1

凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明 ⑤

29
0
$$$$

前回まで:
(1) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明①
(2) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明②
(3) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明③
(4) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明④

この記事は「$\mathbb{R}$上の凸関数はほとんど至るところ2回微分可能である」ことを示すためのものである。今回は前回までの結果を用いて、Lipschitz連続な関数がa.e.で微分可能であることを証明する。

目次

1.定義
2.準備
3.証明

定義

$\mu$を1次元Lebesgue測度、$\mathscr{L}$$\mathbb{R}$のLebesgue可測な部分集合全体とする。今回は次の定理を示すことを目標とする。

関数$f:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$が局所Lipschitz連続なら$f$$\mu$-a.e.で微分可能である。さらに、
$$ f'(x)= \limsup_{h\to+0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h} $$
によって$f':\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$(これは局所可積分)を定めれば
$$f(x)-f(0)=\int_0^xf'(y)dy\quad(x\in\mathbb{R})$$
となる。

定理1において
$$f'(x)= \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \lim_{h\to 0}\cfrac{f(x+h)-f(x)}{h}\quad(fはxで微分可能) \\ 0\quad(その他) \end{array} \right. \end{eqnarray}$$
によって$f':\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$を定義しても良い。

ただしLipschitz連続性の定義は次である。

$I$$\mathbb{R}$の開区間とする。関数$f:I\rightarrow\mathbb{R}$がLipschitz連続であるとは、$$|f(x)-f(y)|\leq L|x-y|\quad(x,y\in I)$$を満たすような$L>0$が存在することをいう。また、$f$が局所Lipschitz連続であるとは、任意の$x\in I$に対してその近傍$J\subset I$が存在して$f|_{J}$がLipschitz連続となることをいう。

準備

次の命題から定理1が直ちに導かれる。

関数$f:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$がLipschitz連続なら$f$$\mu$-a.e.で微分可能である。さらに、
$$ f'(x)= \limsup_{h\to+0}\frac{f(x+h)-f(x)}{h} $$
によって$f':\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$(これは局所可積分)を定めれば
$$f(x)-f(0)=\int_0^xf'(y)dy\quad(x\in\mathbb{R})$$
となる。

命題2$\Rightarrow$定理1

$f:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$を局所Lipschitz連続であるとする。このとき任意に$n\in\mathbb{N}$をとり$$f_n(x)= \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} f(-n)\quad(x\leq-n)\\ f(x)\quad(-n< x< n) \\ f(n)\quad(x\geq n) \end{array} \right. \end{eqnarray}$$
と定めれば、$f_n$はLipschitz連続であるから命題2より$f_n$はa.e.で微分可能である。$(-n,n)$上で$f=f_n$であるから$f$$(-n,n)$上a.e.で微分可能である。$n\in\mathbb{N}$は任意だから$f$$\mathbb{R}$上a.e.で微分可能である。また、任意の$x\in\mathbb{R}$に対して$|x|< n$となる$n\in\mathbb{N}$が存在して、
$$f(x)-f(0)$$$$ =f_n(x)-f_n(0)$$$$ =\int_{0}^xf_n'(y)dy\quad(\because命題2後半)$$$$ =\int_0^xf'(y)dy\quad(\because (-n,n)上でf'=f_n')$$
となるので、定理1の後半の主張も示せた。

命題2の証明に次の定理を用いる。

測度の正則性

$\mu$は正則である。すなわち、任意の$A\in\mathscr{L}$に対して
$$\mu(A)=\sup\{\mu(K)|Kはコンパクト,K\subset A\}=\inf\{\mu(G)|Gは開集合,A\subset G\}$$
となる。

$(\mathbb{R},\mathscr{L},\mu)$の局所可積分関数$f$を任意にとる。そこで
$$F(x):=\int_0^xf(y)dy(x\in\mathbb{R})$$
と定めると、
$$\lim_{h\to 0}\cfrac{F(x+h)-F(x)}{h}=f(x)$$
$\mu$-a.e.$x\in\mathbb{R}$で成り立つ。

定理3の証明は Lebesgue測度の構成と正則性定理 を参照。定理4の証明は 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明④ を参照。

最後に命題2の証明のための記号の準備をする。以下、Lipschitz連続な関数$f:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$を任意に取っておき、$$|f(x)-f(y)|\leq L|x-y|\quad(x,y\in\mathbb{R})$$となるL>0を取っておく。任意の関数$g:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$に対して、関数$\overline{g_+'},\underline{g_+'}:\mathbb{R}\rightarrow\bar{\mathbb{R}}$

  • $\displaystyle\overline{g_+'}(x)=\limsup_{h\to+0}\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\quad(x\in\mathbb{R})$
  • $\displaystyle\underline{g_+'}(x)=\liminf_{h\to+0}\frac{g(x+h)-g(x)}{h}\quad(x\in\mathbb{R})$

と定める。$g$が可測であれば$\overline{g_+'},\underline{g_+'}$も可測である。特に$\overline{f_+'},\underline{f_+'}$は有界であるから局所可積分である。

証明

命題2の証明

$$\varphi_1(x)=f(0)+\int_0^x\overline{f_+'}(y)dy\quad(x\in\mathbb{R})$$と定める。以下、任意に$a>0$をとり$\varphi_1(a)\leq f(a)$となることを示す。そのためには任意に$\varepsilon\in(0,L)$をとり、$\varphi_1(a)-(3L+a)\varepsilon\leq f(a)\tag{1}$となることを示せば良い。

  • $\textbf{補助的な関数Fを構成。}$
    定理4より$$x\in\mathbb{R}\setminus N_1\Longrightarrow\lim_{h\to 0}\frac{\varphi_1(x+h)-\varphi_1(x)}{h}=\overline{f_+'}(x)$$
    となる零集合$N_1$が存在する。定理3より$N_1\subset G,\mu(G)<\varepsilon$となる開集合$G$が存在する。この $G$を用いて関数$F:[0,a]\rightarrow\mathbb{R}$
    $$F(x)=f(0)+\int_{[0,x]\setminus G}\left(\overline{f_+'}(y)-\varepsilon+2L\right)dy-2L\mu([0,x])\quad(x\in[0,a])$$
    によって定める。
  • $\textbf{F(a)≤f(a)を示す。}$
    $$E=\{x\in[0,a]\mid F(x)\leq f(x)\}$$と定める。$b=\sup E$とおくと、$F(0)=f(0)$より$0\leq b$である。また、$f,F$は連続であるから$b\in E$である。よって$F(a)\leq f(a)$を示すには$b=a$であることを示せば良い。そのために$b< a$であると仮定して矛盾を導く。
    1. $b\in [0,a]\cap G$の場合、$\overline{F_+'}(b)=-2L$である。
    2. $b\in [0,a]\setminus G$の場合、
      $$\overline{F_+'}(b)=\limsup_{h\to +0}\frac{F(b+h)-F(b)}{h}$$$$=\limsup_{h\to +0}\frac{1}{h}\left[\int_{[b,b+h]\setminus G}\left(\overline{f_+'}(y)-\varepsilon+2L\right)dy-2L\mu([b,b+h])\right]$$$$\leq\limsup_{h\to +0}\frac{1}{h}\left[\int_{[b,b+h]}\left(\overline{f_+'}(y)-\varepsilon+2L\right)dy-2L\mu([b,b+h])\right](\because \overline{f_+'}-\varepsilon+2L>-L-L+2L=0)$$$$= \limsup_{h\to +0}\frac{1}{h}\int_{[b,b+h]}\left(\overline{f_+'}(y)-\varepsilon\right)dy$$$$=\limsup_{h\to +0}\frac{\varphi_1(b+h)-\varphi_1(b)}{h}-\varepsilon$$$$=\overline{f_+'}(b)-\varepsilon\quad(\because b\in[0,a]\setminus G\subset\mathbb{R}\setminus N_1)$$である。

よっていずれにせよ$\overline{F_+'}(b)<\overline{f_+'}(b)$であるから、$$F(b+h)-F(b)\leq f(b+h)-f(b)$$となる$h>0$が存在する。$F(b)\leq f(b)$であるから$F(b+h)\leq f(b+h)$である。よって$b+h\in E$より、$b+h\leq \sup E=b$となるがこれは矛盾。以上より$F(a)\leq f(a)$である。

  • $\textbf{式(1)を示す。}$
    $$\varphi_1(a)-f(a)$$$$\leq \varphi_1(a)-F(a)\quad(\because F(a)\leq f(a))$$$$ =\int_{[0,a]\cap G}\overline{f_+'}(y)dy+\varepsilon\mu([0,a]\setminus G)-2L\mu([0,a]\setminus G)+2L\mu([0,a])$$$$ \leq\int_{[0,a]\cap G}Ldy+\varepsilon\mu([0,a])+2L\mu([0,a]\cap G)$$$$\leq L\varepsilon+a\varepsilon+2L\varepsilon$$$$=(3L+a)\varepsilon$$よって式(1)が示された。

以上より、$\varphi_1(a)\leq f(a)$である。ここで
$$\varphi_2(x)=f(0)+\int_0^x\underline{f_+'}(y)dy\quad(x\in\mathbb{R})$$とすれば、同様の議論により、$f(a)\leq\varphi_2(a)$も証明できる。$\overline{f_+'}\geq\underline{f_+'}$であるから、$\varphi_2(a)\leq\varphi_1(a)$もわかる。よって$$f(a)=\varphi_1(a)=\varphi_2(a)$$である。$a<0$のときも同様にして、$$f(a)=\varphi_1(a)=\varphi_2(a)$$である。よって
$$f(x)=\varphi_1(x)=f(0)+\int_0^x\overline{f_+'}(y)dy\quad(x\in\mathbb{R})$$である。これで証明終わり。

今回は終わり。
次回は単調関数がa.e.で微分可能であることを示す。
次回: 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明⑥

投稿日:2023410

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

On
10
1805
指摘・コメントなどあればよろしくお願いします

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中