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この記事は、「連載 グラフアートを描こう」の第8回です。
第1回
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第2回
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第3回
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第4回
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第5回
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第6回
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第7回
を読んでいない人はそちらから読んでいただくとより理解が深まります。
前回までは、グラフに適用できる基本的な操作を扱いました。
今回からは、実際にグラフアートで使える図形を見ていきましょう。
今回扱うのは、「直線」です。
まずここに、いわゆる比例のグラフ$ y = ax $を用意しました。
$y = ax\hspace{1mm}のグラフたち$
$ a $の値を変えると、傾きを変えることができます。$ a $が正なら直線は右上がり、$ a $が負なら直線は右下がりです。$ a = 0 $のときは、$ y = 0 $となるためグラフは$ x $軸と完全に一致します。
これらの直線は、全て原点を通っていますね。では、原点を通らない直線を引くには、どうすればよいでしょうか。
直線を移動させればよいですね。
では試しに、$ y = 2x $のグラフを、点$ (2, 1) $を通るように移動させてみましょう。
原点が$ (2, 1) $に移動すればよいので、$ x \rightarrow x - 2, y \rightarrow y - 1 $と置き換えることになります。
すると、
$ \begin{align*} y - 1 &= 2 (x - 2) \\ y - 1 &= 2x - 4 \\ y &= 2x - 3 \end{align*}$
と、見慣れた形の一次関数の式が出てきます。
$y = 2x - 3\hspace{1mm}のグラフ$
また、このグラフは「$ y = 2x $のグラフの点$ (2, 4) $を点$ (2, 1) $まで下げた」とも見ることができます。このように考えると、原点は$ (0, -3) $まで下がり、$ y $座標がグラフの式の定数項の$ -3 $と対応していることが見て取れますね。
一般に、$ y = ax + b $は、「横に$ 1 $進むと縦に$ a $進み、点$ (0, b) $を通る直線」であるといえます。
ただし、この形では表せない直線もあります。それは、$ x $軸に垂直な直線です。実験してみるとわかりますが、$ y = ax + b $の$ a $をどんどん大きく(もしくは小さく)していくと、グラフは垂直に近づきますが、完全な垂直になることは絶対にありません。
この場合は、$ x = c $の形で表されます。すなわち、$ x $軸に垂直な直線上の点は全て$ x $座標が一定なので、そのことをそのまま式にすることで直線が表せます。ためしに、$ x = 1 $のグラフを描いてみましょう。
$x = 1\hspace{1mm}のグラフ$
たしかに、$ x $軸に垂直になっていますね。
このことは、式変形でも確認することができます。
$ y = ax $の形の直線は全て点$ (0, 0) $を通るので、右に$ 1 $だけ移動させると点$ (1, 0) $を通る直線を表すことができます。
右に$ 1 $だけ移動させるためには$ x $を$ x - 1 $に変えればよいので、$ y = a (x - 1) $となります。
ここで、$ a $を大きくすることを考えましょう。$ a $は$ 0 $ではないので、$ y = a (x - 1) $の両辺を$ a $で割ることができ、$ \frac{y}{a} = x - 1 $とできます。
$ a $をどんどん大きくすると、左辺は$ 0 $に近づいていくので(厳密にはここで極限を取っています)、式は$ 0 = x - 1 $に近づいていきます。
この$ -1 $を左辺に移項し、両辺を入れ替えることで$ x = 1 $が得られます。
数学好きのみなさん、お待たせいたしました。ここからが本編です。
(注意: ここからは執筆者が暴走します)
ある直線と原点との距離を$ r $とおきます。そのような直線のひとつに$ y = r $があります。
これを原点中心に任意の角度$ \theta $だけ回転させたら、任意の直線が得られます。
すなわち、$ -x \sin{\theta} + y \cos{\theta} = r $で全ての直線が得られることになります。
実際、$ \cos{\theta} \neq 0 $として上の式を$ y = (何か) $の形にすると、
$ y = x\tan{\theta} + r\sec{\theta} $
と書けて、確かに$ y = ax + b $の形になっていることがわかります。
また、$ \cos{\theta} = 0 $のときは$ y = r $を反時計回りに$ \pm 1/4 $回転させることになるので$ x $軸に垂直になります。
$ \alpha = \theta - \frac{\pi}{2} $とすると、$ -x \sin{\theta} + y \cos{\theta} = r $は$ x \cos{\alpha} + y\sin{\alpha} = r $となり、円の接線の方程式が現れました。
「原点からの距離が$ r $の直線」は「原点を中心とする半径$ r $の円の接線」でもあることがこの式変形からも明らかになりました。
直線の次は曲線です。
第9回
は、「放物線の方程式」です。
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