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第20回日曜数学会の発表資料「k-ナッチ数の一般項の四捨五入表現」

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この記事は、  第20回日曜数学会  の発表資料です。

$k$-ナッチ数の一般項の四捨五入表現」

$k$-ナッチ数とは

$k$-ナッチ数列」を考える

フィボナッチ数列は漸化式が先行2項の和で定義される次のような数列です。

フィボナッチ数列

$0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,\cdots$

漸化式を先行3項の和に変えたものはトリボナッチ数列と呼ばれています。

トリボナッチ数列

$0,0,1,1,2,4,7,13,24,44,81,149,274,504,927,1705,3136,5768,\cdots$

同様に考えて、漸化式が先行 $k$ 項の和で定義される数列をこの記事では $k$ -ナッチ数列と呼ぶことにします。

$k$-ナッチ数列

$\underbrace{0,0,\cdots0,1,}_{\text{k個}}1,2,4,\cdots$

例えば、$5$-ナッチ数列はこんな感じです。

$5$-ナッチ数列(ペンタナッチ数列)

$0,0,0,0,1,1,2,4,8,16,31,61,120,236,464,912,\cdots$

$k$-ナッチ数の隣接する項の比を調べる

$k$-ナッチ数の隣接する項の比を調べると、何らかの定数に収束しそうであることがわかります。

$k=2$のとき
$\frac{1}{1},\frac{2}{1},\frac{3}{2},\frac{5}{3},\frac{8}{5},\frac{13}{8},\frac{21}{13},\cdots\to1.6180\cdots$
$k=3$のとき
$\frac{1}{1},\frac{2}{1},\frac{4}{2},\frac{7}{4},\frac{13}{7},\frac{24}{13},\frac{44}{24},\cdots\to1.8392\cdots$
$k=4$のとき
$\frac{1}{1},\frac{2}{1},\frac{4}{2},\frac{8}{4},\frac{15}{8},\frac{29}{15},\frac{56}{29},\cdots\to1.9275\cdots$
$k=5$のとき
$\frac{1}{1},\frac{2}{1},\frac{4}{2},\frac{8}{4},\frac{16}{8},\frac{31}{16},\frac{61}{31},\cdots\to1.9659\cdots$
  $\vdots$
$k=15$のとき
$\frac{1}{1},\frac{2}{1},\frac{4}{2},\frac{8}{4},\frac{16}{8},\frac{32}{16},\frac{64}{32},\cdots\to1.9999\cdots$

隣接する項の比が一定な数列といえば、等比数列が浮かびます。
先日、$k$-ナッチ数の一般項を、次のように等比数列を四捨五入した形で表現することを証明できました!

$k=2$のとき
$\left\{ \left\lfloor\frac{(1.6180\cdots)^0}{2.2360\cdots}\right\rceil, \left\lfloor\frac{(1.6180\cdots)^1}{2.2360\cdots}\right\rceil, \left\lfloor\frac{(1.6180\cdots)^2}{2.2360\cdots}\right\rceil, \left\lfloor\frac{(1.6180\cdots)^3}{2.2360\cdots}\right\rceil,\cdots \right\}$
$=\{0,1,1,2,3,5,8,13,21,\cdots\}$

$k=3$のとき
$\left\{ \left\lfloor\frac{(1.8392\cdots)^0}{5.4703\cdots}\right\rceil, \left\lfloor\frac{(1.8392\cdots)^1}{5.4703\cdots}\right\rceil, \left\lfloor\frac{(1.8392\cdots)^2}{5.4703\cdots}\right\rceil, \left\lfloor\frac{(1.8392\cdots)^3}{5.4703\cdots}\right\rceil,\cdots \right\}$
$=\{0,0,1,1,2,4,7,13,24,\cdots\}$

$k=4$のとき
$\left\{ \left\lfloor\frac{(1.9275\cdots)^0}{12.6457\cdots}\right\rceil, \left\lfloor\frac{(1.9275\cdots)^1}{12.6457\cdots}\right\rceil, \left\lfloor\frac{(1.9275\cdots)^2}{12.6457\cdots}\right\rceil, \left\lfloor\frac{(1.9275\cdots)^3}{12.6457\cdots}\right\rceil,\cdots \right\}$
$=\{0,0,0,1,1,2,4,8,15,29,\cdots\}$

ここで $\left\lfloor x\right\rceil$は四捨五入を表す関数です。すなわち
    $\left\lfloor x\right\rceil=\left\lfloor x+\frac{1}{2}\right\rfloor$

正確に書くと次のようになります。

k-ナッチ数の一般項の四捨五入表現

k-ナッチ数列の一般項の四捨五入表現

k-ナッチ数列の第$n$項を $a_k(n)$ と表記する。このとき、$a_k(n)$ は次の式で求めることができる。

    ${\displaystyle a_k(n)=\left\lfloor \frac{A_k^n}{B_k} \right\rceil }$
ただし、$A_k,B_k$は次の定数である。
    $f_k(x)=x^k-x^{k-1}-x^{k-2}-\cdots-x^2-x-1$
として、

    ${\displaystyle A_k\cdots\cdots f_k(x)=0\text{ の正の実数解} }$

    ${\displaystyle \begin{align} B_k &=f_k'(A_k) \end{align} }$

証明

証明は Mathlog に投稿したこちらの記事をご覧ください。
・  フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想
・  フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想(その2)
・  フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想(その3)
・  子葉 さんの記事「 k-ナッチ数列の四捨五入表示についての考察(ほぼ証明)
・  フィボナッチ数列を拡張したk-ナッチ数列の一般項についての予想(その4・証明完成)

四捨五入表現でできること

実数だけで計算ができる

 実は、四捨五入を使わない表現もあるのですが、四捨五入を使わない表現だと、$3$-ナッチ(トリボナッチ)以上の$k$-ナッチ数は複素数をたくさん使わないと計算できません。例えばトリボナッチ数だとこんな感じ

トリボナッチ数の一般項(ビネの公式に類似した表現)

    ${\displaystyle T_{n}={\frac {\alpha ^{n}}{(\alpha -\beta )(\alpha -\gamma )}}+{\frac {\beta ^{n}}{(\beta -\gamma )(\beta -\alpha )}}+{\frac {\gamma ^{n}}{(\gamma -\alpha )(\gamma -\beta )}}}$

ただし、$α, β, γ$ は三次方程式 $x^3 − x^2 − x − 1 = 0$ の3解
    ${\displaystyle {\begin{aligned}\alpha &={\frac {1}{3}}\left(1+{\sqrt[{3}]{19-3{\sqrt {33}}}}+{\sqrt[{3}]{19+3{\sqrt {33}}}}\right)\\\beta &={\frac {1}{3}}\left(1+\omega {\sqrt[{3}]{19-3{\sqrt {33}}}}+{{\omega^2 }}{\sqrt[{3}]{19+3{\sqrt {33}}}}\right)\\\gamma &={\frac {1}{3}}\left(1+{ {\omega^2 }}{\sqrt[{3}]{19-3{\sqrt {33}}}}+\omega {\sqrt[{3}]{19+3{\sqrt {33}}}}\right)\end{aligned}}}$
で、
    ${\displaystyle \omega ={\frac {-1+{\sqrt {3}}i}{2}}}$
です。

既に計算するのは大変そうです。$k$ が大きくなればなるほどたくさんの複素数を計算しなければなりません。しかし、四捨五入を使った表現では、実数だけで計算を完結させることができます!

大きなnに対してもおおよその数がすぐに計算できる

対数を使えば、大きな $n$ に対しても第 $n$ 項をあっというまに計算できます。
たとえばこんな風に

フィボナッチ数列の第$100000000000000$項の概数を計算する。
    ${\displaystyle \begin{align} &\log_{10}a_2(100000000000000)\\ &\simeq\log_{10} \frac{\varphi^{100000000000000}}{\sqrt{5}}\\ &=100000000000000\log_{10}\varphi-\frac{1}{2}\log_{10}5\\ &=20898764024997.52389\cdots \end{align} }$
ここで $10^{0.52389}=3.3411\cdots$ なので
    $\therefore a_2(100000000000000)\simeq 3.341\,\times\,10^{20898764024997} $

この値を漸化式で計算するととんでもない時間がかかることでしょう。この方法を使えば一瞬です。計算精度をあげれば正確な数値も高速に計算できます。

検算の動画: Twitter @apu_yokai
Desmosへのリンク: k-ナッチ数列の研究

今後の展開

この四捨五入表現を応用して、部分和の式も四捨五入表現できることを見つけました。

k-ナッチ数列の部分和からなる数列の一般項の四捨五入表現

    ${\displaystyle \begin{align} S_k(n) &= \left\lfloor \frac{A_k^{n-k+2}}{(k+1)A_k-2k} -\frac{1}{k-1} \right\rceil \end{align} }$

ただし、$A_k$は ${\displaystyle x^k-x^{k-1}-x^{k-2}-\cdots-x^2-x-1=0\text{ の正の実数解} }$

今は、フィボナッチ数に対するリュカ数のように、$k$-ナッチ数に対する$k$-リュカ数のような一般化について考えています。
何か見つけたらまた記事を書きますね。

さいごに

今回の$k$-ナッチ数の一般項の四捨五入による表現は、MathlogやTwitterでいろいろな人から情報を寄せていただくことで証明できました。この場を借りて改めてお礼します。ありがとうございました。

今回の証明についての記事はMathlogにあります。また、Twitterでいろいろ数学ネタなどツイートしています。よかったらみていってね!
Mathlog:apu_yokai( https://mathlog.info/users/452/articles )
Twitter ID: @apu_yokai

ご視聴ありがとうございました。

投稿日:2021124

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