3
大学数学基礎解説
文献あり

素数pがベルヌーイ数を割り切るなら非正則素数である

408
0
$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{d}[0]{\delta} \newcommand{dis}[0]{\displaystyle} \newcommand{e}[0]{\varepsilon} \newcommand{ep}[0]{\epsilon} \newcommand{eq}[0]{\equiv} \newcommand{even}[0]{\mathrm{even}} \newcommand{farc}[2]{\frac{#1}{#2}} \newcommand{G}[0]{\widehat{G}} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{Gal}[0]{\mathrm{Gal}} \newcommand{Hom}[0]{\operatorname{Hom}} \newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{Im}[0]{\mathrm{Im}} \newcommand{K}[0]{{K^+}} \newcommand{Ker}[0]{\mathrm{Ker}} \newcommand{l}[0]{\left} \newcommand{lra}[0]{\leftrightarrow} \newcommand{ls}[2]{\Big(\frac{#1}{#2}\Big)} \newcommand{m}[1]{\pmod{#1}} \newcommand{mf}[1]{\mathfrak{#1}} \newcommand{mr}[1]{\mathrm{#1}} \newcommand{N}[0]{\mathrm{N}_{k/\mathbb{Q}}} \newcommand{ndiv}[0]{\nmid} \newcommand{O}[0]{\mathcal{O}} \newcommand{o}[0]{\omega} \newcommand{odd}[0]{\mathrm{odd}} \newcommand{ol}[1]{\overline{#1}} \newcommand{ord}[0]{\mathrm{ord}} \newcommand{p}[0]{\mathfrak{p}} \newcommand{prime}[0]{\mathrm{prime}} \newcommand{q}[0]{\mathfrak{q}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{r}[0]{\right} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Re}[0]{\mathrm{Re}} \newcommand{resp}[0]{\mathrm{resp}} \newcommand{s}[0]{\sigma} \newcommand{t}[0]{\tau} \newcommand{th}[0]{\theta} \newcommand{ti}[0]{{}^\times} \newcommand{Tr}[0]{\mathrm{Tr}_{k/\mathbb{Q}}} \newcommand{ul}[1]{\underline{#1}} \newcommand{vp}[0]{\varphi} \newcommand{wh}[1]{\widehat{#1}} \newcommand{x}[0]{\chi} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} \newcommand{z}[0]{\zeta} \newcommand{ZZ}[1]{\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z}} \newcommand{ZZt}[1]{(\mathbb{Z}/{#1}\mathbb{Z})^\times} $$

はじめに

 この記事では素数$p$がベルヌーイ数$B_2,B_4,\ldots,B_{p-3}$のいずれかを割り切るならば非正則素数であることの証明を行います。
 正則素数とは次のように定義されるもののことを言いました。

 円分体$K=\Q(\z_p)$の類数$h_K$$p$が割り切らないとき、そのような$p$を正則素数という。

 ここで$\z_p$とは$1$の原始$p$乗根のひとつとします。
 $p$が正則素数であることと同値な条件として以下の命題が知られています。

Kummer's criterion

 素数$p$が正則素数であることと$p$がベルヌーイ数$B_2,B_4,\ldots,B_{p-3}$を割り切らないことは同値である。

 この記事ではひとまずベルヌーイ数を割り切ることが類数を割り切ることの十分条件であることを示します。必要性の解説については 次回の記事 で行います。
 なおここでは以下の事実を既知として扱います。

類数公式

 代数体$K$に対し
$r_1$:実埋め込みの個数
$r_2$:複素埋め込みの個数
$h_K$:類数
$R_K$:単数基準
$W_K$$1$の冪根の個数
$D_K$:判別式
$\z_K(s)$:デデキントゼータ関数
とおくと
$$\lim_{s\to1}(s-1)\z_K(s)=\frac{2^{r_1}(2\pi)^{r_2}h_KR_K}{w_K\sqrt{|D_K|}}$$
が成り立つ。

証明のあらすじ

 デデキントゼータ関数の$L$関数による分解
$$\frac{\z_{\Q(\z_p)}(s)}{\z_{\Q(\z+\z^{-1})}(s)}=\prod_{\x:\odd}L(s,\x)$$
と類数公式から色々計算して
$$\frac{h_K}{h_\K}\equiv \prod^{m-1}_{k=1}\l(-\frac{1}{2}\cdot\frac{B_{2k}}{2k}\r)\m{p}$$
が成り立つことを示す。
 これにより$p$$B_2,B_4,\ldots,B_{p-3}$のいずれかを割り切れば$p\mid h_K/h_\K$つまり$p\mid h_K$となることが示される。

補題パート1

 以下
$$K=\Q(\z_p),\quad\K=\Q(\z_p+\z_p^{-1}),\quad m=(p-1)/2$$
とする。

$R_K/R_\K=2^{m-1}$

  この記事 の補題4より$\mu_p=\langle\z_p\rangle$とおくと$\O^\times_K=\mu_p\times\O^\times_\K$が成り立つ。つまり$K$$\K$はともに同じ基本単数$\e_1,\e_2,\ldots,\e_{m-1}$を持つ。
 したがって$R_K$$R_\K$$\s_i$が実埋め込みであるか複素埋め込みであるかの違いによる
$$R_K=|\det(2\log|\s_i(\e_j)|)|,\quad R_\K=|\det(\log|\s_i(\e_j)|)|$$
という$2^{m-1}$のずれを除いて一致するので主張を得る。

$w_K/w_\K=p$

  この記事 の補題3として示したように$K$に含まれる$1$の冪根は
$$\pm\z_p^k\quad(k=0,1,2,\ldots,p-1)$$
$2p$個で尽くされ、また$\K$に含まれる$1$の冪根は$\pm1$$2$個しかないため
$$w_K/w_\K=2p/2=p$$
を得る。

$\sqrt{|D_K|/|D_\K|}=p^{\frac{m}2}$

  この記事 より$D_K=p^{p-2}=p^{2m-1}$ この記事 より$D_\K=p^{m-1}$であったことからわかる。

$$\frac{\z_K(s)}{\z_\K(s)}=\prod_{\x:\odd}L(s,\x)$$
が成り立つ。ただし$\x:\odd$は法$p$の奇なるディリクレ指標全体を渡る。

  この記事 より
$$\z_K(s)=\prod_{\x:\prime}L(s,\x),\quad \z_\K(s)=\prod_{\x:\even}L(s,\x)$$
であったことからわかる。

 $\x:\odd$に対して
$$L(1,\x)=\frac{\t(\x)\pi}{ip}\l(-\frac1p\sum^p_{a=1}\ol\x(a)a\r)$$
が成り立つ。

 法$p$の自明でないディリクレ指標は全て原始的であるので この記事 の公式2より
$$L(1,\x)=\frac{\t(\x)\pi}{ip}(-B_{1,\ol\x})$$
が成り立ち、また同記事の定理4の証明より
$$B_{1,\x}=\sum^p_{a=1}\x(a)B_1\l(\frac{a}{p}\right)$$
が成り立つのであった。
 したがって$B_1(x)=x-\frac12$であることに注意すると主張を得る。

$\dis\prod_{\x:\odd}\frac{ip}{\t(\x)}=p^{\frac{m}2}$

 法$p$の奇指標は$\frac{p-1}{2}=m$個であってまた$|\t(\x)|=p^{\frac12}$なので符号が正であることを示せばよい。

$p\equiv1\m{4}$のとき

 ルジャンドル記号$(\frac{\cdot}p)$は奇指標ではないため実なる奇指標$\x$は存在せず、また
$$\ol{\t(\x)}=\x(-1)\t(\ol\x)=-\t(\ol\x)$$
に注意すると
\begin{align} \prod_{\x:\odd}\frac{\t(\x)}{\sqrt p} &=\l(\prod_{\x:\odd}\frac{\t(\x)\t(\ol\x)}{p}\r)^{\frac12}\\ &=\l(\prod_{\x:\odd}(-1)\r)^{\frac12} =\prod_{\x:\odd}i \end{align}
を得る。

$p\equiv3\m{4}$のとき

 ルジャンドル記号以外に実なる奇指標は存在せず、また上と同様に この記事 から
$$\t(\ls{\cdot}{p})=i\sqrt{p}$$
であったことに注意すると上と同様にして
$$\prod_{\x:\odd}\frac{\t(\x)}{\sqrt p}=\prod_{\x:\odd}i$$
を得る。

$h_K/h_\K$の計算

$$\frac{h_K}{h_\K}=2p\prod_{\x:\odd}\l(-\frac1{2p}\sum^p_{a=1}\x(a)a\r)$$

 類数公式
\begin{align} \lim_{s\to1}(s-1)\z_K(s)&=\frac{(2\pi)^{m}h_KR_K}{w_K\sqrt{|D_K|}}\\ \lim_{s\to1}(s-1)\z_\K(s)&=\frac{2^mh_\K R_\K}{w_\K\sqrt{|D_\K|}} \end{align}
に注意すると補題3,4,5より
\begin{align} \lim_{s\to1}\frac{\z_K(s)}{\z_\K(s)} &=\frac{\pi^m(R_K/R_\K)}{(w_K/w_\K)\sqrt{|D_K|/|D_\K|}}\cdot\frac{h_K}{h_\K}\\ &=\frac{2^{m-1}\pi^m}{p\cdot p^{\frac{m}2}}\cdot\frac{h_K}{h_\K} \end{align}
が成り立ち、また補題6,7,8より
\begin{align} \lim_{s\to1}\frac{\z_K(s)}{\z_\K(s)} &=\prod_{\x:\odd}L(1,\x)\\ &=\prod_{\x:\odd}\frac{\t(\x)\pi}{ip}\prod_{\x:\odd}\l(-\frac1{2p}\sum^p_{a=1}\x(a)a\r)\\ &=\frac{\pi^m}{p^{\frac{m}2}}\prod_{\x:\odd}\l(-\frac1{2p}\sum^p_{a=1}\x(a)a\r) \end{align}
と求まることから主張を得る。

補題パート2

 以下、$\operatorname{mod}p$の合同式は$p$進整数環$\Z_p$上で考える。

$$S_n=\sum^{p-1}_{a=1}a^n$$
とおくと
$n\not\eq0\m{p-1}$のとき$\frac1pS_n\equiv B_n\pmod p$
$n\eq0\m{p-1}$のとき$S_n\equiv -1\pmod p$
が成り立つ。

 ファウルハーバーの公式から
\begin{align} S_n&=\frac1{n+1}\sum^n_{k=0}\binom{n+1}{k}p^{n+1-k}B_k\\ &=p(B_n+\sum^{n-1}_{k=0}\binom{n+1}{k}p^{n-1-k}pB_k) \end{align}
であってvon-Staudt-Clausenの定理から$p^2B_k\eq0\m{p}$および明らかに$pB_0\eq0\m{p}$であることから前者が従う。
 後者についてはフェルマーの小定理から
$$S_n\eq\sum^{p-1}_{a=1}1=p-1\eq-1\m{p}$$
とわかる。

クンマーの合同式

 $m\equiv n\not\eq0\m{p-1}$において
$$\frac{B_m}{m}\equiv\frac{B_n}{n}\m{p}$$
が成り立つ。

 $g$$p$の原始根の一つとし
\begin{align} F(t)&=\frac{gt}{e^{gt}-1}-\frac{t}{e^t-1}=\sum^\infty_{n=0}\frac{B_n}{n!}(g^n-1)t^n\\ G(u)&=\frac{g}{(1+u)^g-1}-\frac1u=\sum^\infty_{k=0}c_ku^k \end{align}
とおく。このとき
$$\lim_{u\to0}\frac{u}{(1+u)^g-1}=\frac{1}{g}\in\Z_{(p)}$$
に注意すると$c_k\in\Z_{(p)}$であり、また
\begin{align} F(t)&=tG(e^t-1)=\sum^\infty_{k=0}c_kt(e^t-1)^k\\ &=\sum^\infty_{k=0}c_k\sum^k_{j=0}(-1)^{k-j}\binom{k}{j}te^{jt}\\ &=\sum^\infty_{k=0}c_k\sum^k_{j=0}(-1)^{k-j}\binom{k}{j}\sum^\infty_{n=0}\frac{j^n}{n!}t^{n+1}\\ &=\sum^\infty_{n=0}(\sum^\infty_{k=0}c_k\sum^k_{j=0}(-1)^{k-j}\binom{k}{j}j^n)\frac{t^{n+1}}{n!} \end{align}
と表せるので$m\eq n\m{p-1}$において
\begin{align} \frac{B_m}{m}(g^m-1) &=\sum^\infty_{k=0}c_k\sum^k_{j=0}(-1)^{k-j}\binom{k}{j}j^m\\ &\eq\sum^\infty_{k=0}c_k\sum^k_{j=0}(-1)^{k-j}\binom{k}{j}j^n\\ &=\frac{B_n}{n}(g^n-1)\eq\frac{B_n}{n}(g^m-1)\m{p} \end{align}
が成り立つ。
 あとは$g$の取り方から
$m\not\eq0\m{p-1}$のとき$g^m-1\not\eq0\m{p}$
$m\eq0\m{p-1}$のとき$g^m-1\eq0\m{p}$
が成り立つことに注意するとわかる。

証明

$$\frac{h_K}{h_\K}\equiv \prod^{m-1}_{k=1}\l(-\frac{1}{2}\cdot\frac{B_{2k}}{2k}\r)\m{p}$$

 $g$$p$の原始根の一つとし$\o$をタイヒミュラー指標
$$\o:\ZZt{p}\to\Z_p\quad a\mapsto\lim_{n\to\infty}a^{p^n}$$
とする。このとき$1$の原始$p-1$乗根$\z_{p-1}$に対し$\o(g)$を対応させる埋め込み
$$\vp:\Q(\z_{p-1})\mapsto\Q_p$$
を考えると、これは同型
$$\widehat{\ZZt{p}}\to\langle\o\rangle$$
を引き起こす。
 特に法$p$の奇ディリクレ指標は$\o^{2k-1}\;(k=1,\ldots,m)$に対応するので$h_K/h_{K^+}\in\Q$$\vp$を作用させることで補題9から
\begin{align} \frac{h_K}{h_\K} &=2p\prod_{\x:\odd}\l(-\frac1{2p}\sum^p_{a=1}\x(a)a\r)\\ &=2p\prod^m_{k=1}\l(-\frac{1}{2p}\sum^p_{a=1}\o(a)^{2k-1}a\r) \end{align}
と表せる。
 また
$$\o(a)\equiv a^p\m{p^2}$$
および
$$1+p(2k-1)\eq 2k\m{p-1}$$
に注意すると補題10,11から$k\neq m$において
\begin{align} -\frac{1}{2p}\sum^p_{a=1}\o(a)^{2k-1}a &\eq-\frac{1}{2p}S_{1+p(2k-1)}\\ &\eq-\frac12\cdot\frac{B_{1+p(2k-1)}}{1+p(2k-1)}\\ &\eq-\frac12\cdot\frac{B_{2k}}{2k}\m{p} \end{align}
が成り立ち、また$\o(a)\eq a\m{p}$より$k=m$において
$$2p\l(-\frac{1}{2p}\sum^p_{a=1}\o(a)^{p-2}a\r)\eq-S_{p-1}\eq1\m{p}$$
が成り立つので
$$\frac{h_K}{h_\K}\equiv \prod^{m-1}_{k=1}\l(-\frac{1}{2}\cdot\frac{B_{2k}}{2k}\r)\m{p}$$
を得る。

 この合同式の系として以下が得られる。

 素数$p$がベルヌーイ数$B_2,B_4,\ldots,B_{p-3}$のいずれかを割り切ることと、$p$$h_K/h_\K$を割り切ることは同値である。

 特に今回の記事の目的である以下の主張が直ちに従う。

 素数$p$がベルヌーイ数$B_2,B_4,\ldots,B_{p-3}$のいずれかを割り切るとき、$p$は円分体$\Q(\z_p)$の類数も割り切る。

参考文献

投稿日:20201216
更新日:111
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

子葉
子葉
980
221676
主に複素解析、代数学、数論を学んでおります。 私の経験上、その証明が簡単に探しても見つからない、英語の文献を漁らないと載ってない、なんて定理の解説を主にやっていきます。 同じ経験をしている人の助けになれば。最近は自分用のノートになっている節があります。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中