集合 $A,B$ に対し、順序対 $(a,b)$ を用いて直積集合 $A\times B$ を
$$
A\times B:=\{(a,b)\mid a\in A\ \land\ b\in B\}
$$
で定義する。
すなわち、$A\times B$ は第 $1$ 成分が $A$ の元であり、第 $2$ 成分が $B$ の元である順序対全体の集合である。
順序対 $(a,b)$ は、$a$ を第 $1$ 成分、$b$ を第 $2$ 成分にもつ対象である。
順序対では順序が重要であり、任意の対象 $a_1,a_2,b_1,b_2$ について
$$
(a_1,b_1)=(a_2,b_2)\ \Leftrightarrow\ (a_1=a_2\ \land\ b_1=b_2)
$$
が成り立つ(
証明はコチラ
)。
定義より、直ちに
$$
(a,b)\in A\times B\ \Leftrightarrow\ a\in A\land b\in B
$$
が成り立つ。
直積集合 $A\times B$ を定義するために、$A$ と $B$ が共通の全体集合の部分集合であることは仮定しない。
ある共通の全体集合 $U$ を固定して議論している場合に $A,B\subseteq U$ であれば
$$
A\times B\subseteq U\times U
$$
が成り立つ。より一般に、$A\subseteq U$ かつ $B\subseteq V$ であれば
$$
A\times B\subseteq U\times V
$$
が成り立つ。直積集合の定義そのものには共通の全体集合は不要であり、
ここからは全体集合は必要に応じて明示する。
単集合の場合には、直積集合の定義から
$$
\{a\}\times B=\{(a,b)\mid b\in B\}
$$
が成り立つ。実際、単集合の定義より
$$
\{a\}\times B=\{(x,b)\mid x\in\{a\}\land b\in B\}
$$
であり、$x\in\{a\}\ \Leftrightarrow\ x=a$ である(
証明はコチラ
)から、これは
$$
\{(a,b)\mid b\in B\}
$$
に一致する。
$ $
同様に、直積集合の定義から
$$
A\times\{b\}=\{(a,b)\mid a\in A\}
$$
が成り立つ。実際、
$$
A\times\{b\}=\{(a,y)\mid a\in A\land y\in\{b\}\}
$$
であり、$y\in\{b\}\ \Leftrightarrow\ y=b$ である(
証明はコチラ
)から、これは
$$
\{(a,b)\mid a\in A\}
$$
に一致する。
平面に直交座標系を入れるとは、平面上に原点を定め、
さらに互いに直交する $2$ 本の数直線を座標軸として固定することである。
$ $
このとき、平面上の各点 $P$ には、ただ $1$ 組の実数 $(x,y)\in\mathbb{R}\times\mathbb{R}$ が対応する。
この $(x,y)$ を点 $P$ の座標という。
$ $
したがって、直交座標系を $1$ つ固定すれば、平面上の点全体の集合と $\mathbb{R}\times\mathbb{R}$ との間に自然な対応が定まる。
この意味で、『座標平面』を $\mathbb{R}^2=\mathbb{R}\times\mathbb{R}$ と同一視することができよう。
$ $
特に $A,B\subseteq\mathbb{R}$ とするとき、
$$
A\times B=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2\mid x\in A\ \land\ y\in B\}
$$
であるから、$A\times B$ は座標平面 $\mathbb{R}^2$ の部分集合として図形的に表すことができる。
$ $
例えば、$A$ と $B$ がともに有界区間(左右のどちらにも無限に伸びていかない区間)であるとき、
$A\times B$ は両端の開閉に応じて、開長方形、閉長方形、または半開長方形として表されるであろう。
$ $
また、$A$ または $B$ のいずれかが無界区間であるとき、$A\times B$ は帯状の領域や半平面状の領域として表されることがある。
さらに、$A$ または $B$ が $1$ 点集合であるとき、$A\times B$ は線分、半直線、直線、または $1$ 点集合となることがある。
$ $
このように、直積集合 $A\times B$ は、座標平面上の点集合として視覚的に捉えることができる。
$n$ を正の整数とする。$n$ 組を、以下のように順序対を用いて帰納的に定義する。
ここで述べる『帰納的に定義する』とは、例えば
$$
\begin{align}
(a,b,c):&=((a,b),c)\\
(a,b,c,d):&=(((a,b),c),d)=((a,b,c),d)\\
(a,b,c,d,e):&=((((a,b),c),d),e)=((a,b,c,d),e)\\
(a,b,c,d,e,f):&=(((((a,b),c),d),e),f)=((a,b,c,d,e),f)\\
\end{align}
$$
と定めるように、既に定義された $(n-1)$ 組と順序対を用いて $n$ 組 を定義することを言う。
$n$ 組の定義には、本文で採用したものとは異なる流儀もある。その $1$ つとして、まず $0$-組(空組)を
$$
():=\varnothing
$$
で定め、次に、各正の整数 $n$ と任意の対象 $x_1,\dots,x_n$ に対して、
$n$ 組を次で帰納的に定義する流儀がある。
-この流儀では、
すべての $n$ 組が、空組から出発して順序対を $1$ つずつ重ねることによって統一的に構成される。
$ $
例えば
$$
(a)= ((),a),\qquad
(a,b)=(((),a),b),\qquad
(a,b,c)=((((),a),b),c)
$$
となる。したがって、この流儀においては、一般に $(x)$ を $x$ そのものと同一視しない。
同様に、この流儀では $2$ 組も空組から順序対を重ねて新しく構成される。したがって、記号として $(x_1,x_2)$ と書いても、
それは最初に与えた通常の順序対 $(x_1,x_2)$ と集合として文字どおり同一であるとは限らない。
$ $
このように、$n$ 組の定義には複数の流儀があるが、いずれを採用する場合も、
その後の定義や命題や証明を同じ流儀に従って統一的に記述することが重要である。
$n$ を正の整数とし、集合 $X_1,X_2,\cdots,X_n$ に対し、集合 $X_1,X_2,\cdots,X_n$ の直積(直積集合)を
$$
X_1\times X_2\times\cdots\times X_n
:=
\{(x_1,x_2,\cdots,x_n)\mid x_1\in X_1\land x_2\in X_2\land\cdots\land x_n\in X_n\}
$$
で定義する。すなわち、$X_1\times X_2\times\cdots\times X_n$ は、第 $i$ 成分が $X_i$ の元である $n$ 組全体の集合である。
この定義のもとで、任意の $n$ 組 $(x_1,x_2,\cdots,x_n)$ と $(y_1,y_2,\cdots,y_n)$ について
$$
(x_1,x_2,\cdots,x_n)=(y_1,y_2,\cdots,y_n)
\ \Leftrightarrow\
(x_1=y_1\land x_2=y_2\land\cdots\land x_n=y_n)
$$
が成り立つ。特に、$n=2$ のときは通常の順序対 $(x_1,x_2)$ に一致する。
このように、$n$個の集合 $X_1, X_2,\cdots, X_n$ からなる直積集合
$$
X_1\times X_2\times\cdots\times X_n
$$
を
$$
\prod_{i=1}^n X_i
$$
とも表す。すなわち
$$
\prod_{i=1}^n X_i
:=
X_1\times X_2\times\cdots\times X_n
$$
で定義する。特に、$X_1=X_2=\cdots=X_n=X$ のときは
$$
X^n:=\prod_{i=1}^n X_i
$$
と表す事がある。
$n$ を正の整数とする。任意の $n$ 組 $(x_1,x_2,\cdots,x_n)$ と $(y_1,y_2,\cdots,y_n)$ について
$$
(x_1,x_2,\cdots,x_n)=(y_1,y_2,\cdots,y_n)
\ \Leftrightarrow\
(x_1=y_1\land x_2=y_2\land\cdots\land x_n=y_n)
$$
が成り立つ。
数学的帰納法については、
述語論理⑥
で紹介した。
より詳細な原理については、"順序集合"ないし"自然数"の中で扱いたい(予定)。
$n$ に関する数学的帰納法によって示す。
$A,B$を集合とする。一般に
$$
A\times B=B\times A
$$
は成り立たない。すなわち、ある集合 $A,B$ が存在して
$$
A\times B\neq B\times A
$$
が成り立つ。
集合$A,B$をそれぞれ
$$
A:=\{\varnothing\},\qquad B:=\{\{\varnothing\}\}
$$
とおく。
$ $
-以上より、$(\varnothing,\{\varnothing\})$ は $A\times B$ の元であるが $B\times A$ の元ではない。したがって
$$
A\times B\neq B\times A
$$
を得る。
$$ \Box$$