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凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明 ⑤

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前回まで:
(1) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明①
(2) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明②
(3) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明③
(4) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明④

この記事は「R上の凸関数はほとんど至るところ2回微分可能である」ことを示すためのものである。今回は前回までの結果を用いて、Lipschitz連続な関数がa.e.で微分可能であることを証明する。

目次

1.定義
2.準備
3.証明

定義

μを1次元Lebesgue測度、LRのLebesgue可測な部分集合全体とする。今回は次の定理を示すことを目標とする。

関数f:RRが局所Lipschitz連続ならfμ-a.e.で微分可能である。さらに、
f(x)=lim suph+0f(x+h)f(x)h
によってf:RR(これは局所可積分)を定めれば
f(x)f(0)=0xf(y)dy(xR)
となる。

定理1において
f(x)={limh0f(x+h)f(x)h(fx)0()
によってf:RRを定義しても良い。

ただしLipschitz連続性の定義は次である。

IRの開区間とする。関数f:IRがLipschitz連続であるとは、|f(x)f(y)|L|xy|(x,yI)を満たすようなL>0が存在することをいう。また、fが局所Lipschitz連続であるとは、任意のxIに対してその近傍JIが存在してf|JがLipschitz連続となることをいう。

準備

次の命題から定理1が直ちに導かれる。

関数f:RRがLipschitz連続ならfμ-a.e.で微分可能である。さらに、
f(x)=lim suph+0f(x+h)f(x)h
によってf:RR(これは局所可積分)を定めれば
f(x)f(0)=0xf(y)dy(xR)
となる。

命題2定理1

f:RRを局所Lipschitz連続であるとする。このとき任意にnNをとりfn(x)={f(n)(xn)f(x)(n<x<n)f(n)(xn)
と定めれば、fnはLipschitz連続であるから命題2よりfnはa.e.で微分可能である。(n,n)上でf=fnであるからf(n,n)上a.e.で微分可能である。nNは任意だからfR上a.e.で微分可能である。また、任意のxRに対して|x|<nとなるnNが存在して、
f(x)f(0)=fn(x)fn(0)=0xfn(y)dy(2)=0xf(y)dy((n,n)f=fn)
となるので、定理1の後半の主張も示せた。

命題2の証明に次の定理を用いる。

測度の正則性

μは正則である。すなわち、任意のALに対して
μ(A)=sup{μ(K)|K,KA}=inf{μ(G)|G,AG}
となる。

(R,L,μ)の局所可積分関数fを任意にとる。そこで
F(x):=0xf(y)dy(xR)
と定めると、
limh0F(x+h)F(x)h=f(x)
μ-a.e.xRで成り立つ。

定理3の証明は Lebesgue測度の構成と正則性定理 を参照。定理4の証明は 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明④ を参照。

最後に命題2の証明のための記号の準備をする。以下、Lipschitz連続な関数f:RRを任意に取っておき、|f(x)f(y)|L|xy|(x,yR)となるL>0を取っておく。任意の関数g:RRに対して、関数g+,g+:RR¯

  • g+(x)=lim suph+0g(x+h)g(x)h(xR)
  • g+(x)=lim infh+0g(x+h)g(x)h(xR)

と定める。gが可測であればg+,g+も可測である。特にf+,f+は有界であるから局所可積分である。

証明

命題2の証明

φ1(x)=f(0)+0xf+(y)dy(xR)と定める。以下、任意にa>0をとりφ1(a)f(a)となることを示す。そのためには任意にε(0,L)をとり、φ1(a)(3L+a)εf(a)となることを示せば良い。

  • 補助的な関数Fを構成。
    定理4よりxRN1limh0φ1(x+h)φ1(x)h=f+(x)
    となる零集合N1が存在する。定理3よりN1G,μ(G)<εとなる開集合Gが存在する。この Gを用いて関数F:[0,a]R
    F(x)=f(0)+[0,x]G(f+(y)ε+2L)dy2Lμ([0,x])(x[0,a])
    によって定める。
  • F(a)≤f(a)を示す。
    E={x[0,a]F(x)f(x)}と定める。b=supEとおくと、F(0)=f(0)より0bである。また、f,Fは連続であるからbEである。よってF(a)f(a)を示すにはb=aであることを示せば良い。そのためにb<aであると仮定して矛盾を導く。
    1. b[0,a]Gの場合、F+(b)=2Lである。
    2. b[0,a]Gの場合、
      F+(b)=lim suph+0F(b+h)F(b)h=lim suph+01h[[b,b+h]G(f+(y)ε+2L)dy2Lμ([b,b+h])]lim suph+01h[[b,b+h](f+(y)ε+2L)dy2Lμ([b,b+h])](f+ε+2L>LL+2L=0)=lim suph+01h[b,b+h](f+(y)ε)dy=lim suph+0φ1(b+h)φ1(b)hε=f+(b)ε(b[0,a]GRN1)である。

よっていずれにせよF+(b)<f+(b)であるから、F(b+h)F(b)f(b+h)f(b)となるh>0が存在する。F(b)f(b)であるからF(b+h)f(b+h)である。よってb+hEより、b+hsupE=bとなるがこれは矛盾。以上よりF(a)f(a)である。

  • 式(1)を示す。
    φ1(a)f(a)φ1(a)F(a)(F(a)f(a))=[0,a]Gf+(y)dy+εμ([0,a]G)2Lμ([0,a]G)+2Lμ([0,a])[0,a]GLdy+εμ([0,a])+2Lμ([0,a]G)Lε+aε+2Lε=(3L+a)εよって式(1)が示された。

以上より、φ1(a)f(a)である。ここで
φ2(x)=f(0)+0xf+(y)dy(xR)とすれば、同様の議論により、f(a)φ2(a)も証明できる。f+f+であるから、φ2(a)φ1(a)もわかる。よってf(a)=φ1(a)=φ2(a)である。a<0のときも同様にして、f(a)=φ1(a)=φ2(a)である。よって
f(x)=φ1(x)=f(0)+0xf+(y)dy(xR)である。これで証明終わり。

今回は終わり。
次回は単調関数がa.e.で微分可能であることを示す。
次回: 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明⑥

投稿日:2023410
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