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大学数学基礎解説
文献あり

完全写像について

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$$\newcommand{cl}[1]{\mathrm{Cl}({#1})} \newcommand{diam}[1]{\mathrm{diam}\left({#1}\right)} \newcommand{dist}[2]{\mathrm{dist}\left({#1},{#2}\right)} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{incl}[2]{\mathrm{id}_{#1}^{#2}} \newcommand{supp}[1]{\mathrm{supp}(#1)} \newcommand{transpose}[0]{\mathsf{T}} $$

いくつかの記事に散在していたもの(に多少手を加えたもの)を一箇所にまとめました.

準備

射影公式

$X,Y$を集合とし$f \colon X \to Y$を写像とする.このとき任意の$A \subset X,\,B \subset Y$に対して
$$ f(f^{-1}(B) \cap A) = B \cap f(A)$$
が成り立つ.

  • $y \in f(f^{-1}(B) \cap A)$とする.このとき$x \in f^{-1}(B) \cap A$であって$f(x) = y$となるものが存在する.$x \in f^{-1}(B)$より$y = f(x) \in B$であり,$x \in A$より$y = f(x) \in f(A)$が成り立つ.よって$y \in B \cap f(A)$を得る.
  • $y \in B \cap f(A)$とする.このとき$x \in A$であって$f(x) = y$となるものが存在する.$f(x) \in B$より$x \in f^{-1}(B)$となるので,$x \in A$と合わせて$y = f(x) \in f(f^{-1}(B) \cap A)$を得る.
余順像

$X,Y$を集合とし$f \colon X \to Y$を写像とする.このとき$A \subset X$の余順像
$$ f_{!}(A) := Y \smallsetminus f(X \smallsetminus A) \subset Y$$
$B \subset Y$について
$$ B \subset f_{!}(A) \iff f^{-1}(B) \subset A$$
が成り立つ.とくに
$$ f_{!}(A) = \{y \in Y \mid f^{-1}(y) \subset A\}$$
が成り立つ.

余順像については こちらの記事 に詳しい.

射影公式 より
\begin{align} B \subset f_{!}(A) &\iff B \cap f(X \smallsetminus A) = \varnothing\\ &\iff f^{-1}(B) \cap (X \smallsetminus A) = \varnothing\\ &\iff f^{-1}(B) \subset A \end{align}
が成り立つ.

Generalized Tube Lemma

$X,Y$を位相空間,$K_{X} \subset X,\,K_{Y} \subset Y$をコンパクト集合とする.このとき$K_{X} \times K_{Y}$の任意の開近傍$W \subset X \times Y$に対して,$K_{X}$の開近傍$U \subset X$$K_{Y}$の開近傍$V \subset Y$であって$U \times V \subset W$となるものが存在する.とくに
$$ \{x \in X \mid \{x\} \times K_{Y} \subset W\} \subset X$$
は開集合である.

  • 任意の$(x,y) \in K_{X} \times K_{Y}$に対して,$U(x,y) \in \tau(x,X),\,V(x,y) \in \tau(y,Y)$であって$U(x,y) \times V(x,y) \subset W$となるものが存在する.
  • $x \in X$に対して,$(V(x,y))_{y \in K_{Y}}$はコンパクト集合$K_{Y} \subset Y$の開被覆であるから,$y_{1},\ldots,y_{m} \in K_{Y}$であって
    $$ K_{Y} \subset V(x,y_{1}) \cup \cdots \cup V(x,y_{m})$$
    となるものが存在する.
  • そこで
    \begin{align} U(x) &= U(x,y_{1}) \cap \cdots \cap U(x,y_{m}) \in \tau(x,X),\\ V(x) &= V(x,y_{1}) \cup \cdots \cup V(x,y_{m}) \in \tau(K_{Y},Y) \end{align}
    とおく.
    • $U(x) \times V(x) \subset W$となることに注意する.
  • このとき,$(U(x))_{x \in K_{X}}$はコンパクト集合$K_{X} \subset X$の開被覆であるから,$x_{1},\ldots,x_{n} \in K_{X}$であって
    $$ K_{X} \subset U(x_{1}) \cup \cdots \cup U(x_{n})$$
    となるものが存在する.
  • そこで
    \begin{align} U &= U(x_{1}) \cup \cdots \cup U(x_{n}) \in \tau(K_{X},X),\\ V &= V(x_{1}) \cap \cdots \cap V(x_{n}) \in \tau(K_{Y},Y) \end{align}
    とおくと,
    $$ U \times V \subset W$$
    が成り立つ.

閉写像

$X,Y$を位相空間とし$f \colon X \to Y$を写像とする.任意の閉集合$C \subset X$に対して$f(C) \subset Y$が閉集合であるとき,$f$閉写像(closed map)という.

特徴づけ

閉包による

次は同値である:

  1. $f \colon X \to Y$は閉写像である;
  2. 任意の$A \subset X$に対して,
    $$ \cl{f(A)} \subset f(\cl{A})$$
    が成り立つ.

(i)$\implies$(ii)

$f(A) \subset f(\cl{A})$と閉包の定義(或いは特徴づけ)より
$$ \cl{f(A)} \subset f(\cl{A})$$
が成り立つ.

(ii)$\implies$(i)

$A \subset X$が閉集合ならば
$$ f(A) \subset \cl{f(A)} \subset f(\cl{A}) = f(A)$$
が成り立つ.

余順像による

次は同値である:

  1. $f \colon X \to Y$は閉写像である;
  2. 任意の開集合$U \subset X$に対して,$f_{!}(U) \subset Y$は開集合である.

定義より明らか.

``Tube Lemma'' による

次は同値である:

  1. $f \colon X \to Y$は閉写像である;
  2. 任意の$B \subset Y$$U \in \tau(f^{-1}(B),X)$に対して,$V \in \tau(B,Y)$であって$f^{-1}(V) \subset U$となるものが存在する;
  3. 任意の$y \in Y$$U \in \tau(f^{-1}(y),X)$に対して,$V \in \tau(y,Y)$であって$f^{-1}(V) \subset U$となるものが存在する.

(i)$\implies$(ii)

$V = f_{!}(U) \in \tau(Y)$とおくと,

  • $f^{-1}(B) \subset U$より$B \subset f_{!}(U) = V$が成り立つ.
  • $V \subset f_{!}(U)$より$f^{-1}(V) \subset U$が成り立つ.

(ii)$\implies$(iii)

明らか.

(iii)$\implies$(i)

$U \in \tau(X)$とする.このとき$f_{!}(U) \in \tau(Y)$となることを示せばよい.そこで$y \in f_{!}(U)$とする.このとき$f^{-1}(y) \subset U$となるので,仮定より$V \in \tau(y,Y)$であって$f^{-1}(V) \subset U$となるものが存在する.よって
$$ y \in V \subset f_{!}(U)$$
が成り立つ.

命題6の

$X$を位相空間,$K$をコンパクト空間とする.このとき$X$への射影$p = p_{X} \colon X \times K \to X$は閉写像である.

$x \in X,\,U \in \tau(p^{-1}(x),X \times K)$とする.このとき
$$ \{x\} \times K = p^{-1}(x) \subset U$$
$K$のコンパクト性より,$V \in \tau(x,X)$であって
$$ p^{-1}(V) = V \times K \subset U$$
となるものが存在する( 補題3 ).よって$p$は閉写像である.

合成・制限・積

閉写像の合成

$X,Y,Z$を位相空間,$f \colon X \to Y,\,g \colon Y \to Z$を写像とする.このとき次が成り立つ:

  1. $f,g$が閉写像ならば,$g \circ f$も閉写像である;
  2. $f$が全射連続写像であって$g \circ f$が閉写像ならば,$g$は閉写像である;
  3. $g$が単射連続写像であって$g \circ f$が閉写像ならば,$f$は閉写像である.
  1. 明らか.
  2. $C_{Y} \subset Y$を閉集合とする.仮定より$f^{-1}(C_{Y}) \subset X$は閉集合であるから,
    $$ g(C_{Y}) = (g \circ f)(f^{-1}(C_{Y})) \subset Z$$
    は閉集合である.
  3. $C_{X} \subset X$を閉集合とする.仮定より$(g \circ f)(C_{X}) \subset Z$は閉集合であるから,
    $$ f(C_{X}) = g^{-1}((g \circ f)(C_{X})) \subset Y$$
    は閉集合である.

$g \circ f = (g|f(X)) \circ f^{f(X)}$$f = \id_{f(X)}^{Y} \circ f^{f(X)}$に注意したい.

閉写像の制限

$f \colon X \to Y$を閉写像とする.このとき次が成り立つ:

  1. 任意の閉集合$C_{X} \subset X$に対して,$f|C_{X} \colon C_{X} \to Y$は閉写像である.
  2. 任意の部分集合$B \subset Y$に対して,$f^{B} \colon f^{-1}(B) \to B$は閉写像である.
  1. $C \subset C_{X}$を閉集合とすると,$C \subset X$は閉集合なので
    $$ (f|C_{X})(C) = f(C) \subset Y$$
    は閉集合である.
  2. $C_{f^{-1}(B)} \subset f^{-1}(B)$を閉集合とすると,閉集合$C_{X} \subset X$であって$C_{f^{-1}(B)} = C_{X} \cap f^{-1}(B)$なるものが存在する.したがって
    $$ f^{B}(C_{f^{-1}(B)}) = f(C_{X} \cap f^{-1}(B)) = f(C_{X}) \cap B \subset B$$
    は閉集合である.

$f \colon X \to Y$を写像とし$(Y_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$$\tau(Y)$と整合的な被覆とする.このとき
$$ \forall \lambda \in \Lambda,\ f^{Y_{\lambda}} \colon f^{-1}(Y_{\lambda}) \to Y_{\lambda}:\text{closed}$$
が成り立つならば,$f$は閉写像である.

$C_{X} \subset X$を閉集合とする.このとき,任意の$\lambda \in \Lambda$に対して
$$ f(C_{X}) \cap Y_{\lambda} = f^{Y_{\lambda}}(C_{X} \cap f^{-1}(Y_{\lambda})) \subset Y_{\lambda}$$
は閉集合なので,$f(C_{X}) \subset Y$は閉集合である.

閉写像の積は閉写像とは限らない.たとえば恒等写像$\id \colon \mathbb{R} \to \mathbb{R}$と定値写像$c \colon \mathbb{R} \to \{\ast\}$は共に閉写像であるが,その積
$$ p_{1} \colon \mathbb{R} \times \mathbb{R} \xrightarrow{\id \times c} \mathbb{R} \times \{\ast\} \approx \mathbb{R}$$
は閉写像ではない.実際,閉集合
$$ \{(x,y) \in \mathbb{R} \times \mathbb{R} \mid xy = 1\} \subset \mathbb{R} \times \mathbb{R}$$
の像$\mathbb{R} \smallsetminus \{0\} \subset \mathbb{R}$は閉集合ではない.

固有写像

$X,Y$を位相空間とし$f \colon X \to Y$を写像とする.任意のコンパクト集合$K_{Y} \subset Y$に対して$f^{-1}(K_{Y}) \subset X$がコンパクトであるとき,$f$固有写像(proper map)という.

固有写像の合成

$X,Y,Z$を位相空間,$f \colon X \to Y,\,g \colon Y \to Z$を写像とする.このとき次が成り立つ:

  1. $f,g$が固有写像ならば,$g \circ f$も固有写像である;
  2. $f$が全射連続写像であって$g \circ f$が固有写像ならば,$g$は固有写像である;
  3. $g$が単射連続写像であって$g \circ f$が固有写像ならば,$f$は固有写像である.
  1. 任意のコンパクト集合$K_{Z} \subset Z$に対して,
    $$ (g \circ f)^{-1}(K_{Z}) = f^{-1}(g^{-1}(K_{Z})) \subset X$$
    はコンパクトである.
  2. 任意のコンパクト集合$K_{Z} \subset Z$に対して,
    $$ g^{-1}(K_{Z}) = f((g \circ f)^{-1}(K_{Z})) \subset Y$$
    はコンパクトである.
  3. 任意のコンパクト集合$K_{Y} \subset Y$に対して,
    $$ f^{-1}(K_{Y}) = (g \circ f)^{-1}(g(K_{Y})) \subset X$$
    はコンパクトである.
固有写像の制限

$f \colon X \to Y$を固有写像とする.このとき次が成り立つ:

  1. 任意の閉集合$C_{X} \subset X$に対して,$f|C_{X} \colon C_{X} \to Y$は固有写像である.
  2. 任意の部分集合$B \subset Y$に対して,$f^{B} \colon f^{-1}(B) \to B$は固有写像である.
  1. 任意のコンパクト集合$K_{Y} \subset Y$に対して,
    $$ (f|C_{X})^{-1}(K_{Y}) = C_{X} \cap f^{-1}(K_{Y}) \subset f^{-1}(K_{Y})$$
    はコンパクト空間$f^{-1}(K_{Y})$の閉集合ゆえコンパクトである.
  2. 任意のコンパクト集合$K_{B} \subset B$に対して,
    $$ (f^{B})^{-1}(K_{B}) = f^{-1}(K_{B}) \subset f^{-1}(B)$$
    はコンパクトである.

$f \colon X \to Y$を連続写像,$(Y_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$$Y$の被覆とする.このとき

  1. $Y$はハウスドルフであり$(Y_{\lambda})_{\lambda}$は開被覆である,または
  2. $(Y_{\lambda})_{\lambda}$は局所有限閉被覆であって,

さらに
$$ \forall \lambda \in \Lambda,\ f^{Y_{\lambda}} \colon f^{-1}(Y_{\lambda}) \to Y_{\lambda}:\text{proper}$$
が成り立つならば,$f$は固有写像である.

  1. $K_{Y} \subset Y$をコンパクト集合とする.$(Y_{\lambda})_{\lambda}$はコンパクト集合$K_{Y}$の開被覆であるから,有限集合$\Lambda_{0} \subset \Lambda$であって
    $$ K_{Y} = \bigcup_{\lambda \in \Lambda_{0}} Y_{\lambda} \cap K_{Y}$$
    となるものが存在する.このとき閉集合$C_{\lambda} \subset K_{Y},\,\lambda \in \Lambda_{0},\,$であって
    $$ C_{\lambda} \subset Y_{\lambda} \cap K_{Y},\ K_{Y} = \bigcup_{\lambda \in \Lambda_{0}} C_{\lambda}$$
    となるものが存在する( 別記事:補題23 ).仮定より各$(f^{Y_{\lambda}})^{-1}(C_{\lambda})$はコンパクトなので,
    $$ f^{-1}(K_{Y}) = \bigcup_{\lambda \in \Lambda_{0}} (f^{Y_{\lambda}})^{-1}(C_{\lambda})$$
    はコンパクト集合の有限合併ゆえコンパクトである.
  2. $K_{Y} \subset Y$をコンパクト集合とする.このとき$(Y_{\lambda} \cap K_{Y})_{\lambda \in \Lambda}$はコンパクト空間$K_{Y}$の局所有限(閉)被覆であるから
    $$ \Lambda_{0} := \{\lambda \in \Lambda \mid Y_{\lambda} \cap K_{Y} \neq \varnothing\} = \Lambda \smallsetminus \{\lambda \in \Lambda \mid Y_{\lambda} \cap K_{Y} = \varnothing\}$$
    は有限集合である.各$\lambda \in \Lambda_{0}$に対して$Y_{\lambda} \cap K_{Y}$はコンパクト空間$K_{Y}$の閉集合ゆえコンパクトであるから,
    $$ f^{-1}(K_{Y}) = \bigcup_{\lambda \in \Lambda_{0}} (f^{Y_{\lambda}})^{-1}(Y_{\lambda} \cap K_{Y})$$
    はコンパクト集合の有限合併ゆえコンパクトである.
固有写像の積

ハウスドルフ空間への連続固有写像族$f_{\bullet} = (f_{\lambda} \colon X_{\lambda} \to Y_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$の積$\prod f_{\bullet} \colon \prod X_{\bullet} \to \prod Y_{\bullet}$は固有写像である.

$K_{Y} \subset \prod Y_{\bullet}$をコンパクト集合とする.各$\lambda \in \Lambda$に対して
$$ K_{\lambda} := p_{Y_{\lambda}}(K_{Y}) \subset Y_{\lambda}$$
はコンパクトなので,仮定より$f_{\lambda}^{-1}(K_{\lambda}) \subset X_{\lambda}$はコンパクトである.したがってTychonoffの定理より$\prod_{\lambda} f_{\lambda}^{-1}(K_{\lambda})$はコンパクトである.一方$K_{Y} \subset \prod Y_{\bullet}$はハウスドルフ空間のコンパクト集合ゆえ閉集合である.よって
$$ \left(\prod f_{\bullet}\right)^{-1}(K_{Y}) \subset \prod_{\lambda \in \Lambda} f_{\lambda}^{-1}(K_{\lambda})$$
はコンパクト空間の閉集合ゆえコンパクトである.

$X,Y$を距離空間,$f \colon X \to Y$を連続写像とする.このとき次は同値である:

  1. $f$は固有写像である;
  2. 任意の遁走点列$(x_{n})_{n} \in X^{\mathbb{N}}$に対して,$(f(x_{n}))_{n} \in Y^{\mathbb{N}}$は遁走点列である.

さらに,$X,Y$が固有距離空間であるとき,次は同値である:

  1. $f$は固有写像である;
  2. $f$は距離的固有写像である.

$X$を位相空間,$Y$をハウスドルフ空間とし,$f \colon X \to Y$を連続写像とする.このとき次は同値である:

  1. $f \colon X \to Y$は固有写像である;
  2. $f^{+} \colon X^{+} \to Y^{+}$は連続写像である.

(用語・記号の定義も含めて)証明は 別記事:命題3,命題6,命題13 を参照されたい.

(2024/02/12:遁走点列とは離散空間$\mathbb{N}$から距離空間への固有写像にほかならないと気づいた.それで命題14の(ii)は,点列連続のアナロジーで点列固有(写像)といえないこともないなと思い(距離的固有は$\varepsilon\text{-}\delta$に対応する.)調べてみたら 論文 (pdf) があった.)

完全写像

$X,Y$を位相空間とし$f \colon X \to Y$を写像とする.$f$が閉写像であって,任意の$y \in Y$に対して$f^{-1}(y) \subset X$がコンパクトであるとき,$f$完全写像(perfect map)という.

  • 単射閉写像は完全写像である.
  • コンパクト空間からハウスドルフ空間への連続写像は完全写像である.
  • コンパクト空間に沿った射影$p_{X} \colon X \times K \to X$は完全写像である( 命題6の系 ).

固有写像と完全写像

$f \colon X \to Y$を写像とする.このとき次は同値である:

  1. $f$は完全写像である;
  2. $f$は閉写像かつ固有写像である.

(i)$\implies$(ii)

$f$が固有写像であることを示せばよい.そこで$K_{Y} \subset Y$をコンパクトとし$(U_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$を部分集合$f^{-1}(K_{Y}) \subset X$の開被覆とする.

  • $y \in K_{Y}$とする.仮定より$f^{-1}(y) \subset X$はコンパクトなので,有限集合$\Lambda(y) \subset \Lambda$であって
    $$ f^{-1}(y) \subset \bigcup_{\lambda \in \Lambda(y)} U_{\lambda}$$
    が成り立つものが存在する.
  • そこで
    $$ U(y) = \bigcup_{\lambda \in \Lambda(y)} U_{\lambda} \in \tau(f^{-1}(y),X)$$
    とおくと,$f$が閉写像であることから
    $$ V(y) := f_{!}(U(y)) \in \tau(y,Y)$$
    であり,さらに
    $$ f^{-1}(V(y)) \subset U(y)$$
    が成り立つ( 補題2 ).

いま$(V(y))_{y \in K_{Y}}$はコンパクト集合$K_{Y} \subset Y$の開被覆なので,有限個の点$y_{1},\ldots,y_{n} \in K_{Y}$であって
$$ K_{Y} \subset V(y_{1}) \cup \cdots \cup V(y_{n})$$
となるものが存在する.そこで
$$ \Lambda_{0} = \bigcup_{i \in [n]} \Lambda(y_{i})$$
とおくと,これは有限集合であり,
$$ f^{-1}(K_{Y}) \subset \bigcup_{i \in [n]} f^{-1}(V(y_{i})) \subset \bigcup_{i \in [n]} U(y_{i}) = \bigcup_{\lambda \in \Lambda_{0}} U_{\lambda}$$
が成り立つ.よって$f^{-1}(K_{Y})$はコンパクトである.

(ii)$\implies$(i)

明らか.

$f \colon X \to Y$を連続固有写像とする.このとき$Y$がコンパクト生成ハウスドルフ空間ならば,$f$は完全写像である.

$f$が閉写像であることを示せばよい.そこで$C_{X} \subset X$を閉集合とする.このとき任意のコンパクト集合$K_{Y} \subset Y$に対して
$$ C_{X} \cap f^{-1}(K_{Y}) \subset f^{-1}(K_{Y})$$
はコンパクト空間$f^{-1}(K_{Y})$の閉集合ゆえコンパクトである.したがって
$$ f(C_{X}) \cap K_{Y} = f(C_{X} \cap f^{-1}(K_{Y})) \subset K_{Y}$$
はハウスドルフ空間$K_{Y}$のコンパクト集合ゆえ閉集合である.よって
$$ f(C_{X}) \subset Y$$
は閉集合である.

合成・制限・積

完全写像の合成

$X,Y,Z$を位相空間,$f \colon X \to Y,\,g \colon Y \to Z$を写像とする.このとき次が成り立つ:

  1. $f,g$が完全写像ならば,$g \circ f$も完全写像である;
  2. $f$が全射連続写像であって$g \circ f$が完全写像ならば,$g$は完全写像である;
  3. $g$が単射連続写像であって$g \circ f$が完全写像ならば,$f$は完全写像である.

命題7 命題10 定理16 よりしたがう.

完全写像の制限

$f \colon X \to Y$を完全写像とする.このとき次が成り立つ:

  1. 任意の閉集合$C_{X} \subset X$に対して,$f|C_{X} \colon C_{X} \to Y$は完全写像である.
  2. 任意の部分集合$B \subset Y$に対して,$f^{B} \colon f^{-1}(B) \to B$は完全写像である.

命題8 命題11 定理16 よりしたがう.

$f \colon X \to Y$を写像とし$(Y_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$$\tau(Y)$と整合的な被覆とする.このとき
$$ \forall \lambda \in \Lambda,\ f^{Y_{\lambda}} \colon f^{-1}(Y_{\lambda}) \to Y_{\lambda}:\text{perfect}$$
が成り立つならば,$f$は完全写像である.

命題9 より$f$は閉写像である.また,任意の$y \in Y$に対して,$y \in Y_{\lambda}$なる$\lambda \in \Lambda$が取れるので,
$$ f^{-1}(y) = (f^{Y_{\lambda}})^{-1}(y) \subset X$$
はコンパクトである.

完全写像の積

完全写像族$f_{\bullet} = (f_{\lambda} \colon X_{\lambda} \to Y_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$の積$f := \prod f_{\bullet} \colon \prod X_{\bullet} \to \prod Y_{\bullet}$は完全写像である.

任意の$y \in \prod Y_{\bullet}$に対して,Tychonoffの定理より
$$ f^{-1}(y) = \prod_{\lambda \in \Lambda} f_{\lambda}^{-1}(y_{\lambda}) \subset \prod X_{\bullet}$$
はコンパクトである.あとは$f$が閉写像であることを示せばよい.

そこで$y \in \prod Y_{\bullet},\,U \in \tau(f^{-1}(y),\prod X_{\bullet})$とする.このとき Wallaceの定理 より,有限集合$\Lambda_{0} \subset \Lambda$と開集合$U_{\lambda} \in \tau(f_{\lambda}^{-1}(y_{\lambda}),X_{\lambda})$であって
$$ \forall \lambda \in \Lambda \smallsetminus \Lambda_{0},\ U_{\lambda} = X_{\lambda};\ f^{-1}(y) \subset \prod_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} \subset U $$
なるものが存在する.いま各$\lambda \in \Lambda_{0}$に対して$f_{\lambda}$は閉写像なので,$V_{\lambda} \in \tau(y_{\lambda},Y_{\lambda})$であって
$$ f_{\lambda}^{-1}(V_{\lambda}) \subset U_{\lambda}$$
となるものが存在する( 命題6 ).残りの$\lambda \in \Lambda \smallsetminus \Lambda_{0}$に対しては$V_{\lambda} = Y_{\lambda}$とおけば
$$ V := \prod_{\lambda \in \Lambda} V_{\lambda} \in \tau\!\left(y,\prod Y_{\bullet}\right)$$
であって,
$$ f^{-1}(V) = \prod_{\lambda \in \Lambda} f_{\lambda}^{-1}(V_{\lambda}) \subset \prod_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} \subset U$$
が成り立つ.よって$f$は閉写像である( 命題6 ).

命題17,命題20の

$f \colon X \to Y,\,g \colon Y \to Z$を連続写像,$Y$をハウスドルフ空間とする.このとき$g \circ f$が完全写像ならば,$f$は完全写像である.

連続写像
\begin{align} \varphi \colon X \to X \times Y&;\ x \mapsto (x,f(x)),\\ \psi \colon Y \to Z \times Y &;\ y \mapsto (g(y),y) \end{align}
を考える.$Y$がハウスドルフであることから,任意の閉集合$C_{X} \subset X$に対して,
$$ \varphi(C_{X}) = \{(x,y) \in X \times Y \mid p_{Y}(x,y) = f \circ p_{X}(x,y)\} \cap (C_{X} \times Y) \subset X \times Y$$
は閉集合である.したがって単射閉写像$\varphi$は完全写像である.いま
$$ \psi \circ f = ((g \circ f) \times \id_{Y}) \circ \varphi \colon X \to Z \times Y;\ x \mapsto (g(f(x)),f(x))$$
(の右辺)は完全写像なので,$\psi$の単射連続性より$f$の完全性がしたがう( 命題17 ).

位相的性質の遺伝

Dugundji dugundji のXI章やEngelking engelking に詳しい.

$f \colon X \to Y$を全射完全写像とする.このとき,$X$がハウスドルフならば,$Y$もハウスドルフである.

仮定より対角集合$\Delta_{X} \subset X \times X$は閉集合である. 命題20 より$f \times f \colon X \times X \to Y \times Y$は完全写像,とくに閉写像であるから,
$$ \Delta_{Y} = (f \times f)(\Delta_{X}) \subset Y \times Y$$
は閉集合である.よって$Y$はハウスドルフである.

$f \colon X \to Y$を連続完全写像とする.このとき,$Y$がパラコンパクトならば,$X$もパラコンパクトである.

  • パラコンパクト空間$Y$の閉集合$f(X) \subset Y$はパラコンパクトなので,$f$は全射であるとしてよい.
  • $(U_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$$X$の開被覆とする.
  • $y \in Y$に対して,$f^{-1}(y) \subset X$はコンパクトなので,有限集合$\Lambda(y) \subset \Lambda$であって
    $$ f^{-1}(y) \subset \bigcup_{\lambda \in \Lambda(y)} U_{\lambda}$$
    となるものが存在する.いま$f$はとくに閉写像なので,開集合$V(y) \in \tau(y,Y)$であって
    $$ f^{-1}(V(y)) \subset \bigcup_{\lambda \in \Lambda(y)} U_{\lambda}$$
    なるものが存在する( 命題6 ).
  • 仮定より,$Y$の開被覆$(V(y))_{y \in Y}$の局所有限な1:1開細分$(W(y))_{y \in Y}$が存在する( 別記事:補遺 ).
  • 以下,$(f^{-1}(W(y)) \cap U_{\lambda})_{(y,\lambda) \in \coprod \Lambda(\bullet)}$$(U_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$の局所有限開細分であることを示す.
    • 細分であることは明らか.
    • $x \in X$とすると,$y \in Y$であって$f(x) \in W(y)$となるものが存在する.このとき
      $$ x \in f^{-1}(W(y)) \subset f^{-1}(V(y)) \subset \bigcup_{\lambda \in \Lambda(y)} U_{\lambda}$$
      より,$\lambda \in \Lambda(y)$であって$x \in U_{\lambda}$なるものが存在する.したがって
      $$ x \in f^{-1}(W(y)) \cap U_{\lambda},\ \lambda \in \Lambda(y)$$
      が成り立つ.よって$(f^{-1}(W(y)) \cap U_{\lambda})_{(y,\lambda) \in \coprod \Lambda(\bullet)}$$X$の開被覆である.
    • $x \in X$とする.いま$(W(y))_{y \in Y}$は局所有限なので,$V(f(x)) \in \tau(f(x),Y)$であって
      $$ Y(f(x)) := \{y \in Y \mid V(f(x)) \cap W(y) \neq \varnothing\} \subset Y:\text{finite}$$
      となるものが存在する.このとき$x \in X$の開近傍$f^{-1}(V(f(x)))$について,
      $$\forall (y,\lambda) \in \coprod \Lambda(\bullet),\ f^{-1}(V(f(x))) \cap (f^{-1}(W(y)) \cap U_{\lambda}) \neq \varnothing \implies V(f(x)) \cap W(y) \neq \varnothing$$
      より
      $$ \left\{(y,\lambda) \in \coprod \Lambda(\bullet)\ \middle|\ f^{-1}(V(f(x))) \cap (f^{-1}(W(y)) \cap U_{\lambda}) \neq \varnothing\right\} \subset \coprod_{y \in Y(f(x))} \Lambda(y):\text{finite}$$
      が成り立つ.よって$(f^{-1}(W(y)) \cap U_{\lambda})_{(y,\lambda) \in \coprod \Lambda(\bullet)}$は局所有限である.

パラコンパクト空間とコンパクト空間の直積はパラコンパクトである.

$X$をハウスドルフ空間,$f \colon X \to Y$を全射連続完全写像とする.このとき次は同値である:

  1. $X$は局所コンパクト(ハウスドルフ)空間である;
  2. $Y$は局所コンパクトハウスドルフ空間である.

(i)$\implies$(ii)

  • 命題21 より$Y$はハウスドルフ空間である.
  • $y \in Y$とする.仮定より,各$x \in f^{-1}(y)$に対して相対コンパクト開近傍$U(x) \subset X$が存在する.$(U(x))_{x \in f^{-1}(y)}$はコンパクト集合$f^{-1}(y) \subset X$の開被覆であるから,有限個の点$x_{1},\ldots,x_{n} \in f^{-1}(y)$であって
    $$ f^{-1}(y) \subset U(x_{1}) \cup \cdots \cup U(x_{n}) =: U$$
    となるものが存在する.いま$f$は閉写像なので$V \in \tau(y,Y)$であって
    $$ f^{-1}(V) \subset U$$
    となるものが存在する( 命題6 ).この$V$について
    $$ \cl{V} \subset \cl{f(U)} \subset f(\cl{U})$$
    が成り立つ( 命題4 ).したがってコンパクト空間$f(\cl{U})$の閉集合$\cl{V}$はコンパクトである.

(ii)$\implies$(i)

$x \in X$とする.仮定より$f(x) \in Y$の相対コンパクト開近傍$V \subset Y$が存在する.このとき$f^{-1}(V) \in \tau(x,X)$であり,
$$ \cl{f^{-1}(V)} \subset f^{-1}(\cl{V})$$
より,コンパクト空間$f^{-1}(\cl{V})$の閉集合$\cl{f^{-1}(V)}$はコンパクトである.

Bourbaki固有写像

$X,Y$を位相空間とし$f \colon X \to Y$を写像とする.任意の位相空間$Z$に対して,
$$ f \times \id_{Z} \colon X \times Z \to Y \times Z$$
が閉写像となるとき,$f$Bourbaki固有写像という(ことにする).

$f \colon X \to Y$を写像とする.このとき次は同値である:

  1. $f$は完全写像である;
  2. $f$はBourbaki固有写像である.

別記事:補遺 を参照されたい.

補遺:Wallaceの定理

補題3 を任意直積に一般化したものがWallaceの定理である:

( Engelking engelking , 3.2.10 )

$(X_{\lambda})_{\lambda \in \Lambda}$を位相空間族とし$K_{\lambda} \subset X_{\lambda},\,\lambda \in \Lambda,\,$をコンパクト集合とする.このとき$K := \prod K_{\bullet}$の任意の開近傍$U \subset \prod X_{\bullet}$に対して,有限集合$\Lambda_{0} \subset \Lambda$と開集合$U_{\lambda} \in \tau(K_{\lambda},X_{\lambda}),\,\lambda \in \Lambda,\,$であって
$$ \forall \lambda \in \Lambda \smallsetminus \Lambda_{0},\ U_{\lambda} = X_{\lambda};\ K \subset \prod_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} \subset U$$
を満たすものが存在する.

補題3 より$\Lambda$が有限集合の場合には定理は成り立つことに注意する.

開基$\beta(\prod X_{\bullet})$の元$V = \prod_{\lambda} V_{\lambda}$に対して
$$ \supp{V} = \{\lambda \in \Lambda \mid V_{\lambda} \neq X_{\lambda}\} \subset \Lambda:\text{finite}$$
とおく.

$x \in K$に対して$V(x) \in \beta(x,\prod X_{\bullet})$であって$V(x) \subset U$なるものが存在する.$(V(x))_{x \in K}$はコンパクト集合$K \subset \prod X_{\bullet}$の開被覆であるから,$x_{1},\ldots,x_{n} \in K$であって
$$ K \subset V(x_{1}) \cup \cdots \cup V(x_{n}) \subset U$$
なるものが存在する.そこで
$$ \Lambda_{0} = \bigcup_{i \in [n]} \supp{V(x_{i})} \subset \Lambda:\text{finite}$$
とおく.このとき
$$ K = \prod_{\lambda \in \Lambda_{0}} K_{\lambda} \times \prod_{\lambda \in \Lambda \smallsetminus \Lambda_{0}} K_{\lambda} \subset \bigcup_{i \in [n]} \prod_{\lambda \in \Lambda_{0}} V(x_{i})_{\lambda} \times \prod_{\lambda \in \Lambda \smallsetminus \Lambda_{0}} X_{\lambda} = \bigcup_{i \in [n]} V(x_{i}) \subset U$$
が成り立つ.冒頭の注意より,各$\lambda \in \Lambda_{0}$に対して,$U_{\lambda} \in \tau(K_{\lambda},X_{\lambda})$であって
$$ \prod_{\lambda \in \Lambda_{0}} K_{\lambda} \subset \prod_{\lambda \in \Lambda_{0}} U_{\lambda} \subset \bigcup_{i \in [n]} \prod_{\lambda \in \Lambda_{0}} V(x_{i})_{\lambda}$$
を満たすものが存在する.よって,$\lambda \in \Lambda \smallsetminus \Lambda_{0}$に対しては$U_{\lambda} = X_{\lambda}$とおけば,
$$ K \subset \prod_{\lambda \in \Lambda} U_{\lambda} \subset \bigcup_{i \in [n]} V(x_{i}) \subset U$$
が成り立つ.

(2024/02/13:「準開基」を「開基」に修正しました.)

参考文献

[1]
N. Bourbaki, General Topology Chapters 1--4
[2]
J. Dugundji, Topology
[3]
R. Engelking, General Topology
投稿日:211
更新日:213
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うすい
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