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西園寺さんは家事をしないの数式、円分多項式を実数係数で因数分解‼️

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西園寺さんは家事をしないの数式、円分多項式を実数係数で因数分解‼️

TBS火曜ドラマ feat.数学を愛する会

 みなさま、ごきげんよう👸👑 みゆ🌹ฅ^•ω•^ฅ でございます☺️

 歳のせいか、最近はしょっぱい系の食べ物があまり食べられなくなってきたようです。もともと薄味派ではあるのですが、ちょっと前まで平気だったチキンラーメン🍜🐣のスープすら飲み干せなくなり、本気で衰えを感じました😭😭😭 ハチミツや練乳など糖分については愛飲するほど平気なんですけど、塩分多項式な食べ物は血圧が脳にダイレクト😅💦

 なんのこっちゃな話ですが、実はTBS火曜ドラマ『西園寺さんは家事をしない』の第8回(2024年8月27日放送分)の数式を 数学を愛する会 が監修させていただくことになりまして、図形からインスピレーションを得たという原作の設定にピッタリな式として円分多項式を選定させていただきました👏👏👏

 ドラマの中でノートに書かれていた数式のうち、
マチン系の円周率の式(前半)と立方和の恒等式(後半) マチン系の円周率の式(前半)と立方和の恒等式(後半)

上のページにある式の導出方法については過去記事に 【前半の数式】 【後半の数式】 それぞれございますが、今回はドラマのストーリーに関係してくるこちらの数式
円分多項式を求める式 円分多項式を求める式
に関連した新記事を書いてみようかなと思います❣

円分多項式ってなに

 まずは、円分多項式をご存じない方のために軽く紹介から🐔✨️ n乗すると 1 になる数、つまり xn=1 の解といえば 1n乗根なわけですが、両辺から 1 を引いた xn1=0 の左辺を整数係数範囲でゴリゴリと因数分解してみると次のようなパターンが視えてきます。

x11=(x1)Φ1x21=(x1)Φ1(x+1)Φ2x31=(x1)Φ1(x2+x+1)Φ3x41=(x1)Φ1(x+1)Φ2(x2+1)Φ4x51=(x1)Φ1(x4+x3+x2+x+1)Φ5x61=(x1)Φ1(x+1)Φ2(x2+x+1)Φ3(x2x+1)Φ6x71=(x1)Φ1(x6+x5+x4+x3+x2+x+1)Φ7x81=(x1)Φ1(x+1)Φ2(x2+1)Φ4(x4+1)Φ8x91=(x1)Φ1(x2+x+1)Φ3(x6+x3+1)Φ9x101=(x1)Φ1(x+1)Φ2(x4+x3+x2+x+1)Φ5(x4x3+x2x+1)Φ10

 これらは、一郎さん(x11)、二郎さん(x21)、三郎さん(x31)、 というn郎さん一族の遺伝子情報(Φn)を表した式だと捉えてみてください。彼らはご親族で、ご自身の数を割り切る約数の遺伝子を持っているのが特徴のようです。具体例をあげますと、例えば八郎さん(x81)は8の約数である 1,2,4,8 つまり一郎さんのΦ1、二郎さんのΦ2、四郎さんのΦ4 を受け継ぎ、八郎さんご自身独自のΦ8 も持っておられますよね。
 円分多項式というのはこれらの Φn 一つ一つの式のことで、x11 から順に x21x31,xn1 と因数分解していくと既に計算した"自身の約数次"の円分多項式が出てくるところが非常に興味深いです☺️


~TBS火曜ドラマ「西園寺さんは家事をしない」#8 より~

楠見くん「次数が合成数のときの法則性に気がついた時、鳥肌立ちませんでした?」

瑠衣さん「わかります!約数を求めればいいんだ!って!今まで解いたものが、ちゃんと先のヒントになっているんですよね!」

xn1=d|nΦd(x)

実数係数範囲で因数分解

 さきほどの因数分解では「整数係数範囲で」と条件をつけておりましたが、x1n乗根、すなわち e2πikn 乗という話からスタートしておりますので (e2πi)1n(e2πi)nn まで n 通りの解を持っています。であれば、複素数係数範囲なら次のようにも因数分解できるということですね。

xn1=k=1n[x(e2πi)kn]=[x(e2πi)1n][x(e2πi)2n][x(e2πi)3n]
ちなみにこの式は値が 0 になる前提で立式したものの、因数分解に際しては右辺の展開された式と左辺の因数分解された式がいつでも等しい恒等式の形となっていればよいため、ここでは「=0」のことは忘れてください😂

 言い換えますと、x が(定義域内の)どんな値の時でも等しいよといっているわけですから、今回はヴィジュアルイメージしやすい x として「1 より大きい任意の実数」を想定してみましょう。すると、各因数の x(e2πi)kn=xekn2πi1ekn2πi を基底の元とする斜交座標系上の (x,1) として次の図のようにイメージできます。

!FORMULA[50][-859090984][0] のヴィジュアルイメージ x(e2πi)kn のヴィジュアルイメージ

 イメージしたことによって、面白いことが視えてきました💡✨️
k=1n[x(e2πi)kn] のうち実数軸上にない因数は全て実数軸を挟んで線対称な位置に必ず共役ペアが存在し、しかも共役因数同士の積は偏角が相殺されますから
(x(e2πi)kn)(x(e2πi)nkn)=x22Reeknπix+e2knπienknπi=x22cos(2knπ)x+1
と実数係数化され、ひいては式全体を実数係数範囲内で因数分解することが可能といえるのです。
具体的に数式に翻訳してみますと、

{nが偶数の場合n=2mx2m1=(x(e2πi)mn)(x(e2πi)nn)実軸上k=1m1[x22cos(2k2mπ)x+1]共役ペアの積=(x+1)(x1)実軸上k=1m1[x22cos(kmπ)x+1]共役ペアの積nが奇数の場合n=2m+1x2m+11=(x(e2πi)nn)実軸上k=1m[x22cos(2k12m+1π)x+1]共役ペアの積=(x1)実軸上k=1m[x22cos(2k12m+1π)x+1]共役ペアの積

となり、また cos はその性質上 {cosθ=cos(2Nπ±θ)cosθ=cos((2N+1)π±θ) であるわけですから、
{x2m1=(x1)(x+1)k=1m1[x2±2cos(kmπ)x+1]x2m+11=(x1)k=1m[x2+2cos(2k12m+1π)x+1]=(x1)k=1m[x22cos(2k2m+1π)x+1]

と表現することも可能です。この等式については ガラパゴ数列で遊ぼう シリーズの「 フェルマーの最終定理とフィボナッチ数とリュカ数を因数分解 」にて一般形を導出しておりますのでご興味ございましたら参考までに☺️

 というわけで、これを元に各nについて個別に書き出したものがコチラ🌟

x1=(x1)Φ1x21=(x1)Φ1(x+1)Φ2x31=(x1)Φ1(x2+2cos(13π)x+1)ϕ1/3=(x1)Φ1(x22cos(23π)x+1)ϕ1/3x41=(x1)Φ1(x+1)Φ2(x2±2cos(12π)x+1)ϕ1/2x51=(x1)Φ1(x2+2cos(15π)x+1)ϕ1/5(x2+2cos(35π)x+1)ϕ3/5=(x1)Φ1(x22cos(25π)x+1)ϕ3/5(x22cos(45π)x+1)ϕ1/5x61=(x1)Φ1(x+1)Φ2(x2±2cos(13π)x+1)ϕ1/3(x2±2cos(23π)x+1)ϕ2/3x71=(x1)Φ1(x2+2cos(17π)x+1)ϕ1/7(x2+2cos(37π)x+1)ϕ3/7(x2+2cos(57π)x+1)ϕ5/7=(x1)Φ1(x22cos(27π)x+1)ϕ5/7(x22cos(47π)x+1)ϕ3/7(x22cos(67π)x+1)ϕ1/7x81=(x1)Φ1(x+1)Φ2(x2±2cos(14π)x+1)ϕ1/4(x2±2cos(24π)x+1)ϕ1/2(x2±2cos(34π)x+1)ϕ3/4x91=(x1)Φ1(x2+2cos(19π)x+1)ϕ1/9(x2+2cos(39π)x+1)ϕ1/3(x2+2cos(59π)x+1)ϕ5/9(x2+2cos(79π)x+1)ϕ7/9=(x1)Φ1(x22cos(29π)x+1)ϕ7/9(x22cos(49π)x+1)ϕ5/9(x22cos(69π)x+1)ϕ1/3(x22cos(89π)x+1)ϕ1/9x101=(x1)Φ1(x+1)Φ2(x2±2cos(15π)x+1)ϕ1/5(x2±2cos(25π)x+1)ϕ2/5(x2±2cos(35π)x+1)ϕ3/5(x2±2cos(45π)x+1)ϕ4/5
 遺伝子情報Φnがさらにϕd/n=x2+2cos(dnπ)x+1の積へと分解され、円分多項式を実数係数範囲で因数分解することができました。ϕd/nの積として表現される円分多項式を見れば、xn1 の因数に n の約数次の円分多項式が含まれる理由も一目瞭然ですね。一般的な呼称ではありませんが、このような ϕd/n を個人的に原始円分多項式と呼んでいます。

 既にお気づきかもしれませんが、円分多項式 Φn と原始円分多項式 ϕd/n の関係を等号で結んで俯瞰してみますと、にわかには信じがたい等式が姿を表します😲
x1=Φ1x+1=Φ2x2+x+1=Φ3=ϕ1/3=(x2+cos(13π)x+1)=(x2cos(23π)x+1)x2+1=Φ4=ϕ1/2=(x2±cos(12π)x+1)x4+x3+x2+x+1=Φ5=ϕ1/5ϕ3/5=(x2+cos(15π)x+1)(x2+cos(35π)x+1)=(x2cos(45π)x+1)(x2cos(25π)x+1)x2x+1=Φ6=ϕ2/3=(x2+cos(23π)x+1)x6+x5+x4+x3+x2+x+1=Φ7=ϕ1/7ϕ3/7ϕ5/7=(x2+cos(17π)x+1)(x2+cos(37π)x+1)(x2+cos(57π)x+1)=(x2cos(67π)x+1)(x2cos(47π)x+1)(x2cos(27π)x+1)x4+1=Φ8=ϕ1/4ϕ3/4=(x2±2cos(14π)x+1)(x2±2cos(34π)x+1)x6+x3+1=Φ9=ϕ1/9ϕ5/9ϕ7/9=(x2+cos(19π)x+1)(x2+cos(59π)x+1)(x2+cos(79π)x+1)=(x2cos(89π)x+1)(x2cos(49π)x+1)(x2cos(29π)x+1)x4x3+x2x+1=Φ10=ϕ2/5ϕ4/5=(x2+2cos(25π)x+1)(x2+2cos(45π)x+1)
係数に注目すると三角関数の値同士の積和がどれも整数になっている摩訶不思議⁉️ 

 少し検算してみましょう。Φ92次の項の係数は 0 ですが、これは右辺の展開を考えれば 2次になる組み合わせの積を合計した総和なわけですから
1+1+1+(2cos(19π))(2cos(59π))+(2cos(19π))(2cos(79π))+(2cos(59π))(2cos(79π))=0
だということになります。
2cosαcosβ=Re[(cosα+isinα)(cosβ+isinβ)+(cosα+isinα)(cosβisinβ)]=[cos(α+β)+cos(αβ)]=[cos(α+β)+cos(βα)]
と表せることを踏まえてゴリラ計算🦍すると
3+[4cos(19π)cos(59π)+4cos(19π)cos(79π)+4cos(59π)cos(79π)]=3+2[cos(69π)+cos(49π)]+2[cos(89π)+cos(69π)]+2[cos(129π)+cos(29π)]=3+2[cos(29π)+cos(49π)+cos(69π)+cos(89π)12+cos(6293π)+cos(12493π)1]=33=0

確かに合っているようですね。円分多項式 Φn の整数係数は円をn等分したときの三角関数値(=1n 乗根の実部/虚部)の積とその総和から求められるという知見を得られました。

 同様にして得られる整数は、 ガラパゴ数列で遊ぼう シリーズの
フェルマーの最終定理とフィボナッチ数とリュカ数を因数分解
任意のzを第z-1/z貴金属数とみなしてフィボナッチ数とリュカ数を一般化してみた✨
などの記事にも登場しますので併せてお読みいただけましたら幸いです。

謝辞

 この記事を執筆するにあたり査読をしてくださった nayuta_ito 先生、監修をご依頼くださったドラマ制作スタッフのみなさま、そして監修に協力くださった 数学を愛する会 のみなさまに感謝致します。

投稿日:2024827
更新日:202492
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投稿者

https://mathlog.info/articles/323         数学を愛する会 副会長 CCO / ガラパゴ数学 開拓者 / 猫舌・甘党・薄味派

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