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凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明⑦(完結)

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前回まで:
(1) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明①
(2) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明②
(3) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明③
(4) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明④
(5) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明⑤
(6) 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明⑥

この記事は「R上の凸関数はほとんど至るところ2回微分可能である」ことを示すためのものである。今回は前回までの結果を用いて、凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明をする。

目次

1.定義
2.準備
3.証明

定義

μを1次元Lebesgue測度、LRのLebesgue可測な部分集合全体とする。

凸関数

関数f:RRが凸関数であるとは、任意のx,yRと任意のλ(0,1)に対して、
f(λx+(1λ)y)λf(x)+(1λ)f(y)
が成り立つことをいう。

関数の2回微分可能性

関数f:RRaRで2回微分可能であるとは、
limh0f(a+h)f(a)bhch2h2=0となるb,cRが存在することをいう。

今回は次の定理を示すことを目標とする。

凸関数の2回微分可能性

凸関数f:RRはa.e.で2回微分可能である。

準備

凸関数の基本的な性質と定理1の証明に必要な命題などを確認する。

凸関数f:RRについて、任意のxRに対して、
fx(y):=f(x)f(y)xy(yR{x})
と定める。このときfx:R{x}Rは単調増加である。

x1<x2<x3となる任意のx1,x2,x3Rに対して
(1)f(x2)f(x1)x2x1f(x3)f(x1)x3x1f(x3)f(x2)x3x2
が成り立つことを示せば良い。x2=λx1+(1λ)x3を満たすλ(0,1)をとる。fは凸関数であるから、

f(x2)λf(x1)+(1λ)f(x3)
である。これを2通りで以下のように変形する。

  • f(x2)f(x1)(1λ)(f(x3)f(x1))
  • f(x3)f(x2)λ(f(x3)f(x1))

1つ目の不等式の両辺をx2x1=(1λ)(x3x1)(>0)で、2つ目の不等式の両辺をx3x2=λ(x3x1)(>0)でそれぞれ割ると、式(1)を得る。

凸関数f:RRは局所Lipschitz連続である。すなわち、任意のM>0に対してLM>0が存在して、
|f(x)f(y)|LM|xy|(x,y(M,M))
となる。

任意のM>0に対してLM=max{|fM(M1)|,|fM(M+1)|}と定める。x,y(M,M)となる任意のx,yRに対して、命題2より
fM(M+1)fM(x)=fx(M)fx(y)=fy(x)fy(M)=fM(y)fM(M+1)
である。よって|fx(y)|LMである。

関数f:RRが局所Lipschitz連続ならfμ-a.e.で微分可能である。さらに、
f(x)=lim suph+0f(x+h)f(x)h
によってf:RR(これは局所可積分)を定めれば
f(x)f(0)=0xf(y)dy(xR)
となる。

証明は 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明⑤ を参照。

単調増加関数f:RRμ-a.e.で微分可能である。

証明は 凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることの証明⑥ を参照。

証明

定理1の証明

f:RRを凸関数とする。このとき命題3と定理4より
f(x)=lim suph+0fx(x+h)=lim suph+0f(x+h)f(x)h
によってf:RRを定めれば
f(x)f(0)=0xf(y)dy(xR)
となり、fはa.e.で微分可能となる。このfは単調増加である。実際、x<yとなるx,yRをとれば、任意のh>0に対して、
fx(x+h)=fx+h(x)fx+h(y)=fy(x+h)fy(y+h)
が成り立つのでこれは正しい。よって定理5よりfもa.e.で微分可能である。f,fの少なくとも一方が微分可能でないような点全体の集合をNと表す。任意にxRNをとり、
f(x)=limh0f(x+h)f(x)hと置くことにする。このとき、任意のε>0に対して、
|h|<δ|f(x+h)f(x)hf(x)|<ε
となるδ>0が存在する。すると、|h|<δならば、
|f(x+h)f(x)f(x)hf(x)2h2h2|=1h2|xx+hf(y)dyf(x)hf(x)2h2|=1h2|xx+h(f(y)f(x)f(x)(yx))dy|1h2xx+h|f(y)f(x)f(x)(yx)|dy1h2xx+hε(yx)dy(y(x,x+h)|yx|h<δ)=ε2
となるので、fxで2回微分可能である。Nは零集合だからfはa.e.で2回微分可能である。

証明終わり。

以上により実数を変数にもつ凸関数がほとんど至るところ2回微分可能であることが証明された。この事実が実際に役に立つことは少ないかもしれないが、証明に使われた手法や事実(Lebesgueの微分定理や、Lipschitz連続な関数や単調関数がa.e.で微分可能であること)は非常に有用であるように思われる。

投稿日:2023411
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