0
大学数学基礎解説
文献あり

置換行列についての覚書

142
0

定義

n次対称群Snの元σに対して,線型変換pσ:CnCn
pσϵj:=ϵσ(j)
で定め,Cnの標準基底に関するpσの表現行列をPσで表わす:
Pσ(i,j)=δi,σ(j)={1i=σ(j)0iσ(j).
明らかにpσは全単射であるから,Pσは可逆行列である.したがって,写像P:SnGL(n,C)
P(σ):=Pσ
で定めることができる.

Pは単射群準同型である.

  1. σ,τSnとする.このとき
    pστϵj=ϵ(στ)(j)=ϵσ(τ(j))=pσϵτ(j)=pσpτϵj
    よりpστ=pσpτとなるので,(行列の積の定義(cf. [5]例13)より)
    P(στ)=Pστ=PσPτ=P(σ)P(τ)
    が成り立つ.
  2. σSnとし,Pσ=Inとする.このとき,pσ=idCnより,任意のj{1,,n}に対して
    ϵσ(j)=pσϵj=ϵjσ(j)=j
    が成り立つので,σ=idを得る.

命題1より
SnPerm(n):=Im(P)<GL(n,C)
が成り立つ.Perm(n)の元を(n次)置換行列という.

置換σSnに対して,
detpσ=detPσ=τSnsgn(τ)Pσ(1,τ(1))Pσ(n,τ(n))=τSnsgn(τ)δ1,σ(τ(1))δn,σ(τ(n))=sgn(σ1)=sgn(σ)
が成り立つ.また,
trpσ=trPσ=i=1nδi,σ(i)=#{i{1,,n}:σ(i)=i}
が成り立つ.

直交性

置換行列は直交行列である:
Perm(n)<O(n).

σSnとする.このとき
PσT(i,j)=Pσ(j,i)=δj,σ(i)=δi,σ1(j)=Pσ1(i,j)
より,
PσT=Pσ1=P(σ1)=P(σ)1=Pσ1
が成り立つ.

作用

σSnとする.

x=iϵixiCnに対して
pσx=i=1n(pσϵi)xi=i=1nϵσ(i)xi=i=1nϵixσ1(i)
が成り立つので,置換行列Pσによる列ベクトルへの作用は
Pσ[x1xn]=[xσ1(1)xσ1(n)]
で与えられる(cf. [7]例11).したがって
Pσ1[a1,1a1,man,1an,m]=[aσ(1),1aσ(1),maσ(n),1aσ(n),m]
が成り立つ(行ベクトルの入れ替え).

AMat(m,n;C)に対して
(APσ)(i,j)=k=1nA(i,k)Pσ(k,j)=k=1nA(i,k)δk,σ(j)=A(i,σ(j))
が成り立つ.したがって,PσAの列ベクトルを入れ替える:
A=[A^(1)A^(n)]APσ=[A^(σ(1))A^(σ(n))].

固有多項式

置換σSnの巡回置換分解に現れる長さ{2,,n}の巡回置換の個数をN{0,,n}とおくと,線型変換pσの固有多項式fσ
fσ(t)=(t1)trpσ=2n(t1)N
で与えられる.

“長さ1の巡回置換”も考えて
N1:=#{i{1,,n}:σ(i)=i}
とおくと,N1=trpσであったから,
fσ(t)==1n(t1)N
とまとめられる.

Step 1.

正整数N>0に対して次置換行列CPerm()
C:=P((12))=[0001100001000010]
で定めると,
det(tIC)=det[t0011t000100001t]=tdet[t0010001t]+(1)1+(1)det[1t0010001]=tt1+(1)1+(1)(1)1=t1
が成り立つ.

Step 2.

置換σSnの“広義”巡回置換分解を
σ=σ1σm
とする:
σj:=(i1,jij,j), 1jm, 1jn.
このとき,Cnの基底(ϵi1,1,,ϵi1,1,,ϵi1,m,,ϵim,m)に関するpσの表現行列は
C1Cm
となる.したがって
fσ(t)=det(tIn(C1Cm))=det((tI1C1)(tImCm))=j=1mdet(tIjCj)=j=1m(tj1)==1n(t1)#{j{1,,m}:j=}==1n(t1)N
が成り立つ.

σ:=(13)(24)S4とおく.このとき
Pσ=[0010000110000100]
より
fσ(t)=det[t0100t0110t0010t]=tdet[t010t010t]+(1)det[0t110001t]=t(t3t)(1+t2)=t42t2+1=(t21)2
となるので,確かに
fσ(t)==14(t1)N
が成り立っている.

最小多項式

置換σSnの巡回置換分解を
σ=σ1σm
とすると,線型変換pσの最小多項式μσ
μσ={Φk:j{1,,m}, kj}
で与えられる.ただしΦkk番目の 円分多項式 である.

Step 1.

次置換行列CPerm()の最小多項式μ:=μ(12)
μ(t)=t1=kΦk(t)
で与えられる.実際,

  1. C=Iよりμ(t)t1を得る.
  2. degμ1として
    μ(t)=a1t1++a1t+a0
    とおくと,
    0=μ(C)ϵ1=(a1C1++a1C+a0I)ϵ1=a1ϵ++a1ϵ2+a0ϵ1
    より
    a1==a1=a0=0
    が得られるが,これは不合理である.

Step 2.

Cnの適当な基底に関するpσの表現行列は
I0C1Cm
となる(のだった).よって
μσ=LCM{μ1,μ1,,μm}=LCM{Φ1,k11Φk1,,kmmΦkm}={Φk:j{1,,m}, kj}
が成り立つ.

σ:=(23)(456)S6とおく.このとき,
Pσ=I1C2C3;Pσ2=I1I2C32;Pσ3=I1C2I3;Pσ4=I1I2C3;
より
Pσ4+Pσ3=Pσ+I6
が成り立つので
μσ(t)t4+t3t1
を得る.ここで,degμσ3として
μσ(t):=at3+bt2+ct+d
とおくと,
O6=μσ(Pσ)=aPσ3+bPσ2+cPσ+dI6
であるから,
0=(aPσ3+bPσ2+cPσ+dI6)ϵ4=aϵ4+bϵ6+cϵ5+dϵ4
よりb=c=0が得られ,
0=(aPσ3+dI6)ϵ2=aϵ3+dϵ2
よりa=d=0が得られるが,これは不合理である.ところで
Φ1(t)Φ2(t)Φ3(t)=(t1)(t+1)(t2+t+1)=t4+t3t1
であるから,確かに
μσ=Φ1Φ2Φ3
が成り立っている.

  1. 任意の置換行列はC上対角化可能である.
  2. 置換行列PσR上対角化可能であるためには,σ2=idが成り立つことが必要かつ十分である.

固有値と固有ベクトル

置換σSnの巡回置換分解を
σ=σ1σm
とすると,線型変換pσの固有値全体のなす集合は
{1 の原始 k 乗根:j{1,,m}, kj}
に一致する.

  1. ζC1の原始乗根(のひとつ)とし,
    vk:=[ζkζ(1)kζ2kζk]C, 1k
    とおくと,
    Cvk=[ζkζkζ(1)kζ2k]=ζkvk
    が成り立つ.したがってv1,v2,,vはそれぞれ相異なる固有値ζ,ζ2,,ζ=1に属するCの固有ベクトルであるから,(v1,v2,,v)は(C上)線型独立である(ヴァンデルモンドの行列式からもわかる).
  2. σSnの(“広義”)巡回置換分解を
    σ=σ1σm, σj:=(i1,jij,j)
    とする.このとき
    wσjk:=ϵi1,jζjjk+ϵi2,jζj(j1)k++ϵij1,jζj2k+ϵij,jζjkCn
    とおくと,
    pσwσjk=(pσϵi1,j)ζjjk+(pσϵi2,j)ζj(j1)k++(pσϵij1,j)ζj2k+(pσϵij,j)ζjk=ϵi2,jζjjk+ϵi3,jζj(j1)k++ϵij,jζj2k+ϵi1,jζjk=ζjk(ϵi1,jζjjk+ϵi2,jζj(j1)k++ϵij1,jζj2k+ϵij,jζjk)=ζjkwσjk
    が成り立つ.
  1. σ1:=(23)(465)S6とおく.このとき
    pσ1ϵ1=ϵ1;pσ1(ϵ2ϵ3)=ϵ3ϵ2=(ϵ2ϵ3);pσ1(ϵ2+ϵ3)=ϵ2+ϵ3;pσ1(ϵ4+ω2ϵ6+ωϵ5)=ϵ6+ω2ϵ5+ωϵ4=ω(ϵ4+ω2ϵ6+ωϵ5);pσ1(ϵ4+ωϵ6+ω2ϵ5)=ϵ6+ωϵ5+ω2ϵ4=ω2(ϵ4+ωϵ6+ω2ϵ5);pσ1(ϵ4+ϵ6+ϵ5)=ϵ4+ϵ6+ϵ5;
    が成り立つ(ただしω:=ζ3である).そこで
    A1:=[11111111ωω21ω2ω1]
    とおくと,A1GL(6,C)であって
    Pσ1A1=A1[111ωω21]
    が成り立つ.
  2. σ2:=(13)(24)S4とおく.このとき
    pσ2(ϵ1ϵ3)=ϵ3ϵ1=(ϵ1ϵ3);pσ2(ϵ1+ϵ3)=ϵ1+ϵ3;pσ2(ϵ2ϵ4)=ϵ4ϵ2=(ϵ2ϵ4);pσ2(ϵ2+ϵ4)=ϵ2+ϵ4;
    が成り立つ.そこで
    A2:=[1100001111000011]
    とおくと,A2GL(4,R)であって
    Pσ2A2=A2[1111]
    が成り立つ.
  3. σ3:=(12)(3456)S6とおく.このとき
    pσ3(ϵ1ϵ2)=(ϵ1ϵ2);pσ3(ϵ1+ϵ2)=ϵ1+ϵ2;pσ3(ϵ31ϵ4ϵ5+1ϵ6)=1(ϵ31ϵ4ϵ5+1ϵ6);pσ3(ϵ3ϵ4+ϵ5ϵ6)=(ϵ3ϵ4+ϵ5ϵ6);pσ3(ϵ3+1ϵ4ϵ51ϵ6)=1(ϵ3+1ϵ4ϵ51ϵ6);pσ3(ϵ3+ϵ4+ϵ5+ϵ6)=ϵ3+ϵ4+ϵ5+ϵ6;
    が成り立つ.そこで
    A3:=[11111111111111111111]
    とおくと,A3GL(6,C)であって
    Pσ3A3=A3[111111]
    が成り立つ.

附:巡回行列

a=iϵiai1Cnに対して,多項式
Γa(t):=a0+a1t++an1tn1
に置換行列Cnを代入して得られるn次正方行列
Γa(Cn)=a0In+a1Cn++an1Cnn1=[a0an1a2a1a1a0a2a2an1an1a2a1a0]
を,aから定まる巡回行列という.

a=iϵiai1Cnから定まる巡回行列Γa(Cn)のディターミナントは
Γa(1)Γa(ζn)Γa(ζnn1)
に等しい.

可逆行列ZGL(n,C)
Z(j,k):=ζn(nj+1)kZ^(k)=[ζnnkζn(n1)kζn2kζnk]=vnk
で定める.このとき
Γa(Cn)Z^(k)=(a0In+a1Cn++an1Cnn1)vnk=a0vnk+a1ζnkvnk++an1(ζnk)n1vnk=(a0+a1ζnk++an1(ζnk)n1)vnk=Γa(ζnk)vnk=Γa(ζnk)Z^(k)
より
Γa(Cn)Z=Z[Γa(ζn)Γa(ζnn1)Γa(ζnn)]
となるので,
detΓa(Cn)=Γa(1)Γa(ζn)Γa(ζnn1)
が成り立つ.

巡回行列Γa(Cn)の固有値は
Γa(1),Γa(ζn),,Γa(ζnn1)
であり,固有値Γa(ζnk), 0kn1,に属する固有ベクトル(のひとつ)は
[1ζn(n1)kζn2kζnk]
である.

Γa(ζnk)は相異なるとは限らない.たとえばa:=(1,1,ω)とおくと,
Γa(1)=1+111+ω12=2+ω=1+1ω1+ωω2=Γa(ω)
が成り立つ.

  1. a:=ϵ1x+ϵ2yC2とおくと,Γa(t)=x+ytより
    detΓa(C2)=Γa(1)Γa(1)=(x+y)(xy)
    となるが,一方
    detΓa(C2)=det[xyyx]=x2y2
    であるから,
    x2y2=(x+y)(xy)
    が成り立つ.
  2. b:=ϵ1x+ϵ2y+ϵ3zC3とおくと,Γb(t)=x+yt+zt2より
    detΓb(C3)=Γb(1)Γb(ω)Γb(ω2)=(x+y+z)(x+yω+zω2)(x+yω2+zω)
    となるが,一方
    detΓb(C3)=det[xzyyxzzyx]=x3+y3+z33xyz
    であるから,
    x3+y3+z33xyz=(x+y+z)(x+yω+zω2)(x+yω2+zω)=(x+y+z)(x2+y2+z2+(ω+ω2)(xy+yz+zx))=(x+y+z)(x2+y2+z2xyyzzx)
    が成り立つ.

附:二重確率行列

nN>0としϵ:=jϵjRnとおく.このとき,集合
DS(n):={SMat(n,n;R):S(i,j)0, Sϵ=ϵ=STϵ}
の元を二重確率行列という.

  1. 単位行列は二重確率行列である.
  2. 二重確率行列の積は二重確率行列である.実際,S,TDS(n)とすると,
    (ST)(i,j)=k=1nS(i,k)T(k,j)0;(ST)ϵ=S(Tϵ)=Sϵ=ϵ;(ST)Tϵ=TT(STϵ)=TTϵ=ϵ;
    が成り立つので,STDS(n)を得る.

置換行列PσPerm(n)は二重確率行列である.実際,明らかに
Pσ(i,j)=δi,σ(j)0, Pσϵ=j=1nϵσ(j)=ϵ
が成り立ち,さらに
PσTϵ=Pσ1ϵ=ϵ
も成り立つ.

置換行列の凸結合は二重確率行列である:
(aσ)σ[0,1]Sn, σSnaσ=1S:=σSnaσPσDS(n).
実際,明らかにS(i,j)0であり,例10より
Sϵ=σSnaσPσϵ=σSnaσϵ=(σSnaσ)ϵ=ϵ,
および
STϵ=σSnaσPσTϵ=σSnaσϵ=(σSnaσ)ϵ=ϵ
が成り立つ.

SMat(n,n;R)とする.このとき次は同値である:

  1. Sは置換行列の凸結合で書ける;
  2. 任意のAMat(n,n;R)に対して
    i,j=1nA(i,j)S(i,j)maxσSni=1nA(i,σ(i))(=maxσSntr(APσ))
    が成り立つ.

不等式の左辺はASとのFrobenius内積である(cf. [6]例7):
i,j=1nA(i,j)S(i,j)=tr(AST)=AS.

まづ
Conv(Perm(n)):={XMat(n,n;R):(aσ)σ[0,1]Sn, σSnaσ=1, X=σSnaσPσ}
とおき,写像h:Mat(n,n;R)R
h(A):=maxσSnAPσ=sup{AX:XConv(Perm(n))}
で定める(これをConv(Perm(n))支持函数(support function)という).このとき
Conv(Perm(n))={SMat(n,n;R):AMat(n,n;R), ASh(A)}
が成り立つことを示せばよい.

  1. SConv(Perm(n))とすると,S=σSnaσPσ, aσ[0,1], σSnaσ=1
    と書けるので,任意のAMat(n,n;R)に対して
    AS=σSnaσAPσσSnaσh(A)=h(A)
    が成り立つ.
  2. SConv(Perm(n))とする.いまConv(Perm(n))Rn!からMat(n,n;R)への連続写像
    (aσ)σσSnaσPσ
    による(n!1)単体の像なのでコンパクトであり,したがってX0Conv(Perm(n))であって
    SX0=dist(S,Conv(Perm(n)))>0
    を満たすものが存在する.そこでA0:=SX0 (On)とおくと,
    A0SA0X0=A0SX0=SX02>0A0S>A0X0
    が成り立つ.あとは任意のσSnに対して
    A0X0A0Pσ
    が成り立つことを示せばよい.ところでσSnとすると,任意のr]0,1]に対して,(1r)X0+rPσConv(Perm(n))より,
    A02=SX02S((1r)X0+rPσ)2=A0r(PσX0)2=A022rA0PσX0+r2PσX02
    が成り立つので,
    A0PσA0X0r2PσX020(r0)
    を得る.
Birkhoff–von Neumann

任意の二重確率行列は置換行列の凸結合で書ける.

Step 1.

任意のSDS(n){In}に対して,σSSn{id}であって
0{S(i,σS(i)):1in, iσS(i)}
なるものが存在することを示す.

  1. n=1のときは自明に成り立つ.
  2. SDS(n+1){In+1}とし,
    σSn+1{id}, 0{S(i,σ(i)):1in+1, iσ(i)}
    が成り立ったと仮定する.このとき,Sの固有多項式fS
    fS(t)=(tS(1,1))(tS(n+1,n+1))+σSn+1{id}sgn(σ)(tδ1,σ(1)S(1,σ(1)))(tδn+1,σ(n+1)S(n+1,σ(n+1)))
    で与えられるが,各σSn+1{id}に対して,iσ{1,,n+1}であって
    iσσ(iσ), S(iσ,σ(iσ))=0tδiσ,σ(iσ)S(iσ,σ(iσ))=0
    なるものが存在するので,上式第2項は0となり,
    fS(t)=(tS(1,1))(tS(n+1,n+1))
    が成り立つ.ところで,二重確率行列Sは固有値1を持つので,i0{1,,n+1}であってS(i0,i0)=1なるものが存在し,したがって
    S=[000010000]
    となる.よってSの第i0行と第i0列を取り除いてできるn次正方行列をS0とおくと,S0DS(n){In}であるから,数学的帰納法の仮定よりσ0Sn+1{id}であって
    σ0(i0)=i0, 0{S(i,σ0(i)):1in+1, ii0, iσ0(i)},
    すなわち
    0{S(i,σ0(i)):1in+1, iσ0(i)}
    を満たすものが存在するが,これは不合理である.

Step 2.

SDS(n)とする.このとき任意のAMat(n,n;R)に対して
i,j=1nA(i,j)S(i,j)maxσSni=1nA(i,σ(i))
が成り立つことを示せばよい(cf. 補題1).

  1. そこでAMat(n,n;R)としτSnであって
    maxσSni=1nA(i,σ(i))=i=1nA(i,τ(i))=tr(APτ)
    なるものを取る.いまSPτDS(n)であり,系1より
    AS=tr(AST)=tr((APτ)(PτTST))=tr((APτ)(SPτ)T)=APτSPτ
    であるから,τ=idとしてよい:
    σSn, tr(APσ)trA.
  2. さて,rR>0とし
    Ar:=A+rInMat(n,n;R)
    とおく.このとき,任意のσSn{id}に対して
    trArtr(ArPσ)=(trAtr(APσ))+rnrtrPσrnr(n1)=r
    が成り立つ.
  3. つぎに,rR>0とし,T0DS(n)であって
    supTDS(n)ArT=ArT0
    を満たすものを考える(注意:DS(n)Mat(n,n;R)は有界閉集合なので,このようなT0は存在する).もしT0Inであるとすると,前段よりτ0Sn{id}であって
    0{T0(i,τ0(i)):1in, iτ0(i)}
    を満たすものが存在する.そこで
    r:=min{T0(i,τ0(i)):1in, iτ0(i)}R>0
    とおいてTrMat(n,n;R)
    Tr:=T0+rInrPτ01
    で定めると,
    Tr(i,j)=T0(i,j)+rδi,jrδτ0(i),j={T0(i,i)+rτ0(i)i=jT0(i,τ0(i))riτ0(i)=jT0(i,j)otherwise
    よりTr(i,j)0であって,
    Trϵ=T0ϵ+rInϵrPτ01ϵ=ϵ+rϵrϵ=ϵ=TrTϵ
    が成り立つので,TrDS(n)である.ところがこのとき
    ArTrArT0=ArTrT0=ArrInrPτ01=r(ArInArPτ0T)=r(trArtr(APτ0))rr>0
    となってT0の取り方に反する.
  4. よって任意のrR>0に対して
    ASArSArT0=ArIn=trAr=trA+rn
    が成り立つ.
  5. 以上より
    i,j=1nA(i,j)S(i,j)=AStrA=maxσSni=1nA(i,σ(i))
    を得る.

正方行列AMat(n,n;R)に対して
perA:=σSnA(1,σ(1))A(n,σ(n))
Aパーマネントという.二重確率行列S=τaτPτDS(n)のパーマネントについて,
S(i,σ(i))=τSnaτδi,τ(σ(i))aσ1
より,
perS=σSnS(1,σ(1))S(n,σ(n))σSnaσ1aσ1=σSnaσn>0
が成り立つ.よってσSSnであって
0{S(1,σS(1)),,S(n,σS(n))}
を満たすもの(すなわちSPσSの対角成分がすべて正となるもの)が存在する.

参考文献

投稿日:410
更新日:419
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

うすい
60
13393
学んだことをまとめています.

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. 定義
  2. 直交性
  3. 作用
  4. 固有多項式
  5. 最小多項式
  6. 固有値と固有ベクトル
  7. 附:巡回行列
  8. 附:二重確率行列
  9. 参考文献