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第6回匿式図形問題エスパー杯 (T-GUESS Cup 6) 解説記事(A1~C2)

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 2026 年 5 月 4 日 ~ 5 月 12 日にかけて『 第6回匿式図形問題エスパー杯 (T-GUESS Cup 6: Tock's Geometry "Using Extra-Sensory Solutions" Cup The 6th)』を開催しました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました。
 180 時間という長い戦い。IMO は計 9 時間で 6 問を解きますから、単純な計算から 120 問を出題しても許されるといえる中、たった 8 問、しかし選りすぐりの図形問題 8 問へと、立ち向かっていただきました。
 本記事では、当該コンテストで出題した問題A1問題C2の紹介および解説を行います。昨年度同様、最終問題である問題D2は別記事にて解説することといたします(鋭意執筆中)。

T-GUESS Cup 2の解説記事: 問題A~C 問題D
T-GUESS Cup 3の解説動画: 問題A~H
T-GUESS Cup 4の解説記事: 問題A~E 問題F
T-GUESS Cup 5の解説記事: 問題A~E 問題F

※ PDF で解説を読みたい方は、 こちら からダウンロード可能です。

問題紹介と解説(A1~D1)

 まずは、コンテスト開催前の問題公募で集まった皆様の作品を紹介します。いずれも基本的な知識のみで解答することができます。あと全体的に主催者の作問力を凌駕気味です。

問題A1

問題A1 Proposed by 天真

 ある扇形 $O\overset{\Huge \frown}{PQ}$ の弧 $\overset{\Huge \frown}{PQ}$ と点 $A$ で接し、線分 $OP, OQ$とそれぞれ点 $B, C$ で接する円が存在しました。$AP = AC$ のとき、$\angle OPA$ の大きさを求めてください。

解説

 扇形 $O\overset{\Huge \frown}{PQ}$ と円 $ABC$ (この解説では、点 $A, B, C$ をすべて通る円を以下このように表します)は直線 $AO$ について対称であるため、$AP = AB = AC = AQ$ です。いま、$\angle OPA = \theta$ とすると $\angle PBA = \theta$ となり、また円 $ABC$ における接弦定理より $\angle BCA = \angle PBA = \theta$ となります。ゆえに、3 つの二等辺三角形 $APB, ABC, ACQ$ はすべて合同です。再び扇形 $O\overset{\Huge \frown}{PQ}$ に注目すると、$OP = OA = OQ$ より $\angle OAP = \angle OAQ = \theta$ が成立するため、五角形 $APBCQ$ の内角の総和は $8 \theta$ であるといえます。これは $\theta = {67.5}^{\circ}$ を意味し、求める角度は $\mathbf{{67.5}^{\circ}}$ です。

問題B1

問題B1 Proposed by Kikachu

 球 $S_0$ は平面 $\alpha$ により 2 つの領域 $d_1, d_2$ に切り分けられています。$d_1$ に 2 点で内接する 3 つの球 $S_1, S_2, S_3$ について、それぞれの半径は $16, 9, 9$ でした。また、$S_1$$S_2, S_3$ の両方に外接し、$S_2$$S_3$ は異なりました。これら 8 つの接点がすべて同一平面上に存在するとき、$\alpha$ が切り分けた $S_0$ の断面積を求めてください。

解説

 8 つの接点が通る平面を $\beta$ とすれば、球 $S_0, S_1, S_2, S_3$ の中心はいずれも $\beta$ に含まれるため、これらをそれぞれ $O_0, O_1, O_2, O_3$ と名づけます。凧形 $O_0 O_2 O_1 O_3$ の対角線の交点を $M$ とし、$S_0$ の半径を $r$ とすれば、$O_1 O_0 = r - 16,$ $O_0 O_2 = O_0 O_3 = r - 9$ が成立し、
$$O_2 M = \sqrt{{O_1 O_2}^2 - {O_1 M}^2} = \sqrt{(16 + 9)^2 - (16 - 9)^2} = 24$$
と導かれます。$M O_0 = r - 23$ に注意し、直角三角形 $M O_0 O_2$ に三平方の定理を用いれば、
$$(r - 23)^2 + 24^2 = (r - 9)^2 \Longleftrightarrow r = \dfrac{256}{7}$$
と求められます。ゆえに、$\alpha$ が切り分けた $S_0$ の断面積は $\pi \left( r^2 - (r - 32)^2 \right) = \dfrac{9216}{7}\pi$ と計算され、求める値は $\mathbf{\dfrac{9216}{7}\pi}$ です。

問題C1

問題C1 Proposed by 翔子さん

 重心を $G$ とする三角形 $ABC$ の外側に、3 つの正方形 $APQB, BRSC, CTUA$ を描きます。線分 $UP, QR, ST$ 上にそれぞれ点 $D, E, F$ をとると、3 点の組 $(G, A, D),$ $(G, B, E),$ $(G, C, F)$ はそれぞれ同一直線上に並び、$GA = 5,$ $GB = 6,$ $GC = 7$ が成立しました。このとき、$AD : BE : CF$ を最も簡単な整数比で表してください。

解説

 四角形 $ABA'C$ が平行四辺形となるような点 $A'$ をとると、重心の性質から $AA' = 15$ です。また、$AB = PA,$ $BA' = AC = AU,$ $\angle ABA' = {180}^{\circ} - \angle BAC = \angle PAU$ より、2 つの三角形 $ABA', PAU$ は合同であるといえます。特に、三角形 $ABA'$ は、点 $A$ を中心とし ${90}^{\circ}$ 反時計回りに回転させ、点 $A$ が点 $P$ と重なるように平行移動することで、三角形 $PAU$ にぴったり重なります。ここから $PU = 15$ および $AD \perp PU$ となり、かつ三角形 $ABA', PAU$ の面積がいずれも三角形 $ABC$ の面積 $s$ に等しいと判明します。これは $AD = \dfrac{2}{15} s$ を意味し、同様の議論から $BE = \dfrac{1}{9} s,$ $CF = \dfrac{2}{21} s$ を得るため、求める比は $\mathbf{42 : 35 : 30}$ です。

問題D1

問題D1 Proposed by Melid

 $\angle ABC < \angle BCD$ をみたす平行四辺形 $ABCD$ の中心を $M$ とします。3 点 $B, C, M$ を通る円上に点 $E$ をとり、$CE, BE$ 上にそれぞれ点 $P, Q$ をとると、$CD \perp ME,$ $AP \perp CE,$ $DQ \perp BE$ が成立しました。$AP$$DQ, BC$ がそれぞれ $X, Y$ で交わり、$YB = 16,$ $PQ = 36,$ $XE = 45$ となるとき、線分 $ME$ の長さはいくらですか。

解説

 $\angle MCP = \angle MBE$ より、2 つの直角三角形 $PAC, QDA$ は相似であり、これらはいずれも点 $M$ を外心とします。ここから三角形 $MAD, MPQ, MCB$ は点 $M$ を中心とした回転合同をなすと判り、$AD = PQ = CB = 36$ です。また、$AB$$ME$ の交点を $F$ とすると、四角形 $AEPF$ は線分 $AE$ を直径とする円に内接するため、
$$\angle YAB = \angle FAP = \angle FEP = \angle MEC = \angle MBC = \angle BDA$$
という角度追跡が行えます。$AD \parallel YB$ から得られる $\angle YBA = \angle BAD$ も用い、三角形 $YAB, BDA$ の相似が従います。すなわち $\dfrac{YB}{BA} = \dfrac{BA}{AD}$ となり、$BA = \sqrt{16 \times 36} = 24$ が得られます。
いま、$\angle MAP = \angle MDQ$ でもあるため、四角形 $MAXD$ は円に内接します。ゆえに $\angle AXM = \angle ADM = \angle YAB$ となり、$BA \parallel MX$ が判明します。これは $MX$ が線分 $AD$ の中点 $N$ を通ることを意味しており、円 $MAXD$ における方べきの定理から、$NX = \dfrac{AN^2}{MN} = 27$ が従います。加えて $ME \perp CD \parallel MX$ より、直角三角形 $MEX$ に三平方の定理を用いることができます。$ME = \sqrt{45^2 - (12 + 27)^2} = 6 \sqrt{14}$ と計算され、求める値は $\mathbf{6 \sqrt{14}}$ です。

問題紹介と解説(A2~C2)

 続いて、主催者が手癖でしたためた作品を紹介します。初手の発想さえ浮かぶならば、という問題が多いですね。

問題A2

問題A2 Proposed by 匿(Tock)

 4 個の半円弧が図のように位置しています。緑色の弧の長さがそれぞれ $8, 9, 11$ であるとき、ピンク色の弧の長さはいくらですか。

解説

 長さ $8, 9, 11$ の半円弧の直径がそれぞれ $AB, BC, CA$ となるように、3 点 $A, B, C$ を定めます。ピンク色の半円弧の両端のうち、長さ $9$ の弧と接するほうを $P_A$, 長さ $11$ の弧と接するほうを $P_B$ とおき、線分 $BC, CA, AB$ の中点をそれぞれ $M_A, M_B, M_C$ とします。ピンク色の弧の中心を $O_P$ とすると、直径および接点に注目し、5 点 $P_A, M_A, O_P, M_B, P_B$ はすべて同一直線上に並びます。よって、
$$P_A P_B = P_A M_A + M_A M_B + M_B P_B = \frac{1}{2}(AB + BC + CA) = \frac{1}{2}\left( \frac{16}{\pi} + \frac{18}{\pi} + \frac{22}{\pi} \right) = \frac{28}{\pi}$$
と計算でき、求める弧の長さは $\mathbf{14}$ です。

問題B2

問題B2 Proposed by 匿(Tock)

 2 個の正六角形、5 個の円、および 10 個のレムニスケートが図のように接しあっており、同じ色で描かれた図形は合同です。このとき、紫色の領域と緑色の領域の面積比を最も簡単な整数比で表してください。

解説

 図のように正六角形を分割すると、左右の赤い凧形は相似になり、その相似比は $\sqrt{3} : 2$ です。図中のレムニスケートの面積比は、それが内接する凧形の面積比に一致するため、紫色のレムニスケート 1 つ分と緑色のレムニスケート 1 つ分の面積比は $3 : 4$ となります。ゆえに、求める面積比は $\mathbf{9 : 8}$ です。

問題C2

問題C2 Proposed by 匿(Tock)

 弧の部分で互いに外接する 3 つの半円 $\sigma_1, \sigma_2, \sigma_3$ があり、これらの中心はそれぞれ $O_1,$ $O_2,$ $O_3$ です。各半円の直径はすべて特定の円 $\Gamma$ の弦となっており、また $\sigma_1, \sigma_2$ の直径は平行でした。3 点 $O_1, O_2, O_3$ を通る円 $\Omega$$\sigma_1$ の直径と $P (\ne O_1)$ で交わり、$O_1 P = 36$ かつ $\sigma_3$ の半径が $45$ であるとき、$\Omega$ の半径を求めてください。

解説

 円 $\Gamma, \Omega$ の中心をそれぞれ $O_{\Gamma}, O_{\Omega}$ とし、$\sigma_i$$\sigma_j$ の接点を $T_{ij} \; ((i,j) = (1,2), (2,3), (3,1))$ とおきます。円 $T_{12}T_{23}T_{31}$ は三角形 $O_1 O_2 O_3$ の内接円であるため、その中心 $I$ は三角形 $O_1 O_2 O_3$ の内心です。ここで、半円 $\sigma_i$ の半径を $R_i \; (i = 1, 2, 3)$ とおくと、三平方の定理より、
$${O_1 O_{\gamma}}^2 + {R_1}^2 = {O_2 O_{\gamma}}^2 + {R_2}^2 = {O_3 O_{\gamma}}^2 + {R_3}^2$$
が成立します。$O_{\Gamma}$ から辺 $O_1 O_2$ へ下ろした垂線の足を $H_3$ とすれば、同じく三平方の定理から、
$${O_1 H_3}^2 - {O_2 H_3}^2 = {O_1 O_{\gamma}}^2 - {O_2 O_{\gamma}}^2 = {R_2}^2 - {R_1}^2 = {O_2 T_{12}}^2 - {O_1 T_{12}}^2$$
と計算でき、$H_3, T_{12}$ がともに線分 $O_1 O_2$ 上の点であることより、線分 $O_1 O_2, H_3 T_{12}$ の中点は一致するのです。この中点を $M_{12}$ とすることで、「$O_{\Gamma}$$M_{12}$ で対称移動した点は直線 $IT_{12}$ 上に乗る」とも表現できます。同様の考察を三角形 $O_1 O_2 O_3$ の他の辺にも行い、$O_{\Gamma}$$I$$O_{\Omega}$ について対称な点であると判明します(つまり、$O_{\Gamma}$ は三角形 $O_1 O_2 O_3$ の Bevan 点である、ということです)。
三角形 $O_1 P O_2, T_{12} I O_{\Gamma}$ に注目すると、線分 $M_{12} O_{\Omega}$ はいずれも辺の中点を結ぶ線分ですから、$T_{12} I =O_1 P = 36$ 、ひいては $I O_3 = \sqrt{45^2 + 36^2} = 9 \sqrt{41}$ です。$\Omega$ の半径を $R$ とし、$O_3 I$$\Omega$ と再び交わる点を $V$ としましょう。Trillium の定理から、$V$ は三角形 $O_1 I O_2$ の外心であるため、
$$IV = I O_1 = \sqrt{(R - M_{12} O_{\Omega})^2 + \left(R^2 - {M_{12} O_{\Omega}}^2\right)} = \sqrt{2 R (R - M_{12} O_{\Omega})} = \sqrt{2 R (R - 18)}$$
と計算されます。内接円と外接円に関する Euler の公式より、 $O_{\Omega} I = \sqrt{R (R - 72)}$ なので、$\Omega$ における $I$ の方べきは $R^2 - {O_{\Omega} I}^2 = 72 R$ です。ゆえに、
$$I O_3 \times IV = 72 R \Longleftrightarrow 9 \sqrt{41} \times \sqrt{2 R (R - 18)} = 72 R \Longleftrightarrow R = 82 \; (\because R > 0)$$
が確定し、求める半径は $\mathbf{82}$ です。

解答一覧

問題A1 $\mathbf{{67.5}^{\circ}}$
問題B1 $\mathbf{\dfrac{9216}{7}\pi}$
問題C1 $\mathbf{42 : 35 : 30}$
問題D1 $\mathbf{6 \sqrt{14}}$
問題A2 $\mathbf{14}$
問題B2 $\mathbf{9 : 8}$
問題C2 $\mathbf{82}$

 問題A1問題B2のクリアな解き方が印象的ですね。問題C2、実は 以前の記事 の気休めパートで伏線を張っていました。気づきましたか?

次回予告

 ここまでは「超難問」というほどの出題がありませんね。今回の T-GUESS は優しさに満ち溢れているのかもしれません。さあ、この調子であと 1 問を解き、全完を達成しましょう。

問題D2

問題D2 Proposed by 匿(Tock), Melid

 不等辺三角形 $ABC$ において、$\angle B, \angle C$ 内の傍心をそれぞれ $I_B, I_C$ とし、傍接円をそれぞれ $\omega_B, \omega_C$ とします。また、$\omega_B$$BC, CA, AB$ の接点をそれぞれ $D_B, E_B, F_B$ とし、$\omega_C$$BC, CA, AB$ の接点をそれぞれ $D_C, E_C, F_C$ とします。
いま、以下の条件をすべてみたす点 $X$ が平面上にちょうど 2 つ存在するため、それらを $X_1, X_2$ と名づけます。

  • $D_B F_B$$X E_B, X I_B$ と交わる点をそれぞれ $Y_1, Y_2$ とすれば、$\angle D_B E_B F_B,$ $\angle Y_1 E_B Y_2$ の内角の二等分線は一致する。
  • $D_C E_C$$X F_C, X I_C$ と交わる点をそれぞれ $Z_1, Z_2$ とすれば、$\angle D_C F_C E_C,$ $\angle Z_1 F_C Z_2$ の内角の二等分線は一致する。

このとき、三角形 $ABC$ の形状によらず、$X_1 X_2$ が三角形 $ABC$$n$ 番目の中心を通るように、自然数 $n$ の値を定めてください。

「どこ……優しさどこ……???」

 いつも通りですね。最後の最後に謎の危険物を投下する幾何コンテスト、それが匿式図形問題エスパー杯です。「そもそも三角形の中心とは?」と感じられた方は、 Encyclopedia of Triangle Centers - ETC にアクセスし、静かな絶望を味わってください。高校の教科書には五心しか載っていませんが、実は万単位の中心が存在するのです。この中のただひとつ、数万分の 1 を特定する、文字通りの「超難問」です。
 どうやって解くのか、また、数値だけでも当てられた参加者は存在するのでしょうか。期待と疑念を抱きつつ、次回の記事もしくはコンテスト結果発表をお待ちくださいませ。

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投稿日:7日前
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匿(Tock)
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主に初等幾何・レムニスケート。時々偏差値・多重根号。 「たとえ作曲家が忘れ去られた日であっても、彼の旋律が街並みを縫って美しく流れていますように。」

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