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この記事は、「連載 グラフアートを描こう」の第9回です。
第1回
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第2回
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第3回
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第4回
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第5回
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第6回
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第7回
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第8回
を読んでいない人はそちらから読んでいただくとより理解が深まります。
前回は直線を描く方法を考えました。
今回は放物線の方程式を描く方法を考えましょう。
ここでは簡単のため、上向きまたは下向きの放物線のみを考えることにします。
放物線は、$ y = ax^2 $の形で表されます。
$y = ax^2\hspace{1mm}のグラフたち$
$ a = 0 $のときは$ y = 0 $の直線となり放物線ではありませんが、参考のために示しました。
放物線の位置を表すのに便利な用語があるので覚えておきましょう。
上向きの放物線の一番下、または下向きの放物線の一番上の点のことを、放物線の頂点といいます。
図1に示された8本の放物線は、すべて頂点が原点にありますね。
放物線は頂点の位置と向きと開き具合を指定すると一意に定まることが知られています。
$ y = ax^2 $の式で、$ a $の符号は放物線の向き、$ a $の絶対値は開き具合を表すので、残りは頂点の位置だけですね。
頂点の位置を変えるには放物線を平行移動させればよいので、今までの方法と同じようにしてできます。
では、$ y = 2x^2 $を、頂点が$ (2, -1) $になるまで平行移動させてみましょう。
$ y = 2x^2 $の頂点は$ (0, 0) $なので、右に$ 2 $、下に$ 1 $ずらせばよいですね。つまり、
$$ y + 1 = 2 (x - 2)^2 $$
あるいはお好みで左辺を$ y $だけ、右辺を$ x $の降べきの順にして、
$$ y = 2x^2 - 8x + 7 $$
となります。
$y + 1 = 2 (x - 2)^2\hspace{1mm}、もしくは\hspace{1mm}y = 2x^2 - 8x + 7\hspace{1mm}のグラフ$
もう一つやってみましょう。
$ y = -0.7x^2 $を、頂点が$ (-1, 0.5) $になるまで平行移動させてみましょう。
$$ y - 0.5 = -0.7 (x + 1)^2 $$
もしくは
$$ y = -0.7x^2 - 1.4x - 0.2 $$
となりますね。
$y - 0.5 = -0.7 (x + 1)^2\hspace{1mm}、もしくは\hspace{1mm}y = -0.7x^2 - 1.4x - 0.2\hspace{1mm}のグラフ$
ところで、図3のグラフを見ていると、もう少しだけグラフを上昇させて$ (-2, 0) $と$ (0, 0) $を通るようにしたくなりますね。実際これは簡単で、$ y = -0.7x^2 - 1.4x - 0.2 $の式から$ - 0.2 $を取り除いて$ y = -0.7x^2 - 1.4x $とすることで実現できます。
$y = -0.7x^2 - 1.4x\hspace{1mm}のグラフ$
また、この$ y = -0.7x^2 - 1.4x $は
$$ y = -0.7 (x + 2)x = -0.7 (x - (-2)) (x - 0)$$
とも表されます。一般に、
$$ y = a (x - b) (x - c) $$
のグラフは、$ x $軸と$ (b, 0), (c, 0) $の2点で交わる放物線を表します。$ a $は$ y = ax^2 $のときと同様に放物線の向きと開き具合を表します。
例として、$ y = a (x + 1) (x - 2) $のグラフを以下に示します。
$y = a (x + 1) (x - 2)\hspace{1mm}のグラフたち$
もちろん、$ y = a (x - b) (x - c) $を$y - s = a (x - t)^2 $の形に変形することもできますが、それは読者への演習問題とします。
放物線はこれで終わりです。
「授業で散々やったあれは何だったの?」と思う人もいるかもしれませんが、それはまた別の回にやります。
グラフアートでよく使われる曲線には、放物線のほかに円もあります。
第10回
は「円の方程式」です。