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現代数学解説
文献あり

位数6の射影平面は存在しない - ブルック-ライサーの定理

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  1. フィッシャー不等式

  2. 算術三角形

  3. 自己同型群と拡大・縮小

  4. アフィン平面

    1. 相互直交ラテン方格


  5. シュタイナー三重系

    1. STSの直積


  6. マシュー群 M11M12

    1. S(2,3,9)の性質

    2. S(3,4,10)の構成

    3. M11M12


  7. 射影平面

    1. ブルック-ライサーの定理


  8. シュタイナー四重系

    1. 正測体とSQS

本筋から逸れる証明は折畳んでいる場合があるが, クリックで開くことができる.

 射影平面S(2,n+1,n2+n+1)は位数が素冪であれば存在するが, それ以外の存在については一部を除いて未解決である. そして, その一部が次の定理による.

定理1 ブルック-ライサーの定理
n1,2mod4のとき, 位数nの射影平面S(2,n+1,n2+n+1)が存在するための必要条件は, nが二平方和で表されることである.

 位数の小さい射影平面の存在と非同型の数については下の表の通りである.

位数存在非同型の数
21
31
41
51
6×
71
81
94
10×
111
12
131
14×

 位数6,14の非存在はブルック-ライサーの定理から直ちに導かれるが, 10に関しては1989年に計算機によって存在しないことが証明された. 位数12の存在と位数11,13の非同型の数は現状未解決である(はず).

平方和に関する補題

補題2
素数pに対して,
A2+B20modp
を満たす整数A,Bが存在するなら, pは二平方和で表せる.

A2+B2が最小になるようA2+B2=rpを満たすrを取る.
このとき, r1即ちr>1を仮定して矛盾を導く.
aAmodrbBmodr
なるr2a,br2が取れ,
A2+B2a2+b20modr
であるから, a2+b2=rt(t<r)と書ける.
A2+B2Aa+Bb0modrABBAAbBa0modr
より
r2tp=(A2+B2)(a2+b2)=A2a2+2AaBb+B2b2+A2b22AbBa+B2a2=(Aa+Bb)2+(AbBa)2tp=(Aa+Bbr)2+(AbBar)2
となるがt<rから, これはrの最小性に反する.
したがって, r=1A2+B2=p.

補題3
n,A,B,CZ{0}について
nC2=A2+B2
が成り立つなら, nは二平方和で表せる.

[i] nの素因数分解がn=p1p2ptのように平方数を含んでいない場合, 補題2から各々の素因数は二平方和で表せ,
(a2+b2)(c2+d2)=a2d2+2adbc+b2c2+a2c22acbd+b2d2=(ad+bc)2+(acbd)2
を帰納的に用いれば, nは二平方和で書ける.
[ii] nの素因数の中に平方数が含まれていた場合, 即ちn=mq2のとき,
m(qC)2=A2+B2
から[i]の議論に帰着できる.

定理4 ラグランジュの四平方定理
任意の自然数は4つの平方数の和で表せる.

本題と逸れるため省略. 有名なので調べればすぐにヒットする.

証明

定理1(再掲) ブルック-ライサーの定理
n1,2mod4のとき, 位数nの射影平面S(2,n+1,n2+n+1)が存在するための必要条件は, nが二平方和で表されることである.
証明

v:=n2+n+1, P:=S(2,n+1,v)の接続行列をAとすると, フィッシャー不等式の証明での議論 を再利用して, 次のことが分かる. detAA0よりAは正則. また, AA(i,j)成分(1i,jv)
AA={n+1i=j1ij
と表されたことから,
AA=AA=nI+J
が成り立つ. ただし, Jは全成分が1v次正方行列である.
ここから変数x1,,xv+1を用いて証明を進めるが, これらの値は後で都合の良いように取り決める.x=[x1xv],z=[z1zv]=xAとすると
zz=xAAx=x(nI+J)x=nxx+xJx
より
i=1vzi2=ni=1vxi2+(i=1vxi)2(1)i=1vzi2+nxv+12=ni=1v+1xi2+(i=1vxi)2(xv+1x1,,xv)
ここで, 仮定n1,2mod4から
n21,0mod4n2+n2mod4n2+n+2=v+10mod4
であり
ni=1v+1xi2=i=0v+141n(x4i+12+x4i+22+x4i+32+x4i+42)
と書ける. ラグランジュの四平方定理から, n=n12+n22+n32+n42と分解でき
N=[n1n2n3n4n2n1n4n3n3n4n1n2n4n3n2n1]
とおくと, detN=n2よりNは正則. 各i=0,1,,v+141に対して
[y4i+1y4i+2y4i+3y4i+4]=N[x4i+1x4i+2x4i+3x4i+4]
と変数変換すると
y4i+12+y4i+22+y4i+32+y4i+42=[y4i+1y4i+2y4i+3y4i+4][y4i+1y4i+2y4i+3y4i+4]=[x4i+1x4i+2x4i+3x4i+4]NN[x4i+1x4i+2x4i+3x4i+4]=[x4i+1x4i+2x4i+3x4i+4]nI[x4i+1x4i+2x4i+3x4i+4]=n(x4i+12+x4i+22+x4i+32+x4i+42)
であるから(1)式は
(2)i=1vzi2+nxv+12=i=1v+1yi2+s2(s:=i=1vxi)
いま, y1,,yvz1,,zvはともにx1,,xvの線型結合であったから各i=1,,vに対して, yi±zi=0を満たすようにxiの値を決めることができる. したがって, (2)式は
nxv+12=yv+12+s2
となり, 補題3からnは二平方和で表せる.

参考文献

投稿日:18日前
更新日:14日前
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投稿者

有限群論 代数的組合せ論

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