米田の補題は,圏論における非常に重要な命題です。この命題は,次のように述べられます。
任意の集合値関手
ここで,
以降では, 第10回 と 第11回 の記事で紹介した「点線の枠による表記」を用いて,この補題を視覚的にわかりやすい形で証明します。
なお,同型
#1:
圏の定義と具体例
#2:
関手と自然変換
#3:
垂直合成と水平合成
#4:
モノイダル圏
#5:
モナドとは自己関手の圏におけるモノイド対象のこと
#6:
モナドの例
#7:
随伴
#8:
関手を表す線の順序の交換
#9:
普遍射と随伴・極限・カン拡張
#10:
ホム関手のストリング図(前編)
#11:
ホム関手のストリング図(後編)
#12: 米田の補題(この記事)
番外編1:
視覚的に理解するクライスリトリプルとモナドの同値性
番外編2:
線形代数の圏論的な性質(?)を圏論なしで説明する
第1回の記事
で述べたように,任意の集合
ホム関手
恒等写像
ただし,右辺の黒丸は写像
を表しています。なぜならば,この右辺の点線の枠に各
自然変換
このため,
実際,この右辺の線
では,米田の補題を証明します。
まず,写像
写像
この写像は,米田写像とよばれます。
また,写像
写像
このとき,
まず,
次に,
したがって,
第1回の記事
で述べた行列を射とする圏
が成り立ちます。なお,関手
とくに
が成り立ちます。このとき,可逆写像
に等しいことを示せます。ただし,自然変換
以降では,写像
が成り立ちます(なお,
のことであり,次の図式で表されます。
写像
ここでは圏
米田写像
米田写像
式
式
ただし,左辺および右辺の補助線で囲まれた箇所は,それぞれ写像
「点線の枠による表記」を用いることで,米田の補題を視覚的にわかりやすい形で証明できることを述べました。米田の補題に限らず,ホムセットが登場する話題では「点線の枠による表記」を用いるとしばしば便利です。