
命題4での議論から
が成り立つので、簡単のため条件
このとき
であったので
前の記事
の命題7よりある
と変形できます。さらに
と分解することで命題5から素数次の変換を考えれば任意の楕円関数の変換が得られます。
また
の一通りとなる。このとき
より基本領域
における
零点は
極は
の
とおくと
は零点も極も持たない楕円関数となる。よってリウヴィルの第一定理(
この記事
の命題3)からこれは定数関数であり、
また命題3や
となる。このとき
が成り立つ。
の
いま
によって
に注意すると
が成り立つ。このことから
とおくと
となることがわかる。
そして
とおくことで
を得る。
また
とおくと、
の
が成り立つ。
ヤコビは少なくとも一方は
とおき
を
これらは
の
これと上で定めた
はい。
というわけで楕円関数の変換という問題について解析的に考えることで「楕円関数の変換の具体形」がわかりました。次の記事ではこれを利用し楕円関数の変換を代数的に考えることで「楕円関数の変換の具体値」を求めます。それによって
とりあえず今回はこんなところで。
では。